9月半ばにバイク事故で搬送されてきた患者さんを診ています。この方は肩関節脱臼骨折+下垂手をきたしていましたが、よく診察すると筋皮神経や腋窩神経領域にも麻痺を認めました。


腋窩神経領域の知覚障害は数日で軽快したので、後束部での腕神経叢損傷と診断しました。ご存知のように腕神経叢損傷は損傷部位によって下記のように分類されます。




brachial_plexus_injury


                 (日本整形外科学会ホームページから転載)



① 節前損傷 (根引き抜き損傷)

② 節後損傷

  根・幹部での損傷
  ②-1 上位型(C5, C6)
  ②-2 中位型(C7)
  ②-3 下位型(C8、Th1)
  ②-4 全型(C5~Th1)

  束部での損傷
  ②-5 外束部: 筋皮神経麻痺+正中神経麻痺(FCR、円回内筋)
  ②-6 内束部: 尺骨神経麻痺+正中神経内側麻痺
  ②-7 後束部: 腋窩神経麻痺+橈骨神経麻痺+肩甲下神経麻痺+胸背神経麻痺



私は手の外科専門医でないので、上図を確認しながら損傷部位を推測しました。もちろん、ある程度時間が経過した時点で針筋電図を行い、最終的な高位診断を行う必要があります。


ここから先の診断・治療に関しては手の外科医の力を借りるしかないのですが、初診の段階で単なる橈骨神経麻痺と誤診しないように気をつけなければならないと思いました。




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