先日、20歳ぐらいの男性が初回の膝蓋骨脱臼で初診しました。立ち上がろうとして踏ん張った際に脱臼してしまったようです。


膝蓋骨内側に腫脹・圧痛を認めましたが、来院時には自然整復されていました。それでもかなり痛そうです。単純X線像を確認すると、大腿骨膝蓋骨溝の低形成が著明でした。


joint laxity はまったく無くむしろ身体は固そうです。このため、大腿骨顆部(
大腿骨膝蓋骨溝)の低形成が膝蓋骨脱臼の原因と考えました。


画像的には習慣性脱臼に移行しやすそうな印象です。 初回の膝蓋骨脱臼に対する治療では、まず膝関節伸展位で2~3週間固定する保存治療を選択することが多いです。



膝関節を伸展位で固定する理由は、Q angle(通常20度未満で平均14度ぐらい)の影響で、膝関節を屈曲するにつれて膝関節外方への合力がかかるからです。


膝関節の屈曲角度が大きくなるほど、膝蓋骨が脱臼する方向(膝関節の外側)への力が加わります。 このため、膝関節の固定角度は伸展位が推奨されます。


また、膝蓋骨脱臼のために損傷した内側関節包や内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)の修復を促す意味でも、膝関節外側への力があまりかからない膝関節伸展位での初期固定が有効です。


膝蓋骨の安定性は、TKAの最後のトライアルでパテラのトラッキングを観察すると、膝関節伸展位で安定して膝関節屈曲位にするほど易脱臼傾向が出現する様子でよく分かります。








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