整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

手術の気付き

ツブシが利きすぎる科もしんどい。。。

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最近、私が勤めている医療機関では、人工膝関節全置換術(TKA)の際に、ほぼ全例でKneeAlign2を使用しています。以前に、こちらで使用経験をご報告しました。


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KneeAlign2の骨切り精度はかなり素晴らしく、もうちょっと外反にした方が良いのでは? と思う症例であっても、術後単純X線像ではKneeAlign2に軍配が上がることがほとんどです。


そんな素晴らしいKneeAlign2ですが、なかなか細かい術中操作を覚えることができません。私のアタマが悪いことが原因なのでしょうが、トリセツもイマイチです。


未だに、ZIMMER-BIOMETの方に教えてもらいながら、泥縄式にナビゲーションの設定をしています。泥縄式でも、しっかりナビゲーションできていればOKでは?


しかし、コトはそれほど単純ではありません。ナビゲーション自体は完璧に近いのですが、デバイスの取り扱いに不慣れであると、他の微妙な手技に良くない影響を及ぼします。


ひと手間が面倒なためにはしょってしまうと、そのひと手間の手技ために骨切りの結果が少し変わってしまうことが起こりうるのです。やはり、業者さん任せはいけません。


自分だけで完璧に施行できるようになるまで、しっかり習熟する努力をするべきだと思います。しかし、整形外科医が扱うデバイスは数は膨大です。守備範囲が広すぎるのです。


例えば、毎日TKAやTHAだけをしていればよいという医師は、基幹病院のごく上澄み医師を除いて、ほとんど存在しないのが現実です。


このハンディを埋めるには、取り合えず努力して手術で使用するデバイスを完璧にマスターしていくしか方法はなさそうです。いや~、ツブシが利きすぎる科もしんどいですね。。。





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お手製のラジオルーセントスリーブ

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先日、上腕骨骨幹部骨折の手術がありました。
長斜骨折だったので、髄内釘を使用しました。


髄内釘の遠位スクリューはラジオルーセント・ドリルを使用する機種がほとんどだと思います。しかし、肘関節近位の屈側にドリリングする際には、上腕動脈や正中神経が心配です。


上腕骨まで展開することは容易ですが、ラジオルーセント・ドリルを使用する段階で、これらの神経血管束を巻き込んでしまい損傷する危険性があるからです。



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そこで登場するのが上記のお手製のラジオルーセント・スリーブです(笑)。単に1ccや2.5ccのシリンジを直剪で切断しただけのシロモノです。先輩医師に教えていただきました。


しかし、プラスチック製であるためX線透過性です。このスリーブがあれば、ラジオルーセントドリル使用中に、神経血管束を巻き込んでしまう危険性を大幅に軽減できます。


上腕髄内釘のように、気を遣う部位でのラジオルーセントドリルの使用の際には、簡単にできるお手製ラジオルーセント・スリーブの使用をお勧めします。





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セメント充填の安定化を目指して

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先日の骨セメントの種類変更は慎重に!のつづきです。
安定したセメント充填を再確立するために奮戦中です(笑)


さて、第3世代セメント充填法を用いることは当然ですが、セメントそのものの管理も安定したセメント充填を行うためには重要です。セメントの硬化速度に影響を及ぼす因子は下記です。

  1. セメントの種類
  2. セメントの保存温度
  3. 室温
  4. 撹拌スピード


このうち、今回のケースでは②~④が問題となります。これらの3つの因子を一定化することが、安定したセメント充填につながると思います。


まず、セメント保存を冷蔵庫で行うか、室温で行うかに大別されます。できるだけ条件を一定化するには冷蔵庫での保管が推奨されます。では、冷蔵庫の温度を何度に設定するのか?


セメント専用の冷蔵庫であれば、15~20度ぐらいが望ましいのではないかと思います。しかし、一般の施設で「セメント専用冷蔵庫」を準備するのは、スペース的にも難しいと思います。


こうなると、他の物品との混蔵になりますが、この場合には5~10度ぐらいの設定温度が多いです。これぐらい低温では、なかなかセメントが硬化しないことが難点です。


安定したセメント温度を採るか、硬化時間の短縮を採るのかは難しい判断ですね。次に②の室温ですが、私が勤務している施設では、おおむね21度に設定されています。


基本的には、術者に快適な温度設定で良いのではないでしょうか。極端に暑い・寒いとなると、術者にストレスがかかって手術成績に悪影響を及ぼす可能性もあります。


④の撹拌スピードは、リーマーを使用することで一定化しやすくなります。ただし、調子に乗ってウィンウィンしていると、あっという間に硬化するのでご用心を(笑)。


主に②④を一定化することで、安定したセメント充填が達成できるのではないかと思っています。私は、もともとセメントレス派の人間なので、もう少し試行錯誤が必要そうです。






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TKA: 外反膝症例のポイント

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先日、外反膝の人工膝関節全置換術(TKA)がありました。FTA 160度ほどあり、外反膝のTKAとしては、ちょっと難しい可能性がある症例でした。


TKAのなかでも、外反膝は難易度の高い手術のひとつです。特に、FTA160°を越える外反膝症例では、術前に内反ストレスを掛けてどれくらい外側の緊張が強いか確認します。


内反ストレスをかけても矯正されないFixed-Valgus Deformityは、かなり難症例であることを覚悟しましょう。ある程度外反が矯正されるnon Fixed-Valgus Deformityなら、まだ芽があります。


実際に、外反膝症例に対してTKAを行う際の注意点は下記のごとくです。全体を通じてのポイントは、できるだけ骨切り量をセーブすることです。 

 

  1. 脛骨内側の剥離は骨切り量(2-3mm程度)にとどめる
  2. 大腿骨外反骨切り角は計測より1度程度少なくする



大腿骨のエントリーポイントは大腿骨外顆の低形成のため、内顆に掛かってしまうことが多いです。つまりエントリーポイントは、大腿骨顆部のwhite side lineより5mm内側となります。

 
大腿骨遠位骨切りが終了した時点で(大腿骨内顆は9mm骨切り)、下肢を牽引して大腿骨遠位骨切り面に10mmのスペーサーを当てて、脛骨骨切り量のおおよその指標とします。


内側がゆるいので脛骨骨切りは通常2-3mm程度となります。MCLがゆるんでいるため、内反膝のように9mm切除すると、高度の不安定性をきたして拘束型TKAを選択せざるえなくなります。


下肢を牽引して大腿骨遠位骨切り面に10mmのスペーサーを当てて脛骨骨切り量が5mmに近いようなら、まず大腿骨遠位の骨切りを最大4mm程度まで追加します。


それでもタイトなら脛骨を切除せざるえない場合もありますが、屈曲時に不安定性が出現することを覚悟しましょう。


外反膝では大腿骨外顆の低形成のため外旋角が強いですが、インプラントをやや前めに設置するかワンサイズアップしないと前方外側にノッチを形成することがあります。


また、通常のsurgical axisは、clinical axis-3°ですが、つけすぎると屈曲時に内側がゆるむので、やや控えめに留めておくほうが無難です。最後に、外側の緊張乖離は下記の手順です。


  1. iliotibial bandの切離、release (Gerdy結節で骨膜下に剥離、筋膜の連続性は残す) 
  2. LCLの切離、releaseを行う
  3. これでだめなら、popliteal tendonのreleaseや切離を行う



特に膝の屈曲拘縮がある症例では、腓骨神経の剥離を行う必要があります。 よくいわれるようにTKAは、soft tissue surgeryです。ゆめゆめ外反膝症例を甘く見ないようにしましょう。





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どちらを選ぶ? 新規性と長期成績

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先日の骨切り術は賞味期限切れかも・・・で大きな反響がありました。学会で声を上げることは憚れる内容ですが、同じように感じている先生が居て安心しました。


私は、これと似たような趣旨のことを常に考えています。それは「新規性のある治療か、長期成績の出ている治療のどちらを優先するのか」という命題です。


医療の世界は日進月歩です。このため、世界中で医療技術のイノベーションが、毎年のように生み出されています。学会で注目される華々しい新規性のある治療法は垂涎の的です。


特に脊椎外科の領域で、多くのイノベーションが出現しています。しかし、これらのイノベーションが本当に素晴らしい治療法であるか否かは、10年以上経過してみなければ分かりません。


例えば、XLIFやOLIFのように多椎間固定して、脊椎アライメントを修正するような治療法は、数十年スパンでみて、本当に患者さんに資するのか?


20~30年先の医師が「何故あの時代の医師は、多椎間固定をしまくったのだろう?」と思わない保証は無いと思うのです。


既に結果が出ているイノベーションの失敗例として、股関節外科の分野ではメタル・オン・メタル人工股関節置換術(Metal-on-Metal THA, MoM THA)が挙げられます。


MoM THAは、金属摩耗粉が原因で局所的に組織毒性を有することが知られており、偽腫瘍や組織壊死などをきたすARMD(adverse reaction to metal debris)が報告されています。


MoM THAが脚光を浴びていた時は、私も使用したいと思いましたが、長期成績の出ている治療ではないという理由で使用しなかったことを覚えています。


医療に関して、私は非常に保守的なのです。もちろん、このような姿勢は諸刃の剣です。全員が私のようにイノベーションに消極的なら、医学の発展は望めないからです。


私のように、長期成績が出ている治療法だけを選択する姿勢は、ある意味卑怯なのかもしれません。それはいいとこ取りだからです。このあたりの匙加減は難しいですね・・・




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