整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

外傷

肘関節脱臼で靭帯はどうなっている?

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先日、肘関節脱臼の患者さんが初診されました。他院で徒手整復および固定を施行されていますが、徒手整復後の単純X線像で関節内に小骨片を認めました。



AP - コピー



念のためにMRIを施行しました。結果は上の画像です。はっきりとした骨軟骨損傷は認めなかったため、外側側副靭帯起始部の裂離骨片だと診断しました。


何気なく眺めていると、ふと内側側副靭帯(MCL)や外側側副靭帯(LCL)が損傷していることに気付きました。肘関節脱臼後のMRIなので、考えてみれば当たり前です。


でも本当にそうでしょうか? 肘関節脱臼は、O'Driscollの報告以来、肘関節の後外側回旋不安定性と関連して認識されるようになりました。


O'Driscollの説では、①外側側副靭帯が断裂 ②前方および後方関節包断裂 ③内側側副靭帯が断裂 ④肘関節脱臼 という受傷機転です。


このためO'Driscollの説では、肘関節脱臼には外側側副靭帯損傷と内側側副靭帯損傷が必発です。ただし実際の臨床では、肘関節脱臼=内側側副靭帯損傷か否かは明らかではありません。


このため、肘関節脱臼の際に、内側側副靭帯損傷はどうなっているのだろう? という疑問がわたしにはずっとありました。それに対する回答が今回のMRIにありました。


もちろん、n=1なので今回の認識が一般的なのか否かは判定できません。しかし、曲がりなりにもO'Driscollの説を支持する画像所見だったので、私もそういう認識でいようと思います。




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非開放性ボタンホール変形の治療

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先日、アメフト部の学生が、中指のボタンホール変形で初診しました。3ヵ月ほど前の練習中に中指を突き指したそうです。


そのまま放置していたところ、徐々にPIP関節が曲がってしまったので思い切って受診したとのことでした。診察すると、既にPIP関節に屈曲拘縮を併発しています。


開放性の伸筋腱中央索損傷が原因であるボタンホール変形では、手術治療が第一選択です。しかし、非開放性の伸筋腱中央索皮下断裂症例では、保存治療を選択することが多いです。


今回の症例の場合、既にPIP関節の屈曲拘縮を併発しているので、まずはPIP関節の拘縮を改善する必要があります。その後に、PIP関節を伸展位に固定するスプリントを常用します。


装着期間は4週程度でOKという文献が多いですが、その程度の期間では少し不安を感じます。腱性マレットに準じて8週間ほど固定した方が安心な印象です。


しかし、今回の症例は既に拘縮をきたしていることから考えても、保存治療ではなく手術治療も検討するべきかもしれません。ボタンホール変形に対する手術法はたくさんあります。


最も有名なのはMatev法です。Matev法では、両側の側索を段違いで切離して、短い一方を中央索に移行し,長い一方を交叉して他方の側索の末梢に縫合して終末腱を延長します。


このように、非開放性のボタンホール変形は伸筋腱中央索の皮下断裂であるため、開放性のボタンホール変形と少し治療方針が異なるので注意が必要だと思います。




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単純X線検査なしで治療する恐怖

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先日の外来で、足関節を捻転した若年女性が初診されました。
では、単純X線像を撮影しましょうと言ったところ、「妊娠している可能性がある」とのことです・・・


詳細にお伺いすると、しばらく生理がきていなくて市販の妊娠検査薬は陽性だったとのことです。う~ん、これは妊娠している可能性が高そうです。


足関節は外果周囲の軽度の腫脹・圧痛および内果の圧痛を認めます。内果には腫脹はなく、ATFLやCFLの圧痛は軽度です。軸圧痛はありません。


印象としては、足関節脱臼骨折である可能性は低く、もし骨折があったとしても転位はほぼ無さそうです。一応、足をひきずりながらも歩いて受診されています。


一方、この方が妊娠していると仮定すると、最も放射線被爆が問題になる時期にさしかかろうとしています。この場面では単純X線検査を施行するか否かの判断が難しいです。


客観的にみると、きっちりプロテクターを着て撮影すれば放射線の影響は最小限に抑えることは可能であり、この撮影のために胎児が流産したり障害を持って生まれる可能性は低いです。


しかし、自然経過の場合でも流産や障害児が生まれる可能性はあります。もしも、そのような転帰をとった場合には、この女性は大きな精神的トラウマを抱えてしまうことになります。


このあたりのことを正直に説明した上で、単純X線像を施行するか否かについて話し合った結果、今回は単純X線検査を施行せずに骨折に準じてU字スプリントで治療することにしました。


印象としては骨折ではなく足関節靱帯損傷なのですが、万が一骨折があった場合を考えて3週間免荷としました。何が正解かは分かりませんが、おそらく問題なく治療できると思います。


一方、今回のように単純X線検査なしで治療するのは、暗闇の中でモノを探すような感覚に陥りました。やはり、単純X線像が無いと治療を行う上で非常に不安になります。


良く考えてみると、この状況は接骨院の置かれている状況です。彼らはこんなコワい状況でよく商売しているなと感心しました。私ならコワくて精神的にもたないです(笑)。


おそらく、コワさを知らないからできているのでしょう。そういえば先日、接骨院でマッサージ(?)を受けた直後から四肢麻痺が出現した患者さんの救急要請があったことを思い出しました。


このあたりの話は整形外科医なら誰もが知っていることだと思いますが、世間的にはあまり話題に上りません。きっと闇に葬り去られているんでしょうね・・・




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自賠責治療の注意点

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最近、交通事故の自賠責治療で、さまざまなトラブルが発生するようになってきました。医師は被害者と加害者の間に立たされ対応に苦慮することがあります。


自賠責治療では最後に後遺障害診断を行いますが、後遺障害の等級によりもらえる金額が変わってきます。このため後遺障害診断書にクレームをつけられるケースが出てくるのです。


最近では、弁護士事務所が交通事故無料相談などの広告を打っています。弁護士特約が付いている任意保険の加入者が多くなってきたため、弁護士に相談しやすくなっているのです。


交通事故処理を弁護士に依頼する患者さんが増えるにしたがって、弁護士から後遺障害診断時に記載内容についての指示が来るケースもあるようです。


後遺障害診断は医師がありのままに記載する必要があるため、他者の指示に従うことには問題があります。このため、弁護士の指示に従う必要はありません。


また、後遺障害診断時に弁護士が同席を希望することもあるようですが、これに関しては医師サイドで断ることも可能です。


また、患者さんの代理人として弁護士や認定司法書士(損害賠償額140万円まで)が登場するケースもありますが、行政書士の場合には弁護士法違反なので拒否することが可能です。


このように、任意保険の弁護士特約の普及で、自賠責治療にも変化の波が押し寄せています。ここまでは弁護士にやや批判的な内容ですが、全てに否定的になる必要はありません。


むしろ、今までは損害保険会社の力が圧倒的に強かったために、無茶な後遺障害等級認定がまかり通っていたという事実があります。


現在の自賠責治療の変化は、その揺り戻しが起こっているに過ぎないのです。今まで被害者:損害保険会社=1:9ぐらいだったのが、3:7ぐらいになってきた感覚でしょうか。


私個人の気持ちは患者(=被害者)サイドにあるので、被害者や弁護士と協議しながら無難な落としどころを探る診療を進めています。





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肉芽組織が上皮化しない時は・・・

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先日の外来で、交通事故後の殿部挫創の患者さんを診察しました。
受傷後1ヵ月以上経過してからの初診で、創がなかなか治らないという主訴でした。


創を診察すると、中央がカリフラワー状の肉芽となっており上皮化が進展していないようです。肉芽上に壊死組織はありません。むむっ!この風景はどこかで見たことがある・・・


それは、こちらの患者さんでした。肉芽が盛り上がりすぎたときは、ストロンゲストのステロイド外用剤を塗ると上皮化することが多いです。形成外科でよく使う治療法だそうです。


整形外科医的な考え方では、「上皮化しないなら、不良肉芽を切除してしまえホトトギス」という織田信長を彷彿させる荒々しい(?)治療をしてしまいがちです。



しかし、このような創では、「上皮化しないなら、ステロイド外用剤を使ってみようホトトギス」という豊臣秀吉的な治療(?)が望ましいです。


肉芽組織にストロンゲストのステロイド外用剤を塗布したところ、この患者さんでも数日で殿部のカリフラワー状肉芽組織が縮小してきました!


整形外科医としてはあまり見ない創ですが、2例目を経験することで治療の引き出しがひとつ増えました。ブログをしていると、医師としても成長しているような気がします(笑)。






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