整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

外傷

単純X線検査なしで治療する恐怖


先日の外来で、足関節を捻転した若年女性が初診されました。
では、単純X線像を撮影しましょうと言ったところ、「妊娠している可能性がある」とのことです・・・


詳細にお伺いすると、しばらく生理がきていなくて市販の妊娠検査薬は陽性だったとのことです。う~ん、これは妊娠している可能性が高そうです。


足関節は外果周囲の軽度の腫脹・圧痛および内果の圧痛を認めます。内果には腫脹はなく、ATFLやCFLの圧痛は軽度です。軸圧痛はありません。


印象としては、足関節脱臼骨折である可能性は低く、もし骨折があったとしても転位はほぼ無さそうです。一応、足をひきずりながらも歩いて受診されています。


一方、この方が妊娠していると仮定すると、最も放射線被爆が問題になる時期にさしかかろうとしています。この場面では単純X線検査を施行するか否かの判断が難しいです。


客観的にみると、きっちりプロテクターを着て撮影すれば放射線の影響は最小限に抑えることは可能であり、この撮影のために胎児が流産したり障害を持って生まれる可能性は低いです。


しかし、自然経過の場合でも流産や障害児が生まれる可能性はあります。もしも、そのような転帰をとった場合には、この女性は大きな精神的トラウマを抱えてしまうことになります。


このあたりのことを正直に説明した上で、単純X線像を施行するか否かについて話し合った結果、今回は単純X線検査を施行せずに骨折に準じてU字スプリントで治療することにしました。


印象としては骨折ではなく足関節靱帯損傷なのですが、万が一骨折があった場合を考えて3週間免荷としました。何が正解かは分かりませんが、おそらく問題なく治療できると思います。


一方、今回のように単純X線検査なしで治療するのは、暗闇の中でモノを探すような感覚に陥りました。やはり、単純X線像が無いと治療を行う上で非常に不安になります。


良く考えてみると、この状況は接骨院の置かれている状況です。彼らはこんなコワい状況でよく商売しているなと感心しました。私ならコワくて精神的にもたないです(笑)。


おそらく、コワさを知らないからできているのでしょう。そういえば先日、接骨院でマッサージ(?)を受けた直後から四肢麻痺が出現した患者さんの救急要請があったことを思い出しました。


このあたりの話は整形外科医なら誰もが知っていることだと思いますが、世間的にはあまり話題に上りません。きっと闇に葬り去られているんでしょうね・・・




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自賠責治療の注意点


最近、交通事故の自賠責治療で、さまざまなトラブルが発生するようになってきました。医師は被害者と加害者の間に立たされ対応に苦慮することがあります。


自賠責治療では最後に後遺障害診断を行いますが、後遺障害の等級によりもらえる金額が変わってきます。このため後遺障害診断書にクレームをつけられるケースが出てくるのです。


最近では、弁護士事務所が交通事故無料相談などの広告を打っています。弁護士特約が付いている任意保険の加入者が多くなってきたため、弁護士に相談しやすくなっているのです。


交通事故処理を弁護士に依頼する患者さんが増えるにしたがって、弁護士から後遺障害診断時に記載内容についての指示が来るケースもあるようです。


後遺障害診断は医師がありのままに記載する必要があるため、他者の指示に従うことには問題があります。このため、弁護士の指示に従う必要はありません。


また、後遺障害診断時に弁護士が同席を希望することもあるようですが、これに関しては医師サイドで断ることも可能です。


また、患者さんの代理人として弁護士や認定司法書士(損害賠償額140万円まで)が登場するケースもありますが、行政書士の場合には弁護士法違反なので拒否することが可能です。


このように、任意保険の弁護士特約の普及で、自賠責治療にも変化の波が押し寄せています。ここまでは弁護士にやや批判的な内容ですが、全てに否定的になる必要はありません。


むしろ、今までは損害保険会社の力が圧倒的に強かったために、無茶な後遺障害等級認定がまかり通っていたという事実があります。


現在の自賠責治療の変化は、その揺り戻しが起こっているに過ぎないのです。今まで被害者:損害保険会社=1:9ぐらいだったのが、3:7ぐらいになってきた感覚でしょうか。


私個人の気持ちは患者(=被害者)サイドにあるので、被害者や弁護士と協議しながら無難な落としどころを探る診療を進めています。





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肉芽組織が上皮化しない時は・・・


先日の外来で、交通事故後の殿部挫創の患者さんを診察しました。
受傷後1ヵ月以上経過してからの初診で、創がなかなか治らないという主訴でした。


創を診察すると、中央がカリフラワー状の肉芽となっており上皮化が進展していないようです。肉芽上に壊死組織はありません。むむっ!この風景はどこかで見たことがある・・・


それは、こちらの患者さんでした。肉芽が盛り上がりすぎたときは、ストロンゲストのステロイド外用剤を塗ると上皮化することが多いです。形成外科でよく使う治療法だそうです。


整形外科医的な考え方では、「上皮化しないなら、不良肉芽を切除してしまえホトトギス」という織田信長を彷彿させる荒々しい(?)治療をしてしまいがちです。



しかし、このような創では、「上皮化しないなら、ステロイド外用剤を使ってみようホトトギス」という豊臣秀吉的な治療(?)が望ましいです。


肉芽組織にストロンゲストのステロイド外用剤を塗布したところ、この患者さんでも数日で殿部のカリフラワー状肉芽組織が縮小してきました!


整形外科医としてはあまり見ない創ですが、2例目を経験することで治療の引き出しがひとつ増えました。ブログをしていると、医師としても成長しているような気がします(笑)。






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足趾のフォルクマン拘縮


先日、下腿コンパートメント症候群後の足趾拘縮の方が、セカンドオピニオン目的で受診されました。下腿コンパートメント症候群を放置すると、筋区画内の筋壊死や神経障害を起こします。


そして下腿であっても、前腕のフォルクマン(Volkmann)拘縮で知られる 不可逆性の阻血性拘縮を引き起こします。急性期には、筋区画(コンパートメント)内で下記の病態が進行します。

  1.  循環障害による筋肉の阻血性壊死
  2.  筋間を走行する神経の阻血圧迫麻痺 


①の筋肉の壊死ですが、深層のものほど高度で浅層は軽度なことが多いです。このため、下腿では下図のように深層にあるdeep posterior compartmentが高度に障害されます。



下腿コンパートメント



今回の方は、足趾の拘縮が主訴でした。具体的には足関節を背屈すると足趾が屈曲し、足関節を底屈すると足趾が伸展します。


deep posterior compartment内には長母趾屈筋・長足趾屈筋が存在するので、今回のような足趾の屈曲拘縮を併発します。


つまり、長母趾屈筋や長足趾屈筋が阻血性壊死しているため、筋肉としての機能が廃絶しているのです。このような症例では腱切離術で対応することが多いです。


ただ、実際に切腱術を施行するか否かは、足趾の拘縮の程度に寄ります。腱切離によって歩行時の足趾安定性を毀損してしまうと、歩行能力が低下してしまうからです。





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U字スプリントの素晴らしい工夫


先日、U字スプリントで治療中の患者さんを診察する機会がありました。
U字スプリントを装着する際は、足関節両果より中枢側のみ弾性包帯で巻くように指導します。


しかし、先日の患者さんは弾性包帯がすぐにズレることに不満があったようで、素晴らしいアイデアを思いつかれました。それは足関節サポーターを弾性包帯の代用にすることです。





上記のようなタイプの足関節用のサポーターをU字スプリントの上から履くことで、弾性包帯の代わりになります。弾性包帯を巻く手間も省けて一石二鳥です。


見た目もシンプルで好感が持てました。価格は500円程度で、さほど高価なモノではありません。uxcellのサポーターである必要性はないため、同型なら何でもOKだと思います。




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