自治医科大学さいたま医療センター・消化器外科の市田先生が、消化器外科手術後の手術部位感染(SSI)で抗菌縫合糸による低減効果はほとんど認めなかった報告されました。



手術の閉創の際に、抗菌縫合糸を使用する施設が多いと思います。縫合糸に抗菌薬をコーティングしておくと、いかにも SSI が低減されそうなイメージを抱きます。


しかし今回の報告では、少なくとも消化器外科領域では、抗菌縫合糸に SSI 低減効果をほとんど認めなかったとのことです。


この研究では、抗菌縫合糸についてさまざまな検討を行いましたが、どのように解析しても SSI 発生率に有意差はなかったそうです.


このことから、縫合糸に抗菌剤をコーティングしているか否かは SSI とは無関係だということになります。これは整形外科医にとっても結構ショッキングな結果です。


もし本当にそうであれば、コストのかかる抗菌縫合糸は不要ではないかという結論になります。う~ん、なかなか難しい問題ですね。


ただ、実際に患者さんを目の前にしている場末医師としては、できるだけ患者さんおよび自分を安全な場所に立たすために、出来る限りのことをしたいという気持ちが強いです。


このため、自分の腹が痛まないのであれば、出来る限り感染しないように抗菌縫合糸を使用し続けるかもしれません。


もちろん、本当に抗菌縫合糸が単なるお守りのような存在であるのであれば、その使用に関しては慎重に検討するべきなのかもしれませんが・・・





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