私たち整形外科医は日々たくさんの症例の手術をしています。
手術数が増えると、ある一定の頻度でうまく行かない症例を経験することになります。


骨折などの外傷であれば、ある程度仕方無いですし患者さん自身も納得する場合が多いです。しかし、人工関節や脊椎手術などの予定手術では、なかなかそういう訳にはいきません。


特に働き盛りの壮年の患者さんでは職場復帰の時期の問題があるので、予定どおりに行かないケースでは何かとトラブルの原因となります。


先日、予定手術で免荷期間を少し設けた方がよい症例に遭遇しました。術中所見で骨の被覆がかなり悪かったため、固定性にやや問題があると判断したのです。


2週間ほどの免荷期間を設けて経過観察したところ特に問題無かったのですが、壮年の患者さんにとって2~3週間入院期間が延長することは、結構ダメージが大きいです。


昨今ではあまりに長期休業するとリストラされるリスクもあります。そのような状況は私も充分に理解しているだけに、患者さんだけでなく主治医の私も苦しみます。


患者さんは痛くないので、早く荷重して退院したい一心です。しかし、この要望に負けていつもどおりの後療法を行って、万が一のことが発生すると大打撃となってしまいます。


患者さんとの信頼関係を保ちつつも安全に病院から送り出すために、患者さんからのプレッシャーと術後トラブル発生リスクとの板ばさみになります。


外科医として精神的に辛い状況ですが、ここで患者さんからのプレッシャーに負けてはいけません。全ての状況を最も知っているのは主治医だからです。


もちろん、患者さんの置かれている状況を勘案しつつですが、術後トラブル発生防止を最優先課題にして治療をあたろうと思います。術後トラブルが発生するとお互い不幸ですから・・・




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