最近、週刊ダイヤモンドで連載中の孫泰蔵氏のコラムを興味深く拝読しています。孫氏は、ソフトバンクの孫正義社長の実弟です。先週号は、「AIが雇用奪うとどうなるか」でした。






ここ数年、人工知能(AI)やロボットが人の仕事を奪うという議論が活発になっています。専門家の中には、7〜8割も雇用が奪われると言う人までいるほどです。


7〜8割の是非はともかく、AI・ロボット化 の進展による失業の増加と、都市部への人口流入が深刻な社会問題を招くと孫泰蔵氏は考えています。


英国では、18世紀半ばに産業革命が起こりました。その結果、近代資本主義経済が誕生して、社会構造が根本的に変化しました。


仕事を求める農村部の人々が都市部に集中しましたが、職にありつけない労働者が多く、街が荒廃していきました。経済学的に見れば「摩擦的失業」という状況だそうです。


「摩擦的失業」とは、社会の構造変化に伴い、ある産業で生じた失業者を他の産業がすぐに吸収できない一次的な状況を指します。


慣れた仕事から新しい仕事に適応するには時間がかかるのです。今から100年前に、車の普及によって馬車が不要となると、馬を世話する人々や馬具を作る人々が失業しました。


馬車産業はなくなり、その労働者は他の産業に移らざるを得なくなったのです。ただ、馬を扱っていた人々が自動車産業に転換できたかというと、それはかなり難しかったです。


孫氏は、AI・ロボット化の進展によって、この摩擦的失業が起きると考えています。社会が本質的に、根本から変わるからです。


これまでと違うのは、その対象者です。肉体労働を主とするブルーカラーよりも、知的生産を得意とするホワイトカラーの職種がAIによって代替されるでしょう。


弁護士や医師といった職業も今後はそうはいかなくなると予想しています。大量の判例に基づく判断や画像診断、外科手術の一部はAIやロボットの方が得意な場合もあるからです。


問題は、摩擦的失業が学問的に「一次的」といっても、現実の社会ではこれが年単位で続いていくということです。


では、一体どうなるのでしょうか。孫氏は次のように予想しています。まず、各地で失業者が生まれ、職を求めて都市部に人がなだれ込むようになります。


しかし、都会でも簡単には職に就けず、街にスラムが形成されるようになり治安は悪化します。都市化の問題は米有名経営学誌などが指摘しています。


しかし、想像を超える勢いでAIが進化しており、問題は米有名経営学誌の指摘より深刻です。今後、各国の政府はAIによる 失業問題に対処することになるでしょう。


以上のように、孫氏はマクロの社会構造の激変を予想していますが、私は医師に限局して予想してみました。


AIやロボットによって画像診断や外科手術の領域から駆逐された医師は、その他の安全地帯に流入します。しかし医療費のパイは限られているため、医師一人当たりの収入は減少します。


その対策の一つとしてワークシェアリング的な働き方改革がなされるかもしれません。しかし、AIによる失業の影響を抑えるだけなので、家計の収入が激減します。


AI時代における大きな問題は、家計の収入減にあるのです。 現在のままAI時代に突入して収入が激減すれば、 支出が収入を上回ることになります。


すると、食費や教育費を節約して支出を削減しなければなりませんが、これではQOLが保てません。 そこで、可処分所得を維持するだけの支出削減を劇的に行う必要があります。


もちろん、普通の方法では難しいでしょう。「住居費用」「自動車費」「保険料」「通信費」などの固定費のコストを劇的に下げるしかありません。


これからはマイホームや自動車を持たず、安価な定期保険のみにするなど、生活防衛を行う必要があるかもしれません。豊饒な今から考えても、早過ぎることはないと思います。






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