整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

周術期のトラブル ~ドレーンが抜去不能~

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昨日の午前は、人工股関節全置換術(THA)でした。
透析患者さんの大腿骨頚部骨折後の偽関節です。


HD+頚部骨折後の症例だったので、やはり骨質が極めて悪かったです。
骨質の悪い症例に対していつもしているように、リーミングの際に軟骨下骨を半分程度残してカップ設置したので固定性は良好でした。


ほとんど大きな問題もなく閉創していましたが、最後の皮下縫合をしているときにドレーンの可動性が悪いことに気付きました。ドレーン刺入部と縫いつけ絹糸の間にエレバトリウムを挿入しても動かないのです。


おかしいと思って大腿筋膜の層まで抜糸したところ、中央よりやや末梢で大腿筋膜と一緒にドレーンまで縫合していました。ドレーンを引っ張るとドレーンを縫い付けてしまったところのみが局所的に動くので、縫いつけ部位の判断ができました。


いつも、ドレーンを縫いつけないように細心の注意を払っているのですが、それでも起こってしまいました。幸い、術中に気付いたので問題なかったですが、本当に冷や汗ものです。終わるまで何がおこるか分からないのが手術ですね。




人工関節周囲骨折(人工骨頭ステム下骨折)に対する治療法 その2

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人工関節周囲骨折(人工骨頭ステム下骨折)に対する治療法 その1 のつづきです。


人工関節周囲骨折は、寛骨臼骨折(両柱骨折)ほどではないにしても、難易度の高い骨折だと思っています。両者とも骨折を整復するまで止血する手段がありません。つまり、手術時間が長くなればなるほど、患者さんのダメージが大きくなるのです。


したがって、THAやTKAなどのように和やかな雰囲気の中で手術を施行するのではなく、持てるテクニックの全てを駆使して可能な限り手早く手術を終了します。都市伝説かもしれませんが、出血が大量になると、ある時点で”凝固系のシステムが壊れる”と思っています。


私自身、過去2度ほど”凝固系のシステムが壊れた”瞬間に立会いました。凝固系のシステムが壊れると、術野の風景が一変します。突然、術野のありとあらゆるところから薄い血液があふれ出てくるのです。


1度目は卒後6年目のときに人工股関節再置換術の際におこりました。オーベンの先生の助手として手術にはいっていたのですが、術野が突如として一変して出血が止まらなくなったのです。その経験は、私の中でトラウマになりました。


2度目も人工股関節再置換術の際におこりました。このときは私が執刀していました。少し目を離したすきに、前立ちの先生が大腿骨を内旋してしまい骨幹部骨折を併発しました。まさに、インプランテーション直前の出来事でしたが、このときも骨折を契機として術野が一変しました。


前回の経験があったので一切躊躇せず、あふれ出てくる血液と格闘しながらすぐに閉創しました。DICを併発しましたが10日程度で持ち直し、最終的にはロングセメントステムでの再置換+onlay graftを施行して無事退院まで持っていくことができました。


1回目の経験が無ければ、無駄な抵抗をして悲惨な結果になっていたと思います。いつまでたっても思わぬところで、足をすくわれるのが手術だと痛感しました。

人工関節周囲骨折(人工骨頭ステム下骨折)に対する治療法 その1

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昨日の午後は人工骨頭置換術後のステム下骨折でした。人工関節周囲骨折は、骨質が悪く、認知症を併発している場合も多いので治療が難しいと思います。


昨日の患者さんは約20年前にセメントステムを挿入されていました。
骨折前からステムの緩みをみとめ、Vancouver分類 Type B3と判断しました。
ちなみに人工関節周囲骨折の分類であるVancouver分類は、下記の論文を参考にしてください。


Duncan CP, Masri BA (1995)
Fractures of the femur after hip replacement. Instr Course Lect 44:293–304.


Type B3の場合、全身状態を全く考慮しないとRev. THA+骨移植術が望ましいです。しかし、高齢で伝い歩き程度の活動性で、認知症を併発している方に対してそこまでの治療はリスクが高すぎます。


そうなってくるとORIF+骨移植術という治療法を選ばざる得ません。最近、シンセスのロッキングプレートにケーブルワイヤー(cerclage cable wire )とperiprosthetic screw を併用できるようになりました(Cable system & Periprosthetic screws)。


具体的には、①LCP broad curved ②LCP-DFに、cerclage cable wire およびperiprosthetic screwを併用するのです。尚、②に関しては、反対側(左側の骨折なら右用を選択)のプレートを上下逆に使用します。つまり大腿骨顆部用の穴を、大転子側にもってきて使用するのです。


このケーブルワイヤーシステムは、シンセスにしては珍しく操作性が良いです。このような優れた内固定材料を利用できるようになって、難症例の治療にもやや明るさがでてきたように思います。それでもやはり、高齢者の人工関節周囲骨折は、解決するべき問題が山積している難しい領域だと思います。


その2 につづく

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