整形外科医のブログ

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βブロッカーの離脱症候群は要注意!

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先日、下肢の骨折の手術がありました。
受傷前から近医でβブロッカー( 交感神経β受容体遮断薬 )を処方されていました。


βブロッカーは、交感神経のアドレナリン受容体のうちβ受容体のみに遮断作用を示すので、降圧作用、狭心症状や不整脈の予防、心不全患者の心機能改善を期待して用いられます。


周術期で問題になるのは、当日朝に以前から服用しているβブロッカーの服用を中止するか否かです。麻酔科医師によると、10年ほど前までは服用中止が当たり前だったそうです。


しかし、長期投与されていたβブロッカーの服用を突然中止すると、「離脱症候群」が発生する危険性があるため、最近では手術当日にも服用してもらうことが多いそうです。


β遮断薬の長期投与によってβ受容体の数が増加して、長期投与前に比べて上向きの調節(アップレギュレーション)が発生します。


このため、βブロッカーの服用を急に中止すると、著明な血圧の上昇や虚血症状、不整脈が増悪することがあります。この状態はβブロッカーの離脱症候群と言われていて大変危険です。


周術期にβブロッカーの離脱症候群を併発することを防ぐために、今では手術当日もβブロッカーの服用継続が推奨されています。


高齢者の骨折では前医から処方されている薬がそろわないケースが多いと思いますが、βブロッカーが投与されている際には、慎重な対応が必要だと思います。





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一般的で使用頻度の高い、鎮痛薬・睡眠剤・感冒薬・胃薬・止痢薬・去痰薬・便秘薬等の薬剤が、全13章にわたって系統立てて書かれています。それぞれの章の最初に、薬剤の分類図が記載されています。各系統間の薬剤の使い分けも平易な文章で書かれており実践的な書籍です。









姉妹本に『類似薬の使い分け』があります。こちらは全15章からなり、降圧剤、抗不整脈薬、狭心症治療薬、脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療薬、鎮咳薬、皮膚科疾患治療薬、抗菌薬などが1章ずつ割り当てられています。








THA: カップ固定性不良の解決策

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人工股関節全置換術(THA)の術中のひとつのヤマは、カップ設置です。
骨質の悪い方や臼蓋形成不全の高度な方では、固定性が甘い場合がときどきあります。


カップの固定性が悪いと術者的にも焦ります。固定性不良の原因が、骨質の悪さに加えてリーミングの偏心である場合などは、リカバリーショットを打ち難い困った状況に陥るからです。


どうしようも無いときには、スクリューのみで固定する場合もあります。経験的には3本のスクリューがしっかり効けば、翌日から全荷重しても問題ないことが多いです。


な~んだ、それならそんなに焦る必要は無いじゃないか! と思うのは早計です。何故ならカップの固定性が無い状況でドリリングすると、カップが容易にずれてしまうからです。


このドリリング中に徐々にずれていくのは最もタチが悪いです。カップ設置角度が10度も異なると致命的なmalalingnmentになりますが、目視ではなかなか正確に判断できないからです。


ホルダーを外す際などにガクッとずれる場合には目視でもずれたことがはっきり分かります。しかしドリリングしながら徐々にずれていく場合には、目視ではまず分からないのです。


何とか3本のスクリューでカップを固定したものの、術後X線像をみてビックリしてしまうという事態を避けるためには、スクリューを1本固定した段階でホルダーを装着することをお勧めします。


寛骨臼内にカップを設置した状況でホルダーを装着することは結構難しいですが、この作業を省略すると痛い目に遭うのでがんばって確認するべきだと思います。




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初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です


    




大臣の威嚇は医療費削減に効果あり?!

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Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
エラい人からの「抗菌薬適正使用」書状は有効か? です。




政府の保健政策の最高責任者(Chief Medical Officer; CMO)からプライマリケア医個人に「あなたの抗菌薬処方量は多い」と指摘する手紙が届いたら,その後の抗菌薬使用量は変化するのか―現場の医師にとってはあまり愉快ではないかもしれないランダム化比較試験(RCT)の結果が報告された(Lancet 2016年2月18日オンライン)。




患者向けチラシの送付では有意な減少なし  


英国では一般市民や医療従事者向け抗菌薬適正使用キャンペーンが盛んに行われている。しかし一般市民へのチラシ配布などによる啓発の効果には限界があることも分かってきた。


英国では2012年からプライマリケア医の詳細な処方データが公開されるようになったが,個々の医師への能動的なフィードバックは行われていない。また,自分の行為などが社会的規範からどの程度外れているのかを可視化することで,当事者がその行動を規範に合わせようとする行動科学的手法の有用性が確立している。  


こうした背景を踏まえ,英・Imperial College LondonのMichael Hallsworth氏らは処方データに基づいた個別の手紙を政府の高位責任者の署名を添えて送り,自分の抗菌薬処方量が社会的規範の「外れ値」であるとフィードバックすることの有効性を検証した。  


地域ごとの国民保健サービス(NHS)において,抗菌薬処方率が上位20%に入るプライマリケア医1,581人を抽出。英保健省のCMOを務めるSally Davies氏の署名入りで「あなたの地域の大多数(80%)の医師1人当たりの抗菌薬処方量はあなたの処方量を下回っています」と太字で強調された手紙と抗菌薬適正使用のリーフレットを送付する群(791人)と何も送付しない群(790人)に割り付けた。


書簡による効果が署名者の肩書きや手紙の内容によるのかどうかを検証するため,別の時期に再度ランダム化割り付けを行い,患者向けのチラシを送る群と何も送付しない群での検討も行った。  


対象となったプライマリケア医は1,581人,割り付けの比率は1:1,介入群に送付された書状は累計3,227通だった。  


検討期間(2014年10月~15年3月)に手紙を送付した群の抗菌薬新規処方率は,非送付群に比べ有意に低下(P<0.0001),検討期間の約半年で全地域における抗菌薬処方が7万3,406件減少したと推計された。  


患者向けのチラシの送付では,非送付群に比べ抗菌薬新規処方率の有意な低下は見られなかった。  


同氏らは「社会的地位や知名度の高い人からの社会的規範を用いたフィードバックの手法により,低コストで抗菌薬処方を減少できた」と結論。今後の抗菌薬適正使用プログラムへの応用が期待されると述べている。 なお,同試験は英公衆衛生局の資金提供で実施された







これは、とても興味深い話ですね。もし、私のところに厚生労働省の塩崎大臣から「あなたの抗菌薬処方量は多い」という署名入り書簡が送られてきたらびっくりします(笑)。


フェイクだと思いながらも処方の際に、ちょっと萎縮するかもしれません。ただ、整形外科はもともとあまり薬剤を処方しない科です。そして、その中でも勤務医は更に処方量が少ないです。


つまり、もともと薬剤の処方量が少ない私のような勤務医に対しては、実際的な効果はあまり無いかもしれません。一方、最も効果的なのは一般内科で開業されている医師だと思います。


実際に、英国の実験においても対象はプライマリケア医です。 もちろん、一般内科の開業医は地域住民の健康全般に対応する必要があるので、必然的に処方量が増える傾向にあります。


財政的に強制力のある点数による誘導では、ちょっと強引過ぎて患者さんの不利益になる可能性を否定できないですが、今回のアイデアはよりマイルドで良い方法かもしれません。 


ただし、回数を重ねるごとに厚生労働省大臣からの威嚇(?)も効力が弱くなることが予想されるので、 ときどきフェイントをかけるような感覚で導入するのが望ましいのかもしれません。






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