先日、肘部管症候群に対する尺骨神経剥離術がありました。肘部管症候群の患者さんは、変形性肘関節症がベースにあるため肘関節伸展制限を認めることが多いです。


しかし、今回の方は変形性肘関節症が全く無く、関節可動域制限がありませんでした。術中所見は、オズボーン靭帯の近位でpseudo neuromaの形成は認めました。


おそらく、オズボーン靭帯部での尺骨神経の圧迫が原因なのでしょうが、確実性を担保するために尺骨神経皮下前方移行術も追加で施行しました。


尺骨神経皮下前方移行術では肘部管を中心に広範囲に尺骨神経を展開する必要があります。中途半端な展開では肘関節部で前方に移行した尺骨が”く”の字に曲がってしまうからです。


しかし、実は広範囲に尺骨神経を展開するだけでは不十分です。中枢側の筋間中隔の切離を忘れると、テント状に緊張した筋間中隔の上を尺骨神経が跨ぐことになり圧迫されるのです。


また、筋間中隔の少し奥には太い静脈が走行しています。何も考えずに筋間中隔をそのまま切離すると、この太い静脈を損傷してしまうので注意が必要です。


尺骨神経皮下前方移行術のピットフォールは、①筋間中隔の切離 ②筋間中隔に伴走する太い静脈の保護 だと思います。手術の際には頭の片隅に置いておくと良いのではと思います。



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