整形外科医のブログ

投資の成功によって30歳代で経済的自由を達成しました。 医師起業家として年商10億円企業を目指して日々奮闘中

腰椎

脊髄空洞症の原因で最も多いのは本当にキアリ奇形なのか?

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先日、50歳台男性の頚椎MRIを撮像したところ、C5/6より末梢の頚髄に、T2WIで紡錘状の高信号領域の領域を認めました


いわゆる、脊髄空洞症の所見です。脊髄空洞症では原因が問題になります。ご存知のように、脊髄空洞症の原因として最も有名なのはキアリ奇形です。


キアリ奇形は、小脳が下の方にある脊髄側に生まれつき落ち込んでいます。MRIを見ると一目瞭然なのですが、今回の症例ではキアリ奇形は無さそうです。


そして教科書を紐解くと、脊髄空洞症の原因で最も多いのはキアリ奇形だそうです。私はこれまで何例かの脊髄空洞症をみてきましたが、いずれもキアリ奇形はありませんでした。


私が診てきた症例では、脊髄空洞症の中枢端の高位に、結構大きめの頚椎椎間板ヘルニアがあって頚髄を圧迫している症例が多い印象を受けています。


このため、私の中では脊髄空洞症の原因として、キアリ奇形よりも頚椎椎間板ヘルニアの方が多いのではないかという疑念があります。


キアリ奇形は脳神経外科領域の傷病なのでしょうが、整形外科医の私でも、さすがにキアリ奇形を見落とす可能性は低いでしょう。


原因不明の脊髄空洞症で神経障害などの症状がある場合には、空洞—くも膜下腔シャント術の適応になります。


しかし、頚椎椎間板ヘルニアに脊髄空洞症が合併している症例では、前方除圧固定術などで脊髄への圧迫を取り除くと脊髄空洞症の空洞が軽快するのでしょうか???






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自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。








                        

keegan型頚椎症性筋委縮症には症状が軽快しない症例もある?!

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先日の外来で2年ほど前から右肩を挙上できなくなったという80歳台女性が初診されました。 特に外傷の既往はないのですが、右手が挙がらないようです。


そりゃ、フツーに腱板変性断裂でしょ。とりあえずレントゲン検査しましょうと言ったところ、家人が右肩の骨が出っ張っているとおっしゃられました。


骨が出っ張っている? よくよく見ると、確かに右肩のボリュームが小さい気がします。服を脱いでもらうと驚きました。三角筋の後方成分がごっそり無くなっているのです。


診察すると、右肩の伸展・外転のみ MMT 2程度です。肘関節屈曲以下の運動麻痺や知覚障害は一切認めませんでした。また、下肢痙性も認めません。痛みやしびれも無いようです。


単純X線像では、C5/6で椎間板腔の狭小化を認めます。しかし、Spurling test や Jackson test は陰性です。消去法的にkeegan型頚椎症性筋委縮症と診断できるのかも...。


さしあたって、筋電図検査と頚椎MRIを予約しました。現時点では
keegan型頚椎症性筋委縮症は確定診断ではありません。 



私は、このような患者さんを何名か診察したことがありますが、いずれも1~2ヶ月で自然治癒しました。しかし、今回の患者さんは機能改善するとは思えません。


2012年の日本整形外科学会学術総会で、山口大学の田口元教授が、keegan型頚椎症性筋委縮症の治療について講演されていました。


さしあたって、メチコバールを処方しつつ、頚椎MRIや筋電図検査等を施行する予定です。それで何もなければ神経内科に相談ですね! 






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Modic変性の圧迫骨折誤診でとばっちりを喰らう

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腰椎の Modic変性絡みで酷い目に遭いました。ご存知のように、Modic変性では type 1とtype 2は T2強調画像で椎体終板が高信号になります。


この所見を腰椎圧迫骨折と診断した医師がいたのですが、私はModic変性と言ったために患者さん家族とトラブルに発展したのです。


患者さんが加入している生命保険は、骨折であれば保険金が出るようです。しかし、前医からの画像所見の推移を見ていると、明らかにModic type 1なんですね...。


しかも年齢が40歳代男性で既往歴の無い方です。受傷機転もあやふやで、はっきりしたイベントがありません。もちろん、いつの間にか骨折の可能性もゼロではない。


しかし経験上、既往歴に何も無い 40歳代男性にいつの間にか骨折が発生するとは考えにくいです。肉体労働者だけに、どう考えても Modic変性です。


それにもかかわらず、患者さん家族は強硬に骨折を主張して譲りません。あくまでも圧迫骨折であると診断書に記載しろと迫ってきます。


さすがに Modic変性を圧迫骨折と診断書に記載できません。頑として拒否したところ、家族からはクレームの嵐です。しかし、虚偽記載はできない...。なかなか辛いですね。






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コルセットはエビデンスの無い治療法。ダーメンから卒業しよう!

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2019年の日整会で、鳥取大学の荻野浩先生の『骨粗鬆症性椎体骨折の治療  診療マニュアル作成の試み』という教育研修講演を拝聴しました。この講演の要諦は下記のごとくです。


  • 骨粗鬆症性椎体骨折の治療では外固定の種類と治療成績に有意差は無い
  • 骨粗鬆症性椎体骨折の治療では外固定の有無と治療成績に有意差は無い
  • 骨粗鬆症性椎体骨折の治療では受傷後の安静期間と治療成績に有意差は無い



上記の結論は、たくさんの論文をベースにしたCQに対する回答です。今更ながら、整形外科医としては衝撃的な内容です。


何といっても、整形外科の圧迫骨折に対する標準的保存治療(?)が全否定されているのですから...。しかし世の中の趨勢は EBMです。


この流れが変わることはないでしょう。ということは、10年ぐらいすると圧迫骨折に対する標準的保存治療では、コルセットは簡易型でも問題なしということになるかもしれません。


このことは医療財政にも追い風です。これまで実施していた高価な保存治療にはあまり意味がなく、簡易コルセットでも圧迫骨折の治療効果に差はないことになりますから。


しばらく忘れていましたが、最近になって「骨粗鬆症性椎体骨折の治療では外固定の種類と治療成績に有意差は無い」「外固定の有無と治療成績に有意差は無い」を思い出しました。


EBMが更に進化すると、圧迫骨折でフレームコルセットやダーメンコルセットを処方すると、ダメ医者のレッテルを貼られる可能性すらあります。


現時点でもエビデンスの無い話です。それにもかかわらず高価な外固定を処方し続けるのはどうかと思います。それって「私は不勉強なアホです」と告白するのと同じですから。


コロナ禍で医療は国家に更なる負担をかけました。私たちが能動的にコロナ禍の過剰医療を推進したわけではありませんが、片棒を担いでいるのは紛れもない事実です。


せめてエビデンス皆無の治療は中止することが望ましいのではないでしょうか。特に圧迫骨折の外固定では、義肢装具士に暴利を貪らせる必要はないと思います...。







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オーストラリア理学療法協会のスポーツ理学療法士による実践的な教科書です。
治療的テーピングの概要を学ぶことができます。



 






ヘルニコアって何だ? 新しい椎間板内酵素注入療法

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ヘルニコアは椎間板機能を温存できる画期的治療法


先日、腰椎椎間板ヘルニアの患者さんから「ヘルニコア」という治療について質問がありました。関節外科医の立場では、ヘルニコアなどという治療法は聞いたことがありません。


ざっくりネットで調べたところでは、ヘルニコアは椎間板内酵素注入療法の一種です。椎間板の髄核にヘルニコアを注入する治療です。


髄核を融解すること椎間板の髄核を融解することで椎間板内圧を減少させ、突出したヘルニアによる神経根への圧を軽減するメカニズムのようです。


従来からキモパパインというタンパク分解酵素を髄核内に注入する治療が存在しました。しかし、キモパパインはタンパク質を分解してしまうので椎間板機能が廃絶します。


このため販売中止になりました。椎間板機能を廃絶してしまう類似の治療として、椎間板ヘルニアレーザー治療(PLDD)があります。これらの黒歴史の治療法と原理は同じです。


ヘルニコアが注目される理由は、タンパク質を分解せずに髄核の保水成分プロテオグリカンのみを分解して保水能を低下させるため、椎間板機能が温存される点にあります。


なるほど、これまでの治療法はすべて椎間板を「殺す」メカニズムばかりでしたが、ヘルニコアは椎間板の機能を温存できることに大きな差異があるようです。



手術療法との比較


一方、手術療法との比較では、その治療成功率は手術療法より低いものの、手術療法に付随する合併症の危険性は低いと考えられています。


すなわち、椎間板ヘルニアに対する治療法の中で「手術療法と保存療法の中間の治療法」と捉えられている治療法です。


ヘルニコアの注意点は、著明な筋力低下を有する症例は禁忌である点です。また、ヘルニコアの治療可能施設は日本脊椎脊髄病学会指導医が常勤する施設に限られているようです。



まとめ


従来のキモパパインやPLDDのように、椎間板機能を廃絶してしまう悲惨な治療法のイメージが強い椎間板治療ですが、ヘルニコアは従来法と異なるようです。


ヘルニコアは日本で開発された新薬であることを加味して、手術療法と保存療法の中間の治療法として普及するとよいですね。







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