先日の大腿骨転子部骨折で冷や汗をかきました...。なんてことのない症例だと思っていたのですが完全に落とし穴にはまってしまったのです。


この患者さんは他院からの転院症例でした。転院翌日の手術だったので画像資料は前医のものを使用しました。今にして思えば、コレが事の始まりでした。


他院の画像は拡大率が自院のものと比べて大きかったのです。拡大率が 120%だったのですが、このことに術中まで気付きませんでした。


拡大率120%なので、必然的に大腿骨は大きめです。このため、本来よりも大きいネイルを選択してしまいました(といってもサイズ10mmです)。


小転子下まで骨折線があったので、できるだけネイル長を稼ぐため頚体角を130度にしました。コレが第二の判断ミスです。


本来なら 9mm×125度を選択するべきところを、10mm×130度を選択したため、見事なまでに jammingしてしまいました。


14mmまでリーミングしましたが、大腿骨にbowingがあるためネイルがなかなか至適位置まで挿入できません。大汗をかきながら、やっとの思いでlag screwまで挿入しました。


やれやれ、やっと遠位スクリューだとドリリングしたところ、ネイルに干渉してしまうではないですか...。透視で確認すると、明らかにドリルの方向がおかしいです。


このデバイスは不良品だ! という訳はなく、どうやら jammingしているネイルを無理やり挿入したため、ネイルがわずかに変形してしまったようです。


3.0 K-wireで対側皮質をドリリングできましたが、どうしても4.5mmではドリリングできません。この状態で遠位スクリューを挿入すると大腿骨骨折を併発するリスクがあります。


思い悩んだ末、フリーハンドでドリリングすることにしました。2Dのフリーハンドなので、なかなかスリリングでした...。


最終的には何とか事無きを得て手術を終了しましたが、薄氷を踏む思いの手術でした。まさか大腿骨転子部骨折でここまで苦戦するとは思いもしませんでした。


今回の教訓は、時間の無い転院症例であっても可能なかぎり慣れ親しんだステップを踏んで「いつもの」状態で手術を行うべきだというこでした。







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