今日の午前は、人工膝関節全置換術(TKA)でした。使用機種は、ライト・メディカル(WRIGHT MEDICAL)が今年1月から販売開始したEVOLUTIONでした。


EVOLUTIONの特徴は、脛骨コンポーネントにも左右があることです。主なインプラントメーカーで脛骨コンポーネントにも左右があるのは、ライト・メディカルとスミス&ネフュー(Smith & Nephew)のみです。日本、米国、韓国の3カ国300人のTKA患者さんの膝の解剖学的データを元にして、EVOLUTIONの脛骨コンポーネントは開発されたそうです。


解剖学的に脛骨内顆は外顆に比べて大きいため、脛骨インプラントのサイズは外顆の前後径で決定します。このことから脛骨コンポーネントに左右が無いと、必然的に脛骨内顆の前後のカバーレッジが悪くなります。脛骨コンポーネントにも左右をつくることで、脛骨内顆のカバーレッジ(被覆度)を上げることが可能になります。


脛骨内顆のカバーレッジがよくなると脛骨内顆皮質骨上にインプラントが載りますので、脛骨コンポーネントの沈下を抑制できます。また、大腿骨コンポーネントとのトラッキングが改善されることで機械的な屈曲角度が160度を越えるので、多少は術後の関節可動域が改善する可能性もあります。


手術で気付いた点は、まだ発売して間もないためかデバイスが洗練されていないように感じました。また、キール付きの脛骨トライアルがないため、最もインプランテーションが難しい脛骨コンポーネントの設置シュミレーションができないのが難点です。あと、最後のインサートを挿入する際に、軟部組織を完全に排除する必要があるので少々コツが要りそうです。


最後に難点を挙げましたが、総じてなかなか良いインプラントだと思いました。もう少しデバイスがこなれてきたらTKAのメインの機種の一角を占めることになるかもしれません。