先日の外来で3週間前から右肩を挙上できなくなったという40歳台男性が初診されました。 特に外傷の既往はないのですが、右手が挙がらないようです。
診察すると、右肩の屈曲・外転のみMMT 2程度です。肘関節屈曲以下の運動麻痺や知覚障害は一切認めませんでした。また、下肢痙性も認めません。痛みやしびれも無いようです。
単純X線像では、C5/6で椎間板腔の狭小化を認めます。しかし、Spurling test や Jackson test は陰性です。消去法的にkeegan型頚椎症性筋委縮症と診断しました。
しかし、筋電図検査や頚椎MRIをまだ施行していないので、現時点ではkeegan型頚椎症性筋委縮症は確定診断ではありません。
私は、このような患者さんを何名か診察したことがありますが、いずれも1~2ヶ月で自然治癒しました。自然治癒したこと自体が、偶然だったのか否かは不明です。
2012年の日本整形外科学会学術総会で、山口大学の田口教授が、keegan型頚椎症性筋委縮症の治療について講演されていました。
さしあたって、メチコバールを処方しつつ、頚椎MRIや筋電図検査等を施行する予定です。それで何もなければ神経内科に相談ですね!
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地方で脊椎外科医をしている者です。
Keegan疑いの症例で少し気になった点がありメールさせていただきました。
Keeganでは肩の屈曲外転に加え、肘屈曲と回外筋力が低下することがKeyと考えております。(C5-6に限局した筋力低下をきたすのがKeeganの所見です。橈骨神経支配かつC5-6支配の回外筋筋力評価は有用と思われます)
先生の症例は肩に限局する筋力低下のみでしたら、肩にガングリオンなどないか(腋窩神経麻痺や肩甲上神経麻痺)評価も追加されてみてはいかがでしょうか。