整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

感染

手洗い水は水道水が吉!

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手術部位感染(SSI)に関連して、手術室で使用する手洗い水をどうするかという議論があります。昔は滅菌水がメジャーでしたが、最近では水道水使用派が台頭しています。


平成17年に医療法施行規則が改正され、「滅菌手洗い」が「清潔な手洗い」という文言に改められました。この改正で、手洗いにおける水道水の使用が認められるようになりました。


手洗いに使用する水は、外国では水道水を用いるのが一般的です。しかし、我が国では医療法施行規則で滅菌水使用が明記されていたため、滅菌水を使用せざるを得ませんでした。


では、実際にどちらの方がより安全なのでしょうか? 私の感覚では、水道水は塩素を含んでいるため、滅菌水よりも微生物汚染を回避できる可能性が高いです。


私の家には井戸があり、トイレや庭の散水は井戸水を使用しています。昔ながらのポンプ式井戸で、塩素を付加する装置は付けていません。


そして、夏場になると井戸水が結構臭うんです。。。当初は洗濯も井戸水を使用していましたが、あまりに臭うため水道水に変更しました。


この点、微量の塩素が含まれる水道水は、ほとんど臭うことがありません。ほぼ同じ部位に配管があるのですが、その圧倒的な清潔度の違いに、塩素の偉大さを感じました。


この経験から、手術室の手洗い水も、滅菌水よりも水道水の方が望ましいと感じるようになりました。たしかに滅菌した瞬間は清潔でしょうが、配管が清潔か否かは怪しいものです。


まだまだ滅菌水使用の施設が多いと思います。「滅菌水」というネーミングにだまされることなく、きちんとした設備管理の実施が重要だと思いました。





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SSI予防における手術室設備と環境

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日整会誌92: 5-9 2018に興味深いシンポジウムの論文がありました。SSI予防における手術室等の設備、環境に関するエビデンス です。要旨を下記に記載します。



この論文では、国際コンセンサスと新JOAガイドラインの2つのガイドラインを中心に、手術部位感染(surgical site infection, SSI) 予防のトレンドについて概説されています。




術野毒薬について

整形外科の清潔手術における術前皮膚消毒は、グルコン酸クロルヘキシジンとポピドンヨードのどちらでもよいが、使用する際はアルコールを併用した方がよい




粘着ドレープについて

消毒後、時間依存性に残存菌は再増殖する。ポビドンヨード含有ドレープではSSIのリスクが減少する可能性があるが、非含有ドレープではリスクが減少するエピデンスはない。




手術室換気能について

バイオクリーンルー ムの有用性に関しては、世界的に認識が変容している。国際コンセンサスでは、手術室への人の出入りは最小限にとどめることを推奨している。


国際コンセンサスでは、「バイオクリーンルームの 有用性は不明であり、人工関節置換術は必ずしもバイオクリーンルームで行う必要はない」とし、宇宙服も同様とまとめている。




手術室入室時の履物の変更について

手術室内で外履き用一般シューズを利用することはSSI リスクである可能性が残ると考えられるが、質の高いエビデンスがあるわけではない。




抗菌縫合糸について

術野汚染は手術の後半ほど多く、特に閉創時に術野汚染率が高くなる。そのため術野汚染リスクの高い閉創時に抗菌活性のある縫合糸を用いることは、理にかなった対策と言える。




除菌について

Perlらは、黄色ブドウ球菌による SSI の約 85% (33/39 例)が 術前鼻腔から同定された菌と一致したと報告した。黄色ブドウ球菌の保菌部位は、健常者では鼻腔が27%と最も高い。


そのため、鼻腔保菌着に対して鼻腔だけでなく全身の除菌も同時に行うことで深部SSIが予 防できたとする報告がある。


国際コンセンサスでは、術前の皮膚除菌は「有用である。術前に皮膚をグルコン酸クロルヘキシジンで除菌するべきである」としている。


また、鼻腔除菌については「黄色ブドウ球菌(MSSAおよび MRSA)についての術前スクリーニングと検出例に対する除菌は、SSI 発生割合を減少させると認識している」としている。


「鼻腔内へのムピロシン短期投与が、MRSAおよびMSSA除菌の方法として、現在最も広く受け入れられている」とまとめています。

      




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円刃で皮下の展開は感染の原因?

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先日、術中に気付きを得ました。
アルバイト先の病院で、手術の前立を務めた時の出来事です。


人工骨頭置換術で、術者はそこそこ年配の先生でした。私たちの世代は電気メスで皮下を展開する医師が多いですが、昭和年代卒の先生の中には円刃で展開する方もいらっしゃいます。


電気メスと円刃では、見た目の展開の光景が少し異なります。どちらかというと円刃の方が、かっこいいイメージです。


感心して見ていた時、ふと円刃で皮下を展開するのはあまり良くないのでは? と思い当たりました。何故なら、皮下の展開で使用している円刃は、皮膚切開で用いていたからです。


皮膚の表面には細菌叢があります。もちろん、術前に消毒しますが、100%完全に除菌することは不可能です。そんなやや「汚い」皮膚を切開した円刃で、皮下を切開すると・・・


特に、人工関節系の手術では、ちょっと気持ち悪いなと思うのは私だけでしょうか? おそらくエビデンスは無い話だと思います。


しかし、可能性としてはゼロではありません。組織へのダメージを考えると電気メスよりも円刃の方が望ましいです。しかし、皮膚切開した円刃をそのまま使うのは微妙ですね。


解決策としては、皮膚切開と皮下の展開で使用する円刃を分けることです。これなら、問題無いですが、残念ながらそこまで気を使っている方を見たことはまだありません。




2018.1.6 追記

たくさんのコメントをいただきました。皮膚切開を加えて円刃はやはり感染源になるようで、成書にも記載されているようです。また、JBJSも教えていただきました。


  • 人工関節周囲感染対策における国際コンセンサス(https://cbr-pub.com/book/043.html)
  • Intraoperative bacterial contamination in operations for joint replacement.J Bone Joint Surg Br. 1999 Sep;81(5):886-9. http://bjj.boneandjoint.org.uk/content/81-B/5/886.long
  • Should we use a separate knife for the skin? J Bone Joint Surg Br. 2006 Mar;88(3):382-5. http://bjj.boneandjoint.org.uk/content/88-B/3/382.long


皮切に用いた円刃は一回下に落として、追加皮切では新しい円刃を出す先生もいらっしゃるようです。目から鱗のことばかりで勉強になりました。ありがとうございました!







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感染THAに関するJBJS Amの論文

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相互リンクいただいている整形外科 論文ナナメ読みで興味深い記事がありました。JBJS Amの感染性人工関節に関する論文の解説です。


この論文は「感染性人工関節に対して、いきなり抜去しなくても洗浄とデブリでも結構いいのかもしれない」という趣旨です。


本当かな~?と思って読み進めると、がみたけ先生が上手に意訳してくれています。

  • 感染人工股関節90例中65例(83%)で、掻破洗浄術のみで鎮静化した
  • 70%の症例でヘッドとライナーを交換したが、30%の症例で交換しなかった。
  • 84%の症例で抗生剤を長期投与した(経静脈的投与5.5週間、その後経口抗生剤処方)
  • 77%の患者で慢性感染の状態で推移した
  • 歴史的に、掻破洗浄術のみで鎮静化する確率は60%未満
  • 全身状態の良い症例の方が予後良好



う~ん、とりあえず再置換術を回避することにフォーカスした治療方針のようです。感染が持続している症例が多く、良いのか悪いのかよく分からない結果です。


更に、がみたけ先生が大腿骨頚部骨折の患者と待機的にTHAを受ける患者を同じように取り扱っていることに対して問題提起しています。たしかに患者層が全く別物ですね。。。


THAの感染に興味のある方は、がみたけ先生のブログを訪問して、詳細を確認することをお勧めします。もちろん、原著にあたることがベストですが(笑)。





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感染手術のわたし的なコツ

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人工関節全置換術後の感染は、主治医にとっても非常にナーバスな出来事です。一度遭遇すると、関節外科医を辞めたくなることさえあります。


そんな、患者にとっても主治医にとっても不幸な術後感染ですが、診断が確定した時点で迅速に対応することが治療の成否を分けます。


発症から1日程度しか経過していない症例では、とにかく関節内清掃を最優先にします。これぐらいの時期の患者さんの場合、うまくいけばインプラント温存も可能だからです。


このような緊急手術の場合、インプラント抜去セットを準備する余裕がないので、関節内を徹底的に掻爬洗浄することに主眼を置きます。この際、私は下記に留意して手術を施行します。


  1.  最も感染性肉芽組織の発達している部位から攻める
  2.  可能なかぎり軟部組織を温存する
  3.  電気メスは極力使用しない


①は、いわゆる「ハートランド作戦」です。敵の集中している部位を最初に叩くことで、手術のリズムに弾みを付けます。まずは最も作業効率の良い部位から片付けましょう。


②に関しては、軟部組織を丸ごと切除すると感染に対する局所組織の抵抗力を削いでしまいます。特に骨膜ごと切除すると、腐骨化する原因となるので厳に慎むべきでしょう。


③に関しては、特に発症早期の症例では感染性肉芽組織も、それほど深部にまで発達していません。私は表面の感染性肉芽組織を鋭匙で掻爬して、その後にガーゼでこすり取ります。


特にガーゼでこすり取る手法は、深部の健常な組織を傷つけることなく感染性肉芽組織のみ迅速に切除できるので有効な手法だと考えています。


指先でガーゼ越しに感染性肉芽組織をゴシゴシこすると、あっという間に広範囲の感染性肉芽組織を切除することが可能です。


電気メスを使用すると不用意に健常組織にまで切り込んでしまい、感染に対するバリヤーを破壊してしまいがちです。更に焼却痕のため、正常と感染の区別が難しくなります。


膝関節なら鋭匙+ガーゼ+洗浄を繰り返すことで、10~20分程度で関節内清掃が完了します(膝窩部を除く)。


とにかく感染の手術はストレスフルですが、嫌な手術だからこそ迅速に、そしてシステマティックに施行する技術を磨いておくべきだと思います。







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