先日、抗凝固薬と抗血小板薬の違いについて、一外科医先生から指摘を受けました。かなり認識が誤っていたのでまとめてみました。凝固の過程は、大別して下記の2つに分けられます。

  1. 血小板血栓が作られる過程
  2. フィブリン血栓が作られる過程


①が血小板によって緊急的に止血を行う過程で、②はフィブリンを生成することによって強固な血栓を形成する過程です。凝固の過程が2種類あるので、血栓を防止する薬も2種類あります。


血液が凝固する過程の中でも、①の血小板血栓の生成を予防する薬を抗血小板薬と呼び、②のフィブリン血栓が作られる過程を抑制する薬を抗凝固薬と呼びます。


血小板血栓とフィブリン血栓のどちらの疾患を予防したいかによって、抗血小板薬と抗凝固薬を使い分けます。



① 抗血小板薬

まず、血小板血栓は動脈のように血液の流れが早くなっている場所で活性化しやすいと考えられています。動脈硬化を併発すると、血管壁が傷つきやすくなります。


血管壁に傷がつくと、血小板が活性化して血小板性血栓が作られます。 この時に生成した血栓が脳血管を詰まらせると脳梗塞となり、冠動脈を詰まらせると心筋梗塞となります。


つまり、血小板性血栓を予防したい場合は抗血小板薬を使用します。 血小板血栓は動脈で形成しやすいため、動脈硬化が関与する血栓を予防するためには抗血小板薬を選択するのです。

  • バイアスピリン
  • プラビックス
  • プレタール


② 抗凝固薬

血小板血栓とは逆に、フィブリン血栓は血液の流れが遅い静脈で形成しやすいです。そのため、フィブリン血栓が作られる主な原因は、血液の流れが滞ってしまうことです。


例えば、心房細動は心臓がうまく拍動せずに細かく震えているだけの状態です。十分な心拍出量を確保できないために血液の流れが滞ってしまい、フィブリン血栓を形成してしまうのです。


心房細動によるフィブリン血栓併発や、手術や長い時間飛行機に乗っている状態などの長時間安静によるフィブリン血栓形成を予防したい場合は、抗凝固薬を選択します。

  • ワーファリン
  • イグザレルト
  • エリキュース
  • リクシアナ


血小板血栓は動脈に出来やすいので比較的小さく、フィブリン血栓は血流が悪い場所で形成するので巨大化します。そのため、フィブリン血栓が塞栓化すると致命的となる確率が高いです。




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