Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
牛乳の多量摂取で骨折・死亡リスクが上昇」です。




毎日,数杯の牛乳を摂取していれば,骨粗鬆症による骨折リスクの低下につながるとの“常識”に死角はないのか?


実験系でD-ガラクトースの老化促進作用が示されていることを受け,スウェーデン・Uppsala大学外科のKarl Michaëlsson氏らは,同国の大規模コホートを対象に日々の牛乳摂取が全死亡および骨折に及ぼす影響を検討した。


牛乳には,カルシウム,リン,ビタミンDなどの骨格系維持に重要な栄養素が多く含まれており,1日3〜4杯の牛乳摂取により骨粗鬆症関連の医療コストを20%以上削減できるとの指摘もある。


その一方で,乳糖の代謝産物であるD-ガラクトースは,酸化ストレス,慢性炎症,神経変性,免疫応答低下,遺伝子転写機構への影響を介して老化に関わっているとの動物実験結果も報告されている。


マウスではD-ガラクトース100mg/kgの皮下注射により老化が促進されるとの報告がある。これはヒトでは6〜10g,すなわちコップ1〜2杯(コップ1杯=200mL)の牛乳に相当する量であるという。


同国の大規模コホートの結果、牛乳を多く摂取している群では,骨折および死亡リスクが有意に上昇し,特に女性でこうした傾向は顕著であった。


これに対して,牛乳以外の乳製品(ヨーグルトなどの発酵乳製品,チーズ)では,牛乳とは逆の傾向が認められることが感度解析から明らかになった。


チーズや発酵乳製品の摂取量が多い女性では,同摂取量が少ない女性と比べて全死亡リスク,骨折リスクともに低く,1日1サービング摂取するごとに全死亡および大腿骨近位部骨折のリスクは10〜15%(P<0.001)減少するとの解析結果が得られた。





従来の世間の常識を覆す研究結果だと思います。私達は小さな頃から「牛乳を飲むと骨が強くなる」と言い聞かされて育ってきましたが、どうも雲行きが怪しくなってきました。


ただ、論文中でもMichaëlsson氏らが述べているように、本研究のみで骨折予防を目的とした牛乳摂取推奨を見直すべきか否かを論じることは慎むべきでしょう。


D-ガラクトースの老化への影響は実験系で確認されているにすぎず、今回の観察研究デザインでは残存する交絡因子や逆の因果関係の存在を排除できていないていないからです。


しかし従来からの”常識”の中にも、実は正しくないことが結構な頻度で存在するのかもしれません。「常識を疑え」ではありませんが、既成概念に囚われないことも重要かもしれませんね。




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