骨・軟部悪性腫瘍を診察するケースは、市中病院においてはそれほど頻度が高くないと思います。しかし、見逃すと患者さんの予後に関わるので、悪性腫瘍を念頭に置いた診察が必要です。
良悪性の簡易な判断法は腫瘍サイズだと思います。やはり、5cmを超えるものは悪性腫瘍を念頭に置くべきです。10cm以上はかなりアブナイので専門施設への紹介が望ましいと思います。
骨腫瘍の診断に関しては、画像診断だけでも比較的診断が容易です。単純X線像だけでも、全体の80%ぐらいの症例で良悪性の鑑別が可能だといわれています。
良性骨腫瘍の所見として下記のような特徴があります。
1. 境界明瞭
2. 辺縁に硬化像がある
3. 経時的な増大傾向が無い
悪性骨腫瘍の所見として下記のような特徴があります。
1. 境界不明瞭
2. 骨膜反応がある
3. 経時的な増大傾向がある
4. 骨外病変が存在する
一方、軟部腫瘍の診断は非常に難しいと思います。画像診断はMRIが中心ですが、はっきり言って私には全く分かりません(笑)。
私がMRIの所見で良性腫瘍と言い切れる軟部腫瘍は、脂肪腫、嚢腫、神経鞘腫ぐらいです。悪性軟部腫瘍の多くは境界明瞭であり、骨腫瘍のように悪性に特徴的な所見はありません。
悪性軟部腫瘍は、悪性骨腫瘍と比べて比較的高齢者に多いことも特徴です。したがって、経時的に増大傾向がある高齢者の腫瘍は、アブナイので専門施設への紹介が望ましいと思います。
最後に、骨盤の骨腫瘍(転移性腫瘍を含む)や後腹膜腔の軟部腫瘍などの体幹部に発生する腫瘍の存在には注意を払う必要があります。
これらの腫瘍は症状が出にくいので、腫瘍が大きくなるまで発見されないケースが多いです。私の周りにも後腹膜腔の悪性軟部腫瘍のため、不幸な転帰を辿った方が居られました。
あまり有効な対策は無いですが、慢性腰痛の患者さんに関しては体幹部悪性腫瘍の存在を念頭に、一度ぐらいはCTやMRIなどで骨盤や後腹膜腔の精査をしてもよいかもしれませんね。
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骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患 (整形外科専門医になるための診療スタンダード 4)