日本整形外科学会雑誌の第89巻を拝読していたところ、私達医師にとってはかなり深刻な内容の教育研修講座の記事がありました。


関谷法律事務所の宗像 雄 弁護士による” 診療ガイドラインの法的意義 -「診療ガイドライン」は誰のためにあるのか” です。


診療ガイドラインが作成された目的は、医学的な根拠に基づく医療(evidence-based medicine: EBM)を実現することで、EBMを実現するための手段のひとつに過ぎませんでした。


このため導入された当初は、医師のための「助言」が主な役割でした。ところが、司法が裁判の判断材料に利用するようになったため、現在では「規制へと変容しています。



これは、医療訴訟において医療サービスが「良質かつ適切な」ものであったか否かを判断するにあたって、事故のあった時点の医療水準の内容が
診療ガイドラインで規定されるためです。


医療について素人の裁判官が医療訴訟で判断する材料は
診療ガイドラインなので、その記載内容が裁判における判断材料の「すべて」となります。


そして、医師が
診療ガイドラインの記載内容に従わずに事故が発生した場合、従わなかったことについての「合理的理由」を証明する必要があります。


言い換えると、わが国の裁判実務では
診療ガイドラインに記載された方法を行わなかった場合、医療機関側で注意義務違反ないし過失が存在しないことを証明しなければならないのです。


このため、 
診療ガイドラインの記載内容は医師が従わなければならない「規制」となってしまいました。診療ガイドラインの記載内容から外れた医療行為は危険な行為だと考えるべきです。


診療ガイドラインは、作成当時の国内最高レベルの専門家が作成するので質は担保されます。しかし、個々の患者は異なるため、診療ガイドラインの内容がベストでないことが多いです。


そして、平均よりも知識や経験が豊富で技能に優れた医師は、
診療ガイドラインの記載内容に縛られてしまい、本来の実力を発揮することが阻害されてしまう問題点があります。


このように、
EBMを実現するための手段のひとつとして期待されていた診療ガイドラインが独り歩きしてしまい、日本の医師全体を規制する危険な地雷に変容してしまいました。



実臨床を担う者としては、
記載内容が医師の裁量権を過度に制限することにならないように、診療ガイドラインを作成される先生方が慎重な配慮をして下さることを期待したいところです。


追記: 診療ガイドラインの地雷を踏まない予防策はこちら 

 




★★ 『 整形外科の歩き方 』でお宝アルバイト獲得のための基本講座を公開中です! ★★