先日の外来で、1ヵ月前から右足底の土踏まず部がしびれるという主訴の患者さんが初診されました。「足底の土踏まず部だけがしびれる」という主訴は比較的珍しいと思います。


この症状を聞くと、第一に思い浮かべなければならないのは足根管症候群です。足根管症候群は、内果後下方の足根管で後脛骨神経が圧迫されることで発生します。


tarsal-tunnel-anatomical-illustration



今回の患者さんは、内果後下方に強烈なtinel like signを認めました。単純X線像では骨性の異常所見は認めないものの、土踏まず部から拇趾足底にかけて軽度の知覚低下がありました。


足根管内には後脛骨神経以外にも、後脛骨筋腱・長趾屈筋腱・後脛骨動脈・後脛骨静脈・長母趾屈筋腱が走行しており、表層は屈筋支帯で覆われています。


手根管症候群では屈筋腱鞘炎がベースにあるケースが多いですが、足根管症候群では上記の筋腱の腱鞘炎よりも、ガングリオンの併発によって発症することが多いそうです。


ガングリオンの場合にはエコー下でガングリオン穿刺すればよいのですが、忙しい外来中に初診患者さんをエコーガイド下のガングリオン穿刺術をほいほいするほどの余裕はありません。


そこで、まずリリカ75mgから投与開始して、用量調整しながらMRIを依頼することになりました。足根管症候群は名前こそそこそこ有名ですが、実際の患者さんはかなり少ないと思います。


足根管症候群は一度経験すれば忘れないですが、めったに経験する機会がないので常にアンテナを張っておく必要があります。「足底のしびれ」では足根管症候群を第一に考えましょう。




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