先日、高齢者の頚椎の単純X線像を撮影した際に、おやっ?と思う所見がありました。側面像でC2-5椎体前方にくちばし状になった巨大な骨棘があるのです。


骨棘自体はサイズが大きいだけで腫瘍性ではなさそうです。ただ、サイズが異常に大きいため、食道の軟部陰影がかなり前方に圧排されていました。


患者さんの症状は上肢の神経根症だったのですが、画像の異常さが際立っています。いわゆる、強直性脊椎骨増殖症(ankylosing skeletal hyperostosis)です。



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(Bhiken Naik et.al.Dysphagia, Obstructive Sleep Apnea, and Difficult Fiberoptic Intubation Secondary to Diffuse Idiopathic Skeletal Hyperostosis, Anesthesiology 5 2004, Vol.100, 1311-1312.)


そして、上の画像のように食道を圧排することで、嚥下障害をきたすこともあります。念ためこの患者さんに確認すると、確かによくむせるとおっしゃられていました。


ASHに嚥下障害を併発した状態は、フォレスター病と呼ばれています。嚥下障害の原因としては珍しいですが、巨大過ぎる頚椎前方の骨棘ではフォレスター病も念頭に置く必要があります。


経年的に増悪するので、嚥下障害をきたしている症例では頚椎前方の骨棘切除術が必要となります。ただし、高齢者が多いので、術後の呼吸不全に注意が必要です。


ちなみにASHは、骨に付着する全身の靭帯や腱の骨化を呈するびまん性特発性骨増殖症(DISH:diffuse idiopathic skeletal hyperostosis)の一部分症として認識されています。





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