Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
発汗反応で高齢ドライバーの運転能力を評価 です。




高齢になるほど自動車での移動の必要性が高くなるが、その一方で判断能力や運動能力は低下していく。どのような状態ならば運転可能であるのかの評価は重要であるものの、その判断基準は確立していない。


信州大学保健学科実践作業療法学講師の岩波潤氏は、手掌発汗反応と皮膚電位反射を指標とする自動車運転認知行動評価装置で検討を行い、同装置が高齢ドライバーの誤操作を評価しうることを第24回日本発汗学会(8月27〜28日)で報告した。



運転に関わる認知行動を実態に即して評価  

今回、岩波氏が用いた自動車運転認知行動評価装置は、同大学基礎作業療法学教授の小林正義氏が開発したもの。危険が予測される映像に合わせて模擬運転操作を行わせ、ブレーキなどの操作反応と同時に皮膚電位反射と手掌部発汗量を測定して評価を行う。同装置は、70歳以上の運転者に行われている警視庁式運転適性検査に比べて、運転に関わる認知行動をより実態に即して評価することが可能という。  


対象は、日常的に運転を行っている高齢群100人(男性46人、女性54人、平均年齢70.0歳)と、大学生の若年群99人(同29人、70人、21.8歳)。狭い路地で見通しの悪い2場面(十字路、丁字路)の映像を用いて、両場面で正しくブレーキ操作できた被験者を操作群、それ以外を非操作群と定義し、手掌部発汗量と併せて検討を行った。



ブレーキ操作を正しく行えない群は発汗量が高値  

その結果、高齢群では非操作群(69人)が、若年群では操作群(91人)がそれぞれ有意に多く(P<0.01、χ2検定)、高齢群の約7割は危険予測場面と一致したブレーキ操作ができていなかった。危険予測場面の発汗量は高齢群、若年群ともに非操作群の平均値が操作群に比べ有意に多かった。また、一般に手掌部発汗量は加齢によって低下するとされるが、操作群、非操作群ともに高齢群は若年群より発汗量が有意に多かった(P<0.01、Tukey-Kramer検定)。これらの結果は、危険が予測される場面で、高齢群や非操作群が高い緊張状態にあることを示すものと考えられる。  


岩波氏は発汗量とブレーキ応答の関係が分かる典型例として、危険予測場面における非操作群高齢者(78歳男性)と操作群若年者(19歳女性)のデータを紹介した(図)。このデータから、正しいタイミングでブレーキを踏んだ若年者は操作に応じて発汗量が増え、ブレーキ操作を正しく行わなかった高齢者は、発汗量が高値のまま変化していないことが分かる。


図.危険予測場面(十字路)における非操作群高齢者と操作群若年者の発汗反応とブレーキ応答




以上の結果から、同氏は「本装置による模擬運転テストは、高齢ドライバーの危険の見落としや誤操作を評価できる可能性がある」と述べ、「今後は、飛び出しなど予期せぬ危険場面を用いた検討についても行っていきたい」と結論付けた。

                                 





ほぉ、これはちょっとコワい報告ですね・・・。何となく予想はしていたのですが、高齢者とは言え比較的若い70歳の方と22歳の若年者との間に、ここまでの差があるとは思いませんでした。


特に70歳の約7割の人が、危険予測場面と一致したブレーキ操作ができなかったのは衝撃的です。実際の公道上でも、同じようなことが知らないうちに起こっているのでしょう。


日本は超高齢化社会に進んでいくので、高齢者ドライバーの扱いをどうするのかは大きな問題です。特に都市部以外では生活の足になっているので安易に制限をかけるのは難しいです。


この問題を解決する手段のひとつは自動運転技術なのかもしれません。交通外傷を多数扱う整形外科医としては、早く実現化して欲しいところです。

 




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