先日、上肢のいわゆる Floating Elbow の手術がありました。具体的には上腕骨骨幹部骨折+橈骨遠位端粉砕骨折です。


下肢の Floating Knee の経験は何度かありますが、上肢の Floating Elbow の手術は初めてです。Floating Elbow は、Floating Knee とは違った難しさがあったのでご報告します。


最も困ったのは橈骨遠位端骨折の方です。最初に上腕骨の髄内釘を施行したのですが、次の橈骨遠位端骨折でターニケットを使用するか否かで悩みました。


橈骨遠位端骨折といっても通常とは異なり、かなり中枢側まで骨折が及んでいました。このため、掌側のロングプレートを選択せざるを得ません。


初めて使用する長いプレートなので、できればターニケット下に手術をしたいところです。しかし、骨折時の腫脹+手術時の侵襲のために、上腕はパンパンに腫れています。


そんな状態の悪い上腕にターニケットを巻いて駆血すると、何か非常に悪いことが起こりそうな気がします...。


当初、肘関節部や前腕にターニケットを巻くことを検討しましたが、神経損傷の可能性やプレートの長さを考えると現実的ではありません。


思い切ってターニケット無しで掌側プレートを当てることにしました。実はターニケット無しで手術を施行したことは何度かあります。いずれも透析症例で鬱血帯になった症例です。


これらの症例ではもともと循環状態が悪いため、さほど術中も出血しません。しかし、今回は健常人なので、実際に展開すると術野は血の海になりました...。


通常、橈骨遠位端骨折は1時間以内に終了しますが、この日はナント1時間30分を超える長い手術になってしまいました。


上肢手術にもかかわらずボスミン生食を使用し、更にはトランサミン静注まで考えたほどです。出血し過ぎて解剖の確認に手間取ってしまい結構大変な思いをしました。


お約束のようにプレートを当てて整復固定すると出血は止まりましたが、Floating Elbow は侮れないという印象でした。





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