先日、小児整形外科疾患の講演を拝聴しました。
小児整形外科で扱う疾患はたくさんありますが、その中でも特に重要な疾患は下記の3つです。


・ 先天性股関節脱臼
・ 大腿骨頭すべり症
・ 先天性内反足


まず先天性股関節脱臼ですが、現在の発生率は0.1~0.3%で40年前の約1/10まで減っているそうです。これは正しい育児教育が周知徹底された成果です。もちろん検診の効果もあります。


乳児検診では股関節の開排制限の有無が重要なポイントです。70度以下しか開排制限しない児ではエコーや単純X線像などの精査が必要です。


皮膚溝の左右差やAllis徴候もチェックポイントですが、両側例では分かりにくいのがピットフォールです。深い皮膚溝がある場合には注意する必要があります。


リ-メンビューゲル法(Rb法)は生後7ヶ月までしか適応がなく、これ以後の治療は入院でのオーバーヘッドトラクション(OHT)となります。Rb法で治療できる機会を逃さないことが重要です。



次に先天性内反足ですが、生下時から外観の変形が著明であるため診断に難渋することはないので治療がポイントとなります。先天性内反足の治療は、Ponseti法が主流だそうです。



Ponseti法は、アイオワ大学のPonseti 教授が先天性内反足の治療法として発表したもので、最近では先天性内反足に対する治療方法としてグローバルスタンダードになりつつある方法です。


6週間の間、徒手矯正してギプス固定を毎週行うことで尖足以外の変形要素を矯正します。そして矯正ギプス終了後に遺残した尖足の矯正のためにアキレス腱の切離を行います。


術後は3週間のギプス固定を行い、その後はデニスブラウン装具を処女歩行開始までは終日装着します。Ponseti法によって侵襲の大きな手術の頻度が激減したそうです。


最後に大腿骨頭すべり症ですが、暴力的な整復は禁忌です。股関節学によると、stableな症例や1週間以上経過したunstableな症例に対する徒手整復、多数回の操作が該当します。


大腿骨頭すべり症では特別な事情が無い限り保存治療が選択されることはありませんが、うっかり徒手整復してしまわないように注意する必要があります。
 



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