サインバルタをご存知でしょうか?
サインバルタ(一般名:デュロキセチン)はSNRIと呼ばれるタイプの抗うつ剤です。


日本では2010年から販売されている比較的新しい薬剤のため処方頻度はまだ多くないですが、世界的にみればかなり多く処方されている抗うつ剤です。


そして、2015年5月に「線維筋痛症に伴う疼痛」、2016年3月に「慢性腰痛症に伴う疼痛」が適応に追加されたため、イーライリリーと塩野義の両社から整形外科医への営業が多くなりました。


腰痛に対する作用機序は、内因性疼痛抑制機構に関与するセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを抑制することで下行性疼痛抑制系を賦活化し、鎮痛効果をもたらすとされています。


腰痛に対する薬剤としては新しいタイプなので、私も何例か使用してみました。しかし、効果が出る前に眠気や嘔気などの副作用を併発して断念する症例が多い印象です。


そして何よりも危惧されるのは、自殺念慮や自殺企図です。もともとサインバルタは抗うつ剤なので、文字通り「抗うつ作用」があります。


慢性腰痛症の患者さんには精神的にうつ傾向にある方の割合が比較的多いですが、このような患者さんにサインバルタを投与するとうつ症状が改善します。


うつ症状が改善するのは良いことではないのか? と思った方は、学生の時に習った精神科の授業を思い出してください。うつ病で最も危ないのは病気が快方に向かう回復期です。


「自殺企図」はうつ病の症状が最もひどい極期ではなく、病初期の不安・イライラが強いときと、病気が快方に向かう回復期に起きやすいことが知られています。


うつ病の極期では自殺する意欲もわかない状態なのですが、うつ病の回復過程に入り意欲が出てくると自殺への衝動性が高まるのです。


慢性腰痛に対して処方していたサインバルタのために患者さんが自殺してしまったら目も当てられません・・・。可能性はとても低いのでしょうが、「低いから問題なし!」では片づけられません。


たかが腰痛ですが、されど腰痛です。腰痛治療ではred flagsに注意するだけではなく、サインバルタのような治療薬を使う場合にも十分な注意を払うべきでしょう。




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