今回の日整会誌(Vol.89 No.10 October 2015)のJOS掲載原著論文要旨に、腰部脊柱管狭窄症の治療において症例に最適な薬剤の選択を促す という論文が紹介されていました。


著者は美濃市立美濃病院整形外科の中村正生先生です。この研究では複数指標による比較検討を同時に行えるNMatrixを用いて症例に最適な薬剤の検討を行っています。


腰部脊柱管狭窄症の薬物治療において、整形外科の日常臨床では主に下記の4製剤が処方されるケースが多いと思います。


1. PGI2 (ドルナー)
2. EPA (エパデール)
3. SGL (アンプラーグ)
4. PGE1 (オパルモン)


中村先生の研究では、PGE1は間欠性跛行を有意に改善するまでに他剤よりも長期間有すること、EPAは他剤に対して各時点で改善傾向を示すという結果でした。


この研究結果から、主訴が起立動作が困難な症例にはPGE1を、主訴が間欠性跛行の症例にはEPAを優先処方するなど、症例に最適な薬剤を選択することができると結んでいます。


今回の研究目的は、同効同種の治療法を客観的・多面的に相互比較するNMatrixの検証ですが、題材に使われた腰部脊柱管狭窄症の薬物治療でも有意義な結果が示されています。


私は、いままでEPAをあまり積極的に使用していなかったのですが、次の外来からは他の3剤に加えてEPAも症例に応じて処方していこうと思います。


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