2017年8月3日号のMedical Tribuneで興味深い記事がありました。9因子の制御で認知症の35%は予防可能 です。




Lancet認知症予防・介入・ケア委員会は「生涯を通じて9つのリスク因子をコントロールし、脳の健康状態を改善できれば、認知症の35%は予防できる可能性がある」とする専門家24人の見解をまとめた認知症に関する包括的レビューを、アルツハイマー協会国際会議2017(英・ロンドン)で発表した。同レビューはLancet(2017年7月20日オンライン版)で同時公開された。




修正可能な9つのリスク因子を検討


 最新の推計によると、全世界の2015年の認知症患者数は約4,700万人で、低・中所得国における急激な増加を背景に2050年には約3倍に達するとみられている。認知症に伴う総コストは年間8,180億ドル(2015年)で、医療以外の介護に当たる家族や社会の負担となるコストが約85%を占めることから、社会を挙げての対策が喫緊の課題である。筆頭著者で英・University College Londonの Gill Livingston氏は「今すぐ行動を起こし、認知症患者とその家族における生活の改善を図る必要がある」と指摘している。


 認知症を発症するのは主に65歳超の高年期であるが、脳の変化はその数年前から始まっていることが多い。そこで、小児期(18歳未満)や中年期(45〜65歳)のリスク因子にも目を向けて認知症予防に取り組む必要がある。


 同氏らは小児期、中年期、高年期における9つの"修正可能な"リスク因子として、小児期では①教育期間の短さ(15歳超での教育が継続されず小学校が最終学歴)、中年期では②高血圧③肥満④難聴、高年期では⑤喫煙⑥抑うつ⑦運動不足⑧社会的孤立⑨糖尿病を挙げ、各リスク因子の認知症発症への影響をモデル化し、完全に排除できた場合に認知症症例全体の何パーセントの予防につながるかを推算した(下図)。



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 各リスク因子については、小児期に15歳超での教育継続がなければ、認知の予備力が低下し、認知症リスク上昇につながると考えられている。


 難聴と認知症との関連についての研究は始まったばかりだが、複数のコホート研究から、軽度難聴でも長期的な認知機能低下リスクにつながることが示されている。また、修正可能リスクとして取り上げられているものの、補聴器の有用性など未解明の問題は数多く残されている。




認知症予防効果をweighted PAFで定量化


 Livingston氏らは、各リスク因子への曝露率、同曝露に起因する発症の相対リスクを基に人口寄与割合(PAF)を算出。共通性による補正を通じて各リスク因子のPAF全体への相対的寄与度をweighted PAFとして求め、これを各リスク因子が完全に排除された場合に予防可能な疾患の割合と定義した。


 その結果、これら9つのリスク因子全てを完全に排除できれば、認知症の35%を予防できる可能性が示された。


 認知症の主要な遺伝学的リスク因子としてアポリポ蛋白(apo)Eのε4アレルがあるが、apoE ε4を標的とする方法が確立されても、それにより予防可能な割合は認知症全体の約7%とみられており、上記リスク因子の修正の重要性がうかがえる。


 リスク因子への介入が全ての認知症の発症遅延・予防につながるわけではないが、介入の効果を最大化するには社会の中にうまく取り入れて安全かつ効率的な介入を図る必要がある。


 同レビュー執筆者の1人米・University of Southern CaliforniaのLon Schneider氏は「認知症発症予防を目的としたリスク因子への介入と並んで重要なのが、発症後の患者を受け入れ、その家族や介護者の支援する社会をつくり上げることだ」とコメントしている。認知症患者を受け入れ守ること、介護者の抑うつリスク低減に向けた効果的な介入を検討することも同レビューが掲げる主要メッセージの一部である。


 なお同レビューの限界として、Livingston氏らは、食事や飲酒の影響を考慮していないこと、一部の推定値についてはデータ不足によりグローバルなデータに基づいていないこと、一部のリスク因子は人生の他の時期でも影響力を持つと考えられることなどを挙げ、今後の研究課題としている。 






Lancetからの興味深い報告です。特に図表が秀逸ですね。このfigureをみると、認知症のリスクファクターと影響の大きさが一目同然です。


小児期の教育期間の短さは、個人の努力では如何ともしがたいです。生まれ育った家庭の経済力に依るところが大きいので、この部分に関しては国の出番だと思います。


中年期の高血圧と肥満は、生活習慣が影響を及ぼします。この部分は意識的に修復可能です。難聴も治療や補聴器によって改善できそうです。


高年期の喫煙や運動不足は努力で克服できます。このように考えると、合計で20%ほど認知症の発症することを軽減できそうです。


今回の報告を拝読して驚いたのは、同じリスクファクターといっても、因子によって割合が全く異なることです。特に難聴の悪影響の大きさは特筆するべきだと思います。


耳鼻科医師にとっては当然のことなのかもしれませんが、私たち整形外科医も、このことについては認識を新たにする必要がありそうです。





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