日本医師会から送られてきた資料の中に、注射剤によるアナフィラキシーにかかる死亡事例の分析 という小冊子がありました。以下要約します。
【アナフィラキシーの認識】
アナフィラキシーはあらゆる薬剤で発症の可能性があり、複数回、安全に使用できた薬剤でも発症し得ることを認識する。
【薬剤使用時の観察】
造影剤、抗菌薬、筋弛緩薬等のアナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤を静脈内注射で使用する際は、少なくとも薬剤投与開始時より5分間は注意深く患者を観察する。
【症状の把握とアドレナリンの準備】
薬剤投与後に皮膚症状に限らず患者の容態が変化した場合は、確定診断を待たずにアナフィラキシーを疑い、直ちに薬剤投与を中止し、アドレナリン 0.3 mg(成人)を準備する。
【アドレナリンの筋肉内注射】
アナフィラキシーを疑った場合は、ためらわずにアドレナリン標準量 0.3 mg(成人)を大腿前外側部に筋肉内注射する。
【アドレナリンの配備、指示・連絡体制】
アナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤を使用する場所には、アドレナリンを配備し、速やかに筋肉内注射できるように指示・連絡体制を整備する。
【アレルギー情報の把握・共有】
薬剤アレルギー情報を把握し、その情報を多職種間で共有できるようなシステムの構築・運用に努める。
アナフィラキシーショックに遭遇する可能性は誰でもあるため、上記の6つの提言はしっかり覚えておく必要があります。
最後に、小冊子に記載されていたアナフィラキシーショックの初期対応が記載された図を転載しました。普段から体が自然に動くように理解しておきたいものです。
医療事故の再発防止に向けた提言 第3号 より転載
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