私は、鎮痛剤の中ではトラムセットを好んで処方します。
これは、腎機能に対する影響が少ないため、比較的長期投与可能だからです。


特に慢性腰痛症や慢性頚部痛の患者さんの治療では、画像や身体所見で重篤な器質疾患の無いことを確認した上で、トラムセットを第一選択薬として処方しています。


特に便秘などの副作用の出にくい若年者での評判は上々で、すっかり名医になったような気分になることが多いです(笑)。


しかし、脊椎由来の慢性疼痛ではかなりいい感じの治療効果を見込めるトラムセットですが、関節症由来の疼痛に関してはイマイチな印象を抱いています。


KL grade 1程度で関節水腫のきつい症例は、比較的若年者で見かけることが多いです。この場合、膝関節痛の直接の原因は関節水腫です。つまり関節液が貯留するから痛いのです。


トラムセットの鎮痛効果はオピオイドがメインのため、消炎効果は通常のNSAIDsほどありません。トラムセットを服用しても、関節水腫はあまり軽快しないため鎮痛効果が弱いのです。


このようなことを勘案して、私は脊椎由来の慢性疼痛ではトラムセットを第一選択としているものの、膝関節などの関節症に対しては関節注射やロキソニンを第一選択としています。




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一般的で使用頻度の高い、鎮痛薬・睡眠剤・感冒薬・胃薬・止痢薬・去痰薬・便秘薬等の薬剤が、全13章にわたって系統立てて書かれています。それぞれの章の最初に、薬剤の分類図が記載されています。各系統間の薬剤の使い分けも平易な文章で書かれており実践的な書籍です。









姉妹本に『類似薬の使い分け』があります。こちらは全15章からなり、降圧剤、抗不整脈薬、狭心症治療薬、脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療薬、鎮咳薬、皮膚科疾患治療薬、抗菌薬などが1章ずつ割り当てられています。