先日、人工膝関節全置換術(TKA)を施行しました。
この方はアトピー性皮膚炎のため、ステロイドパルス療法を受けた既往があります。


現在の皮膚の状態は比較的落ちついているのですが、アトピー性皮膚炎の既往がある方を甘く見てはいけません。アトピー性皮膚炎の肌は皮膚バリア機能が弱いため、乾燥肌になります。


乾燥した皮膚は外界の刺激に対してバリア機能が低下し抵抗力が弱いため、細菌感染やウイルス感染を起こしやすくなります。



図14 皮膚のバリア機能


(九州大学皮膚科学教室のホームページより抜粋)


上図のように、正常皮膚では皮膚のバリア機能がしっかりと働いていますので、体外から体内に侵入しようとする化学物質や微生物をブロックしてくれます。


また水分が体外に放出されるのも防いでくれています。しかし乾燥してバリア機能が低下したアトピー性皮膚炎の皮膚では、体外からの刺激物質が侵入しやすくなるのです。


したがって、一見症状が軽快しているように見える皮膚であっても、乾燥肌であれば、バリア機能が低下しているため微生物に対する抵抗力が減弱していると認識するべきです。


私の経験上でも、アトピー性皮膚炎の方は予想もしない感染症を併発することがありました。このため、手術後は通常症例よりも感染に対して慎重なモニタリングが必要だと思います。


私は人工関節置換術後の抗生剤は通常1~2日間のみ投与していますが、アトピー性皮膚炎の方に関しては、経静脈投与終了後にもMINOを1週間ほど経口投与しています。


MINOの経口投与は、少し慎重過ぎるかもしれません。しかし、アトピー性皮膚炎はあなどれない基礎疾患であり、足元をすくわれる可能性があると認識しています。 





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