昨日の午後は、腸腰筋膿瘍に対する掻爬洗浄術でした。
この方は透析患者さんで、1週間前から左股関節部痛が出現しました。


5日前に初診・入院してセフェム系抗生剤を投与しましたがWBC/CRP 13000/32と高値が続き、昨日から血小板数が低下してきたので救命のために手術を選択しました。


腸腰筋膿瘍は糖尿病や透析施行症例のような易感染性の方に発生することが多いです。化膿性脊椎炎(椎間板炎)に続発するケースが多いのですが、今回は脊椎や椎間板に感染を認めませんでした。


もともと腸腰筋は血流が良いので抗生剤投与のみでも軽快することが多いです。CTガイド下にチュービングしてドレナージすれば更に良いのですが、今回のように保存治療に抵抗性の場合には手術を選択せざる得なくなります。


手術は、Smith-Petersenに準じて骨盤~股関節前方アプローチで進入します。腸骨筋~股関節に膿瘍を形成しているケースが多いので、鼠径靱帯を挟んで骨盤腔側と股関節側の両方から膿瘍を掻爬する必要があります。


骨盤腔側は腸骨内板を骨膜下に剥離すると腸骨筋の膿瘍形成部に容易に到達することが可能です。比較的浅層まで膿瘍を形成していることが多いため、弓状線まで展開することはあまり無いように思います。


股関節前方の展開は、殿部下に枕を入れてやや患側の骨盤を持ち上げるようします。筋間を剥離すると大腿直筋を確認できます。大腿直筋には外側大腿回旋動脈が伴走しているので注意が必要です。


患肢を動かして大腿骨頭を触知してから、カテラン針で関節裂隙の位置を確認します。前方関節包は後方に比べて遥かに厚いです。あまり股関節の前方からアプローチすることは無いと思いますが、腸腰筋膿瘍はそれほど珍しい疾患ではないのでマスターしておいて損は無いと思います。






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