先日、外反膝の人工膝関節全置換術(TKA)がありました。FTA 160度ほどあり、外反膝のTKAとしては、ちょっと難しい可能性がある症例でした。


TKAのなかでも、外反膝は難易度の高い手術のひとつです。特に、FTA160°を越える外反膝症例では、術前に内反ストレスを掛けてどれくらい外側の緊張が強いか確認します。


内反ストレスをかけても矯正されないFixed-Valgus Deformityは、かなり難症例であることを覚悟しましょう。ある程度外反が矯正されるnon Fixed-Valgus Deformityなら、まだ芽があります。


実際に、外反膝症例に対してTKAを行う際の注意点は下記のごとくです。全体を通じてのポイントは、できるだけ骨切り量をセーブすることです。 

 

  1. 脛骨内側の剥離は骨切り量(2-3mm程度)にとどめる
  2. 大腿骨外反骨切り角は計測より1度程度少なくする



大腿骨のエントリーポイントは大腿骨外顆の低形成のため、内顆に掛かってしまうことが多いです。つまりエントリーポイントは、大腿骨顆部のwhite side lineより5mm内側となります。

 
大腿骨遠位骨切りが終了した時点で(大腿骨内顆は9mm骨切り)、下肢を牽引して大腿骨遠位骨切り面に10mmのスペーサーを当てて、脛骨骨切り量のおおよその指標とします。


内側がゆるいので脛骨骨切りは通常2-3mm程度となります。MCLがゆるんでいるため、内反膝のように9mm切除すると、高度の不安定性をきたして拘束型TKAを選択せざるえなくなります。


下肢を牽引して大腿骨遠位骨切り面に10mmのスペーサーを当てて脛骨骨切り量が5mmに近いようなら、まず大腿骨遠位の骨切りを最大4mm程度まで追加します。


それでもタイトなら脛骨を切除せざるえない場合もありますが、屈曲時に不安定性が出現することを覚悟しましょう。


外反膝では大腿骨外顆の低形成のため外旋角が強いですが、インプラントをやや前めに設置するかワンサイズアップしないと前方外側にノッチを形成することがあります。


また、通常のsurgical axisは、clinical axis-3°ですが、つけすぎると屈曲時に内側がゆるむので、やや控えめに留めておくほうが無難です。最後に、外側の緊張乖離は下記の手順です。


  1. iliotibial bandの切離、release (Gerdy結節で骨膜下に剥離、筋膜の連続性は残す) 
  2. LCLの切離、releaseを行う
  3. これでだめなら、popliteal tendonのreleaseや切離を行う



特に膝の屈曲拘縮がある症例では、腓骨神経の剥離を行う必要があります。 よくいわれるようにTKAは、soft tissue surgeryです。ゆめゆめ外反膝症例を甘く見ないようにしましょう。





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