いよいよ、新年度入り間近です。
この時期は診療報酬が大きく変わる時期なので注意が必要です。


整形外科関連の診療報酬改定では湿布のひと月70枚制限の問題がトピックスです。平成28年4月1日から70枚を超える湿布薬に処方制限がかかりました。 


「違う日であれば新たに70枚処方できる」や「詳記を書けばOK」ではなく、全症例一律に1ヵ月に合計70枚以内という規制がかかります。 具体的には下記のような要件です。


  • 71枚以上まとめて外来処方すると処方箋料が取れなくなる
  • 同様に71枚以上まとめて退院時持参薬処方すると処方箋料が取れなくなる
  • 当該超過分の薬剤料も持ち出しで丸損になり、調剤料と調剤技術基本料も取れない


70枚以上/回の湿布を処方されている患者は全国で30万人/月を超えています。 今回の枚数制限によって年間数十億円の医療費削減が見込まれています。


診療報酬規定には「医師が疾患の特性等により必要性があると認めたときはOK」と記載されていますが、おそらく医療倫理的に問題が生じるケースに対する厚労省側の予防線です。


70枚を月に3~4回投与するぐらいなら良いだろうというネット上の私見が散見されますが、調剤薬局に実際に降りてきている指示は月70枚を超えると全例疑義照会になっているそうです。


また、A病院で70枚受け取った患者が同月にB病院で湿布処方を受けた場合は、必ずB病院に疑義照会をせよ、という指示も出ているそうです。B病院的にはたまったものではありません。


全て疑義照会を受けると薬剤部も私たち医師もかなりの手間を取られることになります。このため実際的にはかなり厳しい指示と認識するべきでしょう。


今回の改訂は明らかに診療報酬削減が目的です。審査側も強行に切りにくることが予想され、少々の詳記では受け付けてもらえないことが予想されます。


よほど医療倫理的に整合性がある合理的な症状詳記がない限り、処方箋料は損失になることが予想されます。 しばらくは厚労省の意向に沿った対応をしておくのが賢明でしょう。


なお、貼付剤の処方はこれまで通り全量表示で良いですが、何日分に相当するかを記載しなければならないという規定も追加されました。


これに関しては特に日数制限はありませんが、何日分として処方するのかを明確にしなければなりません。70枚以上の処方に対する危機感を持たせる意図があるのでしょう。 


私の勤務する病院(私立の中規模病院)では院長のトップダウンで71枚/月以上の湿布を投与しないことになりました。 この件について、私は院長の英断だと判断しています。


国民皆保険制度を守るためにも医療費削減は待ったなしの状況です。湿布のようにあまり重要でない医療費を削減するためにも、私たち医師は積極的に協力するべきだと思います。




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