先日、人工股関節全置換術(THA)の術中に思わぬところから出血がありました。大腿骨頚部骨切りをしようとしてレトラクターを大腿骨頭下に挿入した際に出血が始まりました。
骨切り後なら分かりますが、骨切り前になぜ出血が??? しかし、噴水のように血が湧き出てくるので、すぐに対応しなければいけません。
このような予期しない術中出血対策として、出血した際の対応法を整理しようと思いました。ここでは整形外科の中でも関節外科や骨折手術を念頭に考えてみました。
まず最も重要なのは出血点の確認です。しかし、創深部で出血すると出血点を同定することさえままなりません。このような時には下記の方法が考えられます。
- 指先もしくはガーゼ鑷子先圧迫止血
- ボスミン生食ガーゼを挿入して圧迫止血
- ボスミン生食を局注
- インテグランやアビテンシートを使用
- 骨からの出血ならボーンワックスを使用
- トランサミン 1000mg 静注
ざっと思いつく限りではこんなところでしょうか? やはり最も効果的なのは圧迫止血だと思います。出血点を押さえるのは気持ち悪いですが、当座の止血には効果を発揮します。
圧迫止血しながら、体勢を立て直して本丸の止血に臨むことがベストでしょう。しかし、どうしても深部の出血点をピンポイントで止血できないこともあります。
このような場合には、②ボスミン生食ガーゼを挿入して圧迫止血という手段も多用します。③⑥はさほど即効性がなく、④は高価なので余程の時以外には使用機会はありません。
予期せぬ術中の大出血に遭遇すると焦りますが、上記のような引き出しを持っていると何とか対応できるのではないかと思っています。
★★★ 管理人 お勧めの医学書 ★★★
初学者がTHAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です