「弘法筆を選ばずと言いますが、医師には該当しないと思います。医師は常に最高のパフォーマンスが求められるため、可能な限りベストな状態を維持する必要があるからです。


整形外科においては、インプラントを使用する手術において、手術器具の良し悪しが手術成績を大きく左右することがあります。


先日、骨粗鬆症のキツイ高齢者の大腿骨頚部骨折に対して人工骨頭置換術を施行したのですが、その際にもこのことを強く感じました。


私は MicroPort社の Profemur® Xmを使用しています。Profemur® Xmの特徴は、単に polish taper cemented stem というだけではなくてChangeable Neck であることです。


周知のようにセメントステムは一発勝負的なところがあり、特に大腿骨頚部前捻角を失敗すると取り返しがつかないことになってしまいます。


もちろん人工骨頭置換術なので、大腿骨頚部前捻角が
多少狂っても大きな問題になることはないですが、それでも一発勝負であるというプレッシャーは嫌なものです。


このプレッシャーを緩和してくれるのがChangeable Neck です。 前後捩のバリュエーションが15°もあるため、前捻角を相当失敗しても余裕で挽回できることが特徴です。


インプラントとしては、かゆいところに手が届くステムのですが、このインプラント最大の欠点はラスプにあります。


日本人のサイズバリエーションからすると比較的小さなサイズのステムになりますが、小さなサイズのステムでは、事実上ラスプがワンサイズしかありません。


しかもこのラスプの形状は非常にバルキーで骨を削るのに適しているとは言えず、細心の注意を払ってラスピングしないと粗鬆骨では容易に骨折を併発してしまいます。


あまりにもラスプがプアなので、このインプラントに慣れていない術者が手術をすると術中骨折を併発する可能性が高く、決してお勧めできるものではありません。


医師に関しては「弘法筆を選ば」ずではなく、「弘法筆を選ぶ」べきだと考えています。インプラントメーカーからも、ベストな状態で治療に臨むための助力が欲しいところです。






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