先日、夜診のスポットアルバイトを頼まれました。
私にとっては初めて行く病院で、普段は他大学の専攻医で回しているようです。


外来をしていると、「今日も手指の腱鞘内注射を希望」という患者さんがやって来ました。カルテをみると、この数か月で同じ手指に合計6回も腱鞘内注射を施行されているではないですか!!


腱鞘内注射のメニューは水溶性ケナコルトで、これ自体は妥当な選択だと思います。しかし、同一指に6回もの腱鞘内注射を施行すると、屈筋腱断裂の危険性が高まります。


この手の皮下断裂は屈筋腱自体の変性が強いため治療に難渋します。3回以下の腱鞘内注射での屈筋腱断裂の報告はあまり無いようですが、それ以上では多数の報告例があります。


これらの報告を考慮すると、同一手指に対する腱鞘内注射は2~3回までにしておく方が無難だと思います。そして、水溶性ではなく懸濁性ステロイドはもう少し厳しめにするべきでしょう。


腱鞘内注射後の屈筋腱皮下断裂は、注射後半年以上経っても併発する可能性があります。今回のケースは論外ですが、私たちもステロイド腱鞘内注射の既往を確認するべきだと思います。


前医で2回の腱鞘内注射を受けていることを知らずに、こちらで1回腱鞘内注射を施行した結果、屈筋腱断裂を併発しては目も当てられませんから・・・




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