先日、人工股関節全置換術(THA)を施行しました。
アプローチは、いつものように内閉鎖筋温存の後外側アプローチです。
このアプローチは股関節後方の安定性を得ることができるものの、寛骨臼のリーミングやポリエチレンライナーの設置が難しいことが難点で、術中にくじけそうになることが多々あります(笑)。
術野の展開を得にくい理由は、股関節後方の短回旋筋群の半分以上が温存されているため、大腿骨を前方に充分排除することができないからです。
展開が不十分だとインプラント設置不良の原因となります。苦労して股関節後方軟部組織を温存しても、インプラント設置不良があれば股関節の不安定性が出現するため本末転倒です。
やはり、インプラントの至適角度での設置が最優先だと思います。この相反する命題を解決するために、内閉鎖筋下縁を切離後に短外旋筋群を持ち上げて関節包のみT字状切開しています。
以前は内閉鎖筋の中央で切離していましたが、高率に中枢側内閉鎖筋が断裂するので内閉鎖筋を全て温存する方向に舵を切りました。その代わりに関節包をT字状に切開するのです。
このような試行錯誤によるマイナーチェンジの結果、上に提示した画像のように一部がささくれ立っているものの内閉鎖筋はしっかり温存されています。
一方、関節包のT字状切開によって、通常の後外側アプローチにはほど遠いものの、大腿骨の前方排除が少し容易になって寛骨臼の展開が若干改善されます。
まだ論文になっていないようですが、今年の股関節学会では同様に後方軟部組織を温存したアプローチを試行錯誤しながら行っている施設が多かったです。考えることは皆同じですね(笑)。
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初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です
人工股関節全置換術