大腿骨転子部骨折は非常にポピュラーな骨折です。
しかし、いまだに私はこの骨折の手術で気付きを得ることがあります。


先日は、80歳台後半の軽介助で車椅子移乗レベルの患者さんの手術がありました。自力歩行がほぼ不可能なため、大腿骨の廃用性骨粗鬆症が著明でした。


術前に計測すると、大腿骨髄腔径が18mm程度はありそうでした。そして、ショートネイルのテンプレートを単純X線像に合わせると、明らかに径10mmでは小さ過ぎる印象です。


ただ、この方は高齢者とは言え、非常に小柄でスリム(?)な方でした。この体格で12~13mmのネイルを挿入するのは、本当に大丈夫なのかという危惧を抱きました。


このような場合には直観に従う方が吉であることが多いです。ある程度、髄腔占拠率を稼げないことは犠牲にして10mmのショートネイルを挿入したところ、結構ぎりぎりな感触でした。


特に大腿骨前弯が過大な症例でもありません。これはおそらく拡大率の問題だと思います。痩せ型の患者さんでは皮下脂肪や筋肉などの軟部組織が乏しいです。


このため、通常の症例に比べて骨がイメージの管球に近くなります。通常よりも拡大されてしまうため、出来上がった画像の拡大率が110%を越えてしまっている可能性があります。


このような条件の悪い画像を鵜呑みにすると、術中に痛い目に合ってしまいます。確かにstove pipe様の大腿骨は散見されるため、髄腔の広い症例は多いです。


しかし、体格と比較してあまりに違和感のある画像では、普段しないような極端な選択はしない方が無難だと思います。ネイルを挿入できないのは悲劇ですから・・・




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