整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

保存的治療のコツ: 橈骨遠位端骨折

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日本整形外科学会雑誌のVol.91 No.7 July 2017の451-458に興味深い教育研修講座が記載されていました。いしぐろ整形外科の石黒隆先生による「手の骨折に対する保存的治療」です。


教育研修講座内で石黒先生もおっしゃられるように、最近の学会報告は手術的治療に偏り過ぎている傾向があります。そして勤務医の場合は、実臨床でも手術的治療に偏っています。


特に、私立病院では経営陣から成果を求められるため、積極的に手術的治療が採用される傾向にあります。今回の教育研修講座は、その風潮に対するアンチテーゼのようです。




橈骨遠位端骨折


整復操作はChinese finger trapを用いて牽引を15分間加えます。その後、牽引を外して助手に肘を90度屈曲位に保持させて整復します。


整復のポイントは、末梢骨片を恥し、転位している側(骨膜の残存する側)を過伸展させながら末梢に牽引し、末梢骨片の基部を押し込むようにして一気に整復します。



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(日本整形外科学会雑誌のVol.91 No.7 July 2017の451ページより抜粋)



整復後は手関節軽度掌屈・肘屈曲位にSugar tongs型のギプスシーネを当てます。手掌部のギプスシーネは近位手掌皮線までとして、MP関節の屈曲制限を起こさないようにします。


高齢者の場合、20度を超える背屈転位や3mm以上の橈骨短縮を起こさない限り、橈屈転位していても機能的問題を残すことはないそうです。





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難聴や低教育は認知症の危険因子!

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2017年8月3日号のMedical Tribuneで興味深い記事がありました。9因子の制御で認知症の35%は予防可能 です。




Lancet認知症予防・介入・ケア委員会は「生涯を通じて9つのリスク因子をコントロールし、脳の健康状態を改善できれば、認知症の35%は予防できる可能性がある」とする専門家24人の見解をまとめた認知症に関する包括的レビューを、アルツハイマー協会国際会議2017(英・ロンドン)で発表した。同レビューはLancet(2017年7月20日オンライン版)で同時公開された。




修正可能な9つのリスク因子を検討


 最新の推計によると、全世界の2015年の認知症患者数は約4,700万人で、低・中所得国における急激な増加を背景に2050年には約3倍に達するとみられている。認知症に伴う総コストは年間8,180億ドル(2015年)で、医療以外の介護に当たる家族や社会の負担となるコストが約85%を占めることから、社会を挙げての対策が喫緊の課題である。筆頭著者で英・University College Londonの Gill Livingston氏は「今すぐ行動を起こし、認知症患者とその家族における生活の改善を図る必要がある」と指摘している。


 認知症を発症するのは主に65歳超の高年期であるが、脳の変化はその数年前から始まっていることが多い。そこで、小児期(18歳未満)や中年期(45〜65歳)のリスク因子にも目を向けて認知症予防に取り組む必要がある。


 同氏らは小児期、中年期、高年期における9つの"修正可能な"リスク因子として、小児期では①教育期間の短さ(15歳超での教育が継続されず小学校が最終学歴)、中年期では②高血圧③肥満④難聴、高年期では⑤喫煙⑥抑うつ⑦運動不足⑧社会的孤立⑨糖尿病を挙げ、各リスク因子の認知症発症への影響をモデル化し、完全に排除できた場合に認知症症例全体の何パーセントの予防につながるかを推算した(下図)。



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 各リスク因子については、小児期に15歳超での教育継続がなければ、認知の予備力が低下し、認知症リスク上昇につながると考えられている。


 難聴と認知症との関連についての研究は始まったばかりだが、複数のコホート研究から、軽度難聴でも長期的な認知機能低下リスクにつながることが示されている。また、修正可能リスクとして取り上げられているものの、補聴器の有用性など未解明の問題は数多く残されている。




認知症予防効果をweighted PAFで定量化


 Livingston氏らは、各リスク因子への曝露率、同曝露に起因する発症の相対リスクを基に人口寄与割合(PAF)を算出。共通性による補正を通じて各リスク因子のPAF全体への相対的寄与度をweighted PAFとして求め、これを各リスク因子が完全に排除された場合に予防可能な疾患の割合と定義した。


 その結果、これら9つのリスク因子全てを完全に排除できれば、認知症の35%を予防できる可能性が示された。


 認知症の主要な遺伝学的リスク因子としてアポリポ蛋白(apo)Eのε4アレルがあるが、apoE ε4を標的とする方法が確立されても、それにより予防可能な割合は認知症全体の約7%とみられており、上記リスク因子の修正の重要性がうかがえる。


 リスク因子への介入が全ての認知症の発症遅延・予防につながるわけではないが、介入の効果を最大化するには社会の中にうまく取り入れて安全かつ効率的な介入を図る必要がある。


 同レビュー執筆者の1人米・University of Southern CaliforniaのLon Schneider氏は「認知症発症予防を目的としたリスク因子への介入と並んで重要なのが、発症後の患者を受け入れ、その家族や介護者の支援する社会をつくり上げることだ」とコメントしている。認知症患者を受け入れ守ること、介護者の抑うつリスク低減に向けた効果的な介入を検討することも同レビューが掲げる主要メッセージの一部である。


 なお同レビューの限界として、Livingston氏らは、食事や飲酒の影響を考慮していないこと、一部の推定値についてはデータ不足によりグローバルなデータに基づいていないこと、一部のリスク因子は人生の他の時期でも影響力を持つと考えられることなどを挙げ、今後の研究課題としている。 






Lancetからの興味深い報告です。特に図表が秀逸ですね。このfigureをみると、認知症のリスクファクターと影響の大きさが一目同然です。


小児期の教育期間の短さは、個人の努力では如何ともしがたいです。生まれ育った家庭の経済力に依るところが大きいので、この部分に関しては国の出番だと思います。


中年期の高血圧と肥満は、生活習慣が影響を及ぼします。この部分は意識的に修復可能です。難聴も治療や補聴器によって改善できそうです。


高年期の喫煙や運動不足は努力で克服できます。このように考えると、合計で20%ほど認知症の発症することを軽減できそうです。


今回の報告を拝読して驚いたのは、同じリスクファクターといっても、因子によって割合が全く異なることです。特に難聴の悪影響の大きさは特筆するべきだと思います。


耳鼻科医師にとっては当然のことなのかもしれませんが、私たち整形外科医も、このことについては認識を新たにする必要がありそうです。





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駄ネタ:あなたの1/3 PWBはいくら?

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先日、足関節脱臼骨折(SE stage 4)の術後患者さんの部分荷重開始を決定しました。私は、SE stage 4の症例において、術後3週間はタッチダウンまでの免荷にしています。


通常、術後4週目からは1/3 PWBから荷重歩行を開始します。そして、今回の方も深く考えずに「1/3 PWBから開始しましょう」と患者さんに告げました。


患者さんに告げた場所は、偶然にもリハビリテーション室でした。ちょうどリハビリテーションの回診中だったのです。


それまでは、病床や車椅子で座っている状態でしか話をしたことが無かったので気が付かなかったのですが、1/3 PWBを告げた後に立ち上がってもらうとかなりの巨漢でした。。。


他院からのリハビリテーション目的での入院だったので、身長・体重を知らなかったのです。体重を確認すると98kgとのことでした。0.1トンもあるじゃないですか!!!


これで1/3 PWBかけると、30kgオーバーとなります。う~ん、これはマズいですね。急遽、20kgのPWBに変更しました。ルーチン・ワークには、時々落とし穴があるようです。






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