一般社団法人 日本医療安全調査機構による、急性肺血栓塞栓症に係る死亡事例の分析を拝読しました。今回の提言では、下記の6つのが記載されています。




【リスクの把握と疾患の認識】     

提言1

入院患者の急性肺血栓塞栓症の発症リスクを把握し、急性肺血栓塞栓症 は “ 急激に発症し、生命を左右する疾患で、特異的な早期症状に乏しく 早期診断が難しい疾患 ” であることを常に認識する。


【予防】 

提言2≪患者参加による予防≫
医療従事者と患者はリスクを共有する。患者が主体的に予防法を実施で きるように、また急性肺血栓塞栓症、深部静脈血栓症を疑う症状が出現 したときには医療従事者へ伝えるように、指導する。     

提言3≪深部静脈血栓症の把握≫
急性肺血栓塞栓症の塞栓源の多くは下肢、骨盤内静脈の血栓である。 深部静脈血栓症の臨床症状が疑われた場合、下肢静脈エコーなどを実施 し、血栓を確認する。

【早期発見・早期診断】
提言4
明らかな原因が不明の呼吸困難、胸痛、頻脈、頻呼吸、血圧低下などを 認めた場合、急性肺血栓塞栓症の可能性を疑い、造影 CT などの実施を 検討し早期診断につなげる。

【初期治療】
提言5
急性肺血栓塞栓症が強く疑われる状況、あるいは診断が確定した場合、 直ちに抗凝固療法(ヘパリン単回静脈内投与)を検討する。

【院内体制の整備】
提言6
急性肺血栓塞栓症のリスク評価、予防、診断、治療に関して、医療安全 の一環として院内で相談できる組織(担当チーム・担当者)を整備する。 必要があれば院外への相談や転院などができるような連携体制を構築する。
  





この中でも特に、提言4と提言5が目を引きました。


まず提言4ですが、急性肺血栓塞栓症発症の数日前に一時的な血圧低下、SpO2 低下、呼吸困難、胸痛、 胸部不快を認めた例や、数日前から頻脈が続いた例が報告されています。


数日前から前駆症状が出現する可能性があるので、術後は手術患者さんの慎重な観察が必要となります。


また、急性肺血栓塞栓症が疑われた場合、造影 CT施行が第一選択です。造影 CT が施行できない場合は心エコーですが、やはり造影 CTのような客観的な証拠が必要なのでしょう。


次に提言5ですが、急変後の救命処置開始より 1 時間~ 2 時間 30 分以内に死に至り、急変から死亡までの時間が短い傾向にあります。


このため急性肺血栓塞栓症が強く疑う際は、初期治療として出血リスクを評価し、直ちにヘパリン 3,000 ~ 5,000 単位(または体重 1 kg あたり 80 単位)を単回静脈内投与します。


ヘパリンは半減期が 1 時間前後と短く、減量・中止することにより 効果の消失が早く、さらに、中和薬(プロタミン)が存在するため出血した際にも 対処することが可能です。


私たちのような整形外科医にとって、ヘパリンをいきなり静注する行為は少し腰が引けます。しかし早期から迅速な治療が必要なので、ヘパリン静注は重要だと思います。



このように急性肺血栓塞栓症が強く疑う場合には、造影CT+ヘパリン3,000 ~ 5,000 単位静注をセットとして考えておくべきでしょう。






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