整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

THA

THA: カップ挿入不能例の対応法

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人工股関節全置換術(THA)では、軟部組織温存とインプラント設置の容易さはトレードオフの関係です。


軟部組織を温存しようとすると、必然的に術中操作を含めたインプラント設置が難しくなります。自分の技量範囲内で可能なかぎり軟部組織を温存するという戦略がベストでしょう。


さて、軟部組織を温存し過ぎると、寛骨臼内にカップを挿入することさえ難しくなります。しかし、せっかく軟部組織を温存してきたのに、この段階で切離するのは虚しい・・・


このような場合にはカップホルダーからカップを外して、カップのみを寛骨臼内に挿入してみることをお勧めします。


これでも厳しいことが多いですが、カップを自由自在に動かせるので、通常は何とか寛骨臼内に押し込むことが可能です。


そして首尾よく寛骨臼内にカップを挿入できれば、下記手法によってカップにカップホルダーを装着します。


  1. カップを用手的に寛骨臼内に挿入不能であれば、ボーン・インパクター等で叩打する
  2. エレバトリウムを内方からカップのスクリューホールに入れて、カップ縁を支点にして梃子の原理でカップをカップホルダーを装着しやすい角度に調整する


少々手間ですが、こうすることで軟部組織を温存した状態でカップを設置することが可能となります。もちろん、難しければ軟部組織を切離する勇気も大事だと思います。






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CDCガイドライン2017

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先日、日整会広報室ニュースを読んでいると、CDCガイドライン2017という記事がありました。国際医療福祉大学医学部整形外科主任教授の石井賢教授が執筆されています。


感染症対策では1999年のCenters for Disease Control and Prevention(CDC)ガイドラインが使用されてきましたが、2017年に18年ぶりに改訂されました。


本ガイドラインでは1998~2014年に発表された5759論文からエビデンスの高い170論文を抽出して構成されています。下記の2つのセクションで、項目別に記載されています。


  1. 外科手術全般のSSI予防のコアセクション
  2. 整形外科領域に特化した人工関節置換術セクション




以下に、気付いた点を抜粋します。


予防抗菌薬
  • 加刃時の血清と組織の抗菌薬が殺菌濃度に達するように投与する
  • 閉創後はドレーン留置の有無に関わらず抗菌薬投与を施行しない
  • 創部への抗菌薬投与の意味は少ない
  • トリクロサンコート縫合糸(バイクリルプラス等)使用を推奨

血糖コントロール
  • 糖尿病の有無に関わらず、周術期では血糖値<200mg/dlを維持する

体温
  • 周術期は正常体温を維持する

酸素化
  • 正常の肺機能患者では、術中と抜管後はFiO2吸入酸素濃度を増加させる

皮膚洗浄・消毒
  • 術前日に石鹸あるいは消毒液を用いた全身シャワーや全身浴を実施する
  • 術中の皮膚消毒にはアルコールベースの消毒液を使用する(禁忌を除く)
  • プラスティックドレープの感染予防効果は少ない

免疫抑制剤による全身治療
  • コルチコステロイドや免疫抑制剤の全身投与されている人工関節全置換術の患者であってもドレーン留置の有無に関わらず、閉創後は抗菌薬投与を施行しない
  • 術前の関節内コルチコステロイド注射の使用とタイミングの有用性と有害性は不明
  • 人工関節全置換術における整形外科サージカルスペーススーツの有用性と有害性は不明
  • 人工関節全置換術セメント利用の有用性と有害性は不明



だいたい既に実践していることが多いですが、術翌日の抗生剤投与を止めることは、勇気が無くて実行できそうにありません。


あと、サージカルスペーススーツやプラスティックドレープは惰性で(?)使用していますが、感染予防効果のエビデンスは無いとのことです。本当かな???








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THA: 設置角度>>アプローチ

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12月は年の瀬にも関わらず、人工関節手術が多かったです。
同じような手術なのでマンネリ化しがちですが、気を引き締めて頑張りたいと思います。


さて、先日同門の医師とTHAの話をしていた際に、その先生はALSA(AL Supine Approach: 仰臥位前側方アプローチ)を採用しているとおっしゃられていました。


個人的には、ALSAはDAAよりも優れた前方アプローチだと感じています。脊椎外科ほどではないものの、股関節の世界でもそれなりに術式の進歩しています。


しかし、長年この手の手術ばかりしていると、アプローチの違いは些細なことであると感じるようになってきました。確かに各アプローチ間で、僅かですが優劣が実証されています。


そうは言っても本当に僅かな差にしかすぎないため、執刀医の技量の差やインプラントの選択の方が、圧倒的に長期成績に大きな影響を及ぼします。


そして、執刀医の技量の差とは、いかに至適な位置に至適な角度でインプラントを設置するかに尽きます。


この前提条件をないがしろにして、各アプローチ間の優劣を比較するのはナンセンスではないのか? と感じています。


この手のことをあまり大きな声でいうと、大御所の先生方からバッシングを受けるので、普段はあまり主張することはありませんが(笑)。




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感染THAに関するJBJS Amの論文

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相互リンクいただいている整形外科 論文ナナメ読みで興味深い記事がありました。JBJS Amの感染性人工関節に関する論文の解説です。


この論文は「感染性人工関節に対して、いきなり抜去しなくても洗浄とデブリでも結構いいのかもしれない」という趣旨です。


本当かな~?と思って読み進めると、がみたけ先生が上手に意訳してくれています。

  • 感染人工股関節90例中65例(83%)で、掻破洗浄術のみで鎮静化した
  • 70%の症例でヘッドとライナーを交換したが、30%の症例で交換しなかった。
  • 84%の症例で抗生剤を長期投与した(経静脈的投与5.5週間、その後経口抗生剤処方)
  • 77%の患者で慢性感染の状態で推移した
  • 歴史的に、掻破洗浄術のみで鎮静化する確率は60%未満
  • 全身状態の良い症例の方が予後良好



う~ん、とりあえず再置換術を回避することにフォーカスした治療方針のようです。感染が持続している症例が多く、良いのか悪いのかよく分からない結果です。


更に、がみたけ先生が大腿骨頚部骨折の患者と待機的にTHAを受ける患者を同じように取り扱っていることに対して問題提起しています。たしかに患者層が全く別物ですね。。。


THAの感染に興味のある方は、がみたけ先生のブログを訪問して、詳細を確認することをお勧めします。もちろん、原著にあたることがベストですが(笑)。





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大腿骨頚部骨折後偽関節のTHA

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先日、大腿骨頚部骨折後偽関節に対する人工股関節全置換術(THA)がありました。まだ60歳台ですが、既に寛骨臼側にOAも認められたため他院から紹介されました。



術前 - コピー




何故こうなってしまったのか疑問でしたが、半年ほど痛みに堪えて歩行していたとのことです。紹介時には、歩行不能となって1ヵ月が経過していました。悩ましい。。。


人工骨頭置換術でお茶を濁す手も無きにしも非ずですが、年齢が若いことと今後の活動性を考えて、セオリー通りにTHAを施行することにしました。


しかし、この手の症例は、骨質が極端に悪いことが多いので要注意です。私は基本的にセメントレス派ですが、念のためセメントTHAもバックアップして手術に臨みました。


案の定、骨質が非常に不良で、寛骨臼のリーミングもほんの数秒で内板まで到達してしまいました。軟骨下骨をある程度温存するつもりでしたが、感覚が分かりませんでした。


大腿骨も骨質不良でしたが、一応セメントレスステムでラスピングしてみました。意外とプレスフィットしたので、そのままセメントレスステムで終了しました。



術後 - コピー




終わってみると、意外にも寛骨臼・大腿骨側ともセメントレスでしのぐことができました。あ~、よかった。カチカチのOAと比べると、このような症例は非常に緊張します。


いつも思うのですが、このような症例はできるだけ避けたいところです。まぁ、誰かがしなければいけないわけですが。。。







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初学者が股関節外科の基礎および治療体系を学習するにあたり最もお勧めの書籍です。日本を代表する執筆陣が股関節外科に関するあらゆる事項を、非常に分かりやすく解説しています。この1冊があれば股関節外科のほぼ全ての疑問点を解消できると思います。


         




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