整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

救急

後出しじゃんけん診断書の記載法


私が勤務する病院では、土曜日の新患外来を大学からのアルバイト医師に助けてもらっています。非常勤医ではあるものの、診察した患者さんの診断書作成業務はお願いしています。


しかし、週1回しか病院には来ないので、急ぎの診断書は常勤医で対応せざるを得ません。特に交通事故患者さんの ” 後出しじゃんけん ” 的な警察提出用診断書の扱いがやっかいです。


何故なら打撲程度の場合、通常なら「約3日間の安静治療を必要とする見込みです」と記載するべきところですが、受傷から2週間してから診断書希望で来院する場合もあるからです。


しかも、「まだ少し痛いです」と訴える患者さんもおり、完全に「治っている」と言い切れないのです。では打撲で「受傷から約3週間の安静治療を必要とする」と記載すればよいのでしょうか?


さすがに、3週間はないだろうと思うのが常識的な判断なのですが、現実問題として2週間を越えて受診しているという事実もあります。


この場合、私は「 受傷から約3日間の安静治療を必要とする " 見込みでした " 」 と記載しています。初診時には3日ぐらいで治るだろうと予想していたという理屈です。


このように記載すれば、整合性がとれて問題が発生しにくいのではないかと思います。 つまらないことですが、診断書に記載する文言には気を使います・・・






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頭部外傷のベストの縫合法は?


先日、当直していると7歳児が転倒して後頭部を打ったとのことで救急受診しました。
後頭部に約3cmの裂創があったのでナイロンで縫合しました。


通常、私はスキンステープラーで頭部外傷の縫合を施行します。しかし、この時にはスキンステープラーだと両親に文句を言われそうだったので、わざわざナイロンで縫合しました。


縫合後に患児の創部を観察しましたが、やはりナイロンは毛髪と似ているため抜糸の際に見難そうでした。う~ん、明らかにスキンステープラーの方が視認性が良くて優れていそうです・・・


後日、アルバイト先の脳神経外科部長の先生に、頭部外傷の際にスキンステープラーとナイロンでの縫合ではどちらを推奨されますか? という低レベルな質問を恥を忍んで行いました(笑)。


その部長の先生は、① 頭部外傷はどんな方法でも問題なく治癒する ② したがって手っ取り早いスキンステープラーの方が良い とおっしゃられました。


子供の場合には親の目があるからナイロンの方が良いのでは? と質問したところ、子供こそ暴れるので素早く施行できるスキンステープラーが望ましいとのことでした。


ちなみにスキンステープラーをしていても、頭部CTを施行する際にアーチファクトにならないそうです。頭部CTのアーチファクトにならないのなら、全例スキンステープラーで良さそうです。


以上のことから、頭部外傷の縫合処置は全例スキンステープラーで縫合することにしました。素早く縫合できて安価かつ抜鉤も容易なので、スキンステープラーに勝るものは無いですね。



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CPRは心臓マッサージのみでもOK!


Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
胸骨圧迫のみのCPR普及で成果 です。




胸骨圧迫(心臓マッサージ)のみのバイスタンダー心肺蘇生(CPR)の全国的な普及が日本の院外心停止(OHCA)後生存者の社会復帰数増加に寄与したことが,総務省消防庁の全国前向きウツタイン登録OHCA患者約81万例の解析から分かった。胸骨圧迫のみのCPR普及先進国である日本で国レベルの成果を示す結果となった。


OHCA後のバイスタンダーCPRの種類別の効果は,①成人の心原性心停止であれば胸骨圧迫のみでも従来法(マウス・トゥー・マウスの人工呼吸+胸骨圧迫のCPR)と同等以上②自動体外式除細動器(AED)で迅速に電気ショックが可能な状況では胸骨圧迫のみの方が有効③心臓以外が原因の小児の心停止では従来法が望ましい−など,OHCA患者の背景や状況によって異なると考えられている。  


今回の解析対象は,2005年1月〜12年12月の8年間に救急隊到着前にOHCAとなり救急搬送されたウツタイン登録OHCA患者81万6,385人。主要転帰はOHCAから1カ月後の社会復帰可能な神経学的予後良好〔脳機能レベル(CPC)1(機能良好),または2(中等度障害)〕の割合とした。  


解析方法は,市民によるCPR(胸骨圧迫のみまたは従来法)によって社会復帰したOHCA数から寄与生存数(人口1,000万人当たり)を推計し,その経年推移を検討した。寄与生存はCPRの実施割合(普及・実施のしやすさ)を横軸,社会復帰数(救命効果)を縦軸に取った場合の面積として推計される。  


解析の結果,対象のうち胸骨圧迫のみのCPRを受けたのは24万9,970人(30.6%),従来法CPRを受けたのは10万469人(12.3%),CPRを受けていなかったのは46万5,946人(57.1%)だった。CPRを受けた割合は全体では2005年の34.5%から2012年には47.4%と有意(両傾向性P<0.001)に増加し,胸骨圧迫のみでも17.4%から39.3%へと有意(同P<0.001)に増加していた(図)。



図表




CPRによって社会復帰したと推計されるOHCA者数(人口1,000万人当たり)は全体では2005年の9.0人から2012年には43.6人と有意(傾向P=0.003)に増加し,胸骨圧迫のみでも0.6人から28.3人へと有意(同P=0.010)に増加していた(図)。  


以上から,石見氏らは「バイスタンダーCPRのうち胸骨圧迫のみのCPRの全国的な普及が日本のOHCA後の社会復帰数増加と関連していた」と結論付けている。


これまでの研究は個人単位の比較に焦点を当てたものがほとんどであり,地域レベルで市民による胸骨圧迫のみのCPRの普及がどの程度OHCA後生存者の社会復帰数を増加させるかは検討されていなかった。  


そこで今回われわれはOHCA後の生存に対する国家規模の市民による胸骨圧迫のみのCPR普及の影響を評価した。2010年の日本版CPRガイドラインではCPRの普及促進を目的に,胸骨圧迫のみのCPRの教育が推奨された(従来法を基本に,胸骨圧迫のみは入門編として導入)。日本は胸骨圧迫のみのCPR普及の先進国といえる。  


国や地域にとって,どのCPRが望ましいかは個人のレベルではなく,地域全体の影響を考慮して検討する必要があるため,今回の検討結果は国レベルでの胸骨圧迫のみのCPR普及の効果を示す貴重な結果である。






院外のプライベートの時間帯にたまたま急患に遭遇したときには、いくら医師であるとはいえ初対面で何の情報も無い方にマウス・トゥー・マウスの人工呼吸まで行うことは躊躇します。


しかし、胸骨圧迫のCPR
のみなら心理的なハードルもかなり低くなります。人工呼吸無しでも救命率に差が無いのは不思議な感じですが、それだけ循環が重要ということなのでしょう。


幸い(?)私はプライベートの時間帯に救命処置を行ったことは無いですが、これからは勇気を持って救命処置に参加できそうです。



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高齢者の骨折を見たら肺炎を疑え!


先日、転倒してから腰が痛くて立てなくなったという患者さんが救急搬送されました。「腰が痛い」というので整形外科の私が救急を受けたのですが、搬入時の酸素飽和度が80%台でした。


問診を取ると、数日前からかなり呼吸が苦しかったようです。取りあえず胸部・腰椎・胸腰椎・骨盤Xpを施行すると、右肺野が真白でした。明らかに肺炎を併発しています。


L1圧迫骨折もありましたが、重症度から考えて内科入院となりました。今回のように肺炎を発症してしんどいために転倒して骨折するケースは非常に多いと思います。


私の勤務している施設では入院を必要とする骨折の半分近くに肺炎が先行している印象を受けます。「女性を見たら妊娠を疑え!」と同様に、「高齢者の骨折を見たら肺炎を疑え!」ですね。


この考え方をしていると、大腿骨近位部骨折「術後」に肺炎を併発した!などのトラブルを回避できる確率が上がります。「術後」ではなく「術前」から肺炎を併発しているケースが多いのです。


単純X線像で肺野に浸潤影が無いことや熱発していないことでは、肺炎を除外することはできません。高齢者の肺炎ではあまり熱発しないこともあるからです。


長年整形外科医をやっていると、さまざまな危機回避能力を身に着けます。今回の「高齢者の骨折を見たら肺炎を疑え!」も、私がいつも注意していることです。



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爪はできるだけ温存しよう!


先週末に救急で指先に重量物が落下して指が潰れたという方が受診されました。
単純X線像で末節骨の粉砕骨折を認めました。


このような指尖部損傷では高率に爪脱臼と末節骨開放骨折を併発します。この方も例に漏れず両方とも認めましたが、爪に関しては末梢側も剥がれており、ほぼ指から剥離していました。


今回のように爪床から爪甲が完全に剥がれている症例であっても、爪床の保護と骨折部の安定性を保つために、爪甲は可能なかぎり温存する方が望ましいと思います。



受傷時正面    受傷時側面  

  











今回は上記のように末節骨が粉砕していて骨折部は非常に不安定な状態でした。爪甲も爪床から完全に剥離していたのですが、シーラー法および爪周囲の縫合を組み合わせて固定しました。





爪整復後正面  爪整復後側面












爪の脱臼を整復して周囲の軟部組織に縫合するだけで、このように末節骨骨折もいい感じに整復固定されました。爪甲が完全に剥がれていても、これだけキレイに整復することが可能です。


外科医師は爪周囲炎の治療の影響のためか、すぐに抜爪する傾向にあります。しかし指の機能温存や爪の美容面の観点から、整形外科医なら爪温存を心掛けるべきでしょう。




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