昨日の午後の手術は人工股関節全置換術(THA)でした。
変形性股関節症に大腿骨頚部骨折を併発した症例です。


変形性股関節症(OA)に大腿骨頚部骨折を併発する症例はめったに見かけません。
OAのために頚部周囲の骨質が硬いことが理由で骨折しにくいのでは?と考えています。


変形性股関節症に大腿骨頚部骨折を併発した症例のTHAはほとんど経験ありませんでしたが、
今回気付いた点を列記します。


・ 通常のOAと異なり関節の拘縮が高度でした(受傷後12日)。
   関節内の軟部組織が炎症のために肥厚して拘縮しているような印象です。
・ 高齢の方だったことも関係あると思いますが、寛骨臼の骨質が悪くて、
   表面の硬化した軟骨下骨を抜けると、数秒リーミングしただけで内板まで到達しました。
・ 拘縮してタイトなので関節の緊張はそれなりにあるのですが、伸張性に乏しいため、
  少しリリースすると途端に易脱臼性が出現します。ストライクゾーンが非常に狭い印象です。
・ 上記のような理由で、ジンマー(ZIMMER)のキネクティブ(kinectiv)のような、
   ネックチェンジャブルタイプのステムの方がより安全だと思いました。


THAに関しては大腿骨頚部骨折よりもOAの方が簡単だと思います。
幸い、あまり経験することは無いような気がしますが・・・。


蛇足ですが、変形性股関節症に大腿骨転子部骨折を併発した場合は、骨接合術を第一選択とするべきだと思います。転子部が粉砕していると、ステムの設置が極めて困難だからです。