整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

頚椎

それは本当に中心性頚髄損傷ですか?

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日常診療でよくみかける病名が「中心性頚髄損傷」です。高齢者の転倒や交通事故患者さんで両上肢のしびれの訴えがあるとつけてしまいがちな病名です。


しかし、
単に上肢しびれだけで、安易に中心性「頚髄損傷」という診断をつけることには問題があると考えています。頚髄損傷なので四肢に麻痺が存在することは必須です。


しびれがあると麻痺もあると考えがちですが、もちろんしびれと麻痺は全く別物です。しかし、整形外科医の中でも、しびれ ≒ 麻痺と連想してしまう人を散見します。


誤った認識のまま診断すると、当然治療法も誤ってしまいます。本当は中心性頚髄損傷ではない症例に対して、ステロイドパルス療法や手術療法が施行されると目も当てられません。


ステロイドパルス療法は有効性が否定されているので最近では施行されることも少なくなりましたが、脊椎専門クリニックで積極的に椎弓形成術が施行されているのを散見します。


私は専門外ではあるののの、自分が診ていた頚椎症性神経根症の患者さんが「中心性頚髄損傷」という診断で手術療法を施行されたことをみて唖然とした経験があります。


一方、交通事故患者さんでは高齢者の転倒事故とは別の意味で、安易に中心性頚髄損傷という病名を付けてしまうことで要らぬ争いの種をまいている症例をみかけます。


中心性頚髄損傷は
症状が頚椎症性神経根症と紛らわしいことがありますが、整形外科医としてしっかり診断していきたいと思います。







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自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。








                        

首下がり症候群ってどうしてますか?

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外来で時々見かける「首下がり」
果たしてこれは疾患なのか否かという議論もあると思います。


以前に首下がり症候群についてブログ記事にしました。これ以降も首下がりを診てきましたが、有効な手立ての無いまま今日に至っています。せっかくなので概要を再掲します。




『首下がり
とは、座位や立位時に首が下がってしまう症状です。1986 年にLangeらが首下がりを呈した 12 例の症例を報告したのが最初です。



首下がり症候群では随意的に頚椎を伸展して首下がりを修正できることが多いですが、その姿勢を長続きすることができずに首が下ってしまいます。



この慢性的な首下がりのために視界が障害されて歩行し辛くなります。今回の患者さんの主訴は円背でしたが、歩行状態をみると軽度の首下がりがありました。



首下がりの生じる機序として、①前頚筋の過剰緊張 ②後屈筋の筋力低下 ③その他 が考えられています。それぞれ下記の疾患が原因として挙げられます。

  1.  パーキンソン病、多系統萎縮
  2.  重症筋無力症、多発性筋炎
  3.  変形性頚椎症


首下がり症候群の治療について、一般的に次のように報告されています。


  1.  薬剤惹起を疑う場合には原因薬剤の中止(ドパミンアゴニストなど)
  2.  ボツリヌス毒素注射やアルコールや局所麻酔薬によるモーターポイントブロック治療
  3.  脳深部刺激法



実際には①に問題なければ中下位頚椎から傾斜しているタイプには頚椎カラー、頚胸椎移行部から傾斜しているタイプには鎖骨バンド固定を処方するケースが多いです。




こんな認識でやってきましたが、少し気になったので医中誌で「首下がり」検索してみました。下記のごとく10件しかヒットせず、古いものが多く有用なものはありませんでした。


う~ん、イマイチですね。
結局どう対処すればよく分かりませんでした
...





1. 2017300739

胸椎椎体骨折と首下りを合併した1例

Author:小川 哲也(黒石市国民健康保険黒石病院 整形外科), 板橋 泰斗, 陳 俊輔, 長沖 隼英, 小野 睦

Source:東北整形災害外科学会雑誌(1348-8694)60巻1号 Page192(2017.06)

論文種類:会議録/症例報告


2. 2017145507

首下りを主訴としたアレキサンダー病の1例

Author:前田 憲多郎(岡崎市民病院 脳神経内科), 加藤 隼康, 小林 洋介, 辻 裕丈, 岩井 克成, 小林 靖


3. 2009240164

パーキンソニズムに首下りを呈した2症例の理学療法の経験

Author:長岡 正範(順天堂大学 大学院リハビリテーション医学), 林 康子, 林 明人, 寺門 厚彦, 杉田 之宏, 松崎 研一郎

Source:The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine(1881-3526)46巻Suppl. Page S178(2009.05)

論文種類:会議録/症例報告


4. 1990053379

首下りを主訴とし,多彩な神経筋症状を示した一例

Author:城市 貴史(神奈川リハビリテーション病院), 野田 豊, 大橋 正洋, 他

Source:神奈川県総合リハビリテーションセンター紀要(0285-3477)15号 Page71-73(1989.01)

論文種類:原著論文/症例報告


5. 1985179881

いわゆる"首下り病"の2例

Author:金城 邦彦(四日市市立四日市病院)

Source:日本内科学会雑誌(0021-5384)74巻3号 Page382(1985.03)

論文種類:会議録/症例報告


6. 1971077048<Old 医中誌>

首下り病と思われる一症例

Author:田村純一 (青森県立中央病院), 原田征行 , 今沢義行 

Source:東北整形災害外科紀要(0040-8751)13巻1号 Page89-93(1969.12)

論文種類:原著論文


7. 1968017725<Old 医中誌>

首下り病の本態に関する疫学的考察

Author:田中領三 (岩大), 橋本勢津 , 三上敦子 

Source:東北公衆衛生学会12回抄録 Page6-7(1963.08)


8. 1967024413<Old 医中誌>

首下り症状を示したHysterie性麻痺の1例

Author:椿原道昭 (九州中央病院), 山崎晴一朗 

Source:日本内科学会雑誌(0021-5384)55巻5号 Page490(1966.08)

論文種類:会議録


9. 1962066333<Old 医中誌>

首下り病の1症例

Author:青木學而 (岩大), 中島彰 , 清水美虎 , 福江仁 , 野呂和博 , 久慈宥一 

Source:内科(0022-1961)7巻4号 Page747-750(1961.04)

論文種類:原著論文


10. 1959047602<Old 医中誌>

首下り病の1症例

Author:久慈宥一 (岩大), 齋藤昭 

Source:岩手医学雑誌(0021-3284)9巻6号 Page497(1958.03)

論文種類:会議録







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PLDD医療機関の現状に憂慮

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先日、PLDD(経皮的レーザー椎間板減圧術)の術後合併症の相談を受けました。症例自体はかなりミゼラブルで非常に気の毒な状況です。


ご存知のように、PLDDは保険診療ではありません。合併症が多発しており、全国に悪名を轟かせていた大阪府の M病院(今は存在しません)は多数の訴訟を抱えていたそうです。


今でも PLDDを施行する医療機関はあるようですが、これらの中でネットなどで「日帰り」「低侵襲」をウリにして全国から集患しているところは要注意だと思います。


今回の症例もそのような医療機関で PLDDを施行されましたが、術前に画像をみるだけで PLDD施行する当日が初診という方式でした。


数をこなすことに重点を置いているようで、まともに術前の検討が行われた形跡がありません。しかも、合併症を併発すると近隣の基幹病院へ丸投げするという荒業を行っています。


普段、あまり他の医師の診療方針についてとやかく言うことは無いのですが、さすがに医師としての倫理観の欠如が著しいため要注意の医療機関であると認識しました。


試しに Googleのシークレットモードで PLDDを検索すると、Google Adwordsの上位に表示されました...。おそらく膨大な広告費を投入して全国から集患しているのでしょう。


PLDDが医療と言えるかどうかは微妙ですが、このような営利最優先の医療機関が跋扈している PLDD界隈の状況はいかがなものかと感じました。






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ムチ打ちは不意打ちでなくても起こる

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先日、追突事故による 外傷性頚部症候群の患者さんが初診されました。外傷性頚部症候群では、不意打ちを食らった場合に筋性防御が働かずに頚椎に炎症を起こすという理解です。



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しかし、今回の方はバックミラーで後方から自動車が突っ込んで来るのをずっと見ていたそうです。このため衝突の瞬間もしっかり身構えていました。


それでもかなりの症状が残っていました。
私は今まで、バックミラーで自動車が追突するのを分かっている状況では、外傷性頚部症候群はあまり発症しないと思っていました。


今回の事故の規模は比較的大きく、乗車していた自動車は全損となりエアバッグも作動したようです。このため一般的な軽微な追突事故には該当しないかもしれません。



しかし、バックミラーで他車が衝突してくるのが見えていた患者さんは時々いますが、これらの患者さんの症状が「軽い」わけではないことを思い出しました。


不意打ちを食らったのではなく事故を予見して身構えていた場合であっても、外傷性頚部症候群は起こりうるということを改めて認識しました。






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Crowned dens syndrome を見た!

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Crowned dens syndrome(CDS)をご存知でしょうか? CDS は、頚椎歯突起周囲に発生した結晶性関節炎(偽痛風発作)です。


発熱、炎症反応の高値、頚部痛が主な症状なので、髄膜炎との鑑別診断が必要です。先日、90歳女性の CDS を経験しました。



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CT の冠状断では、上記のように軸椎歯突起後方に淡い石灰沈着をみとめました。なかなか派手な石灰沈着です。




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矢状断では歯突起を取り囲むように石灰沈着していることが分かります。血液生化学検査では炎症反応が亢進していますが、その割には全身状態が良くて重篤感はありませんでした。


項部硬直やケルニッヒ徴候は認めず、悪心・嘔吐もありません。環軸関節が炎症の主体なので、頚椎の回旋制限が強かったです。


高齢者に突然発症する後頚部痛は比較的多い印象です。CDS を疑っても比較的軽度な症状の場合には、わざわざ CTまで撮像しないことが多いです。


しかし、今回は頚椎回旋時痛が高度なので思い切って撮像してみました。トラムセットで様子をみていると、数日で症状が軽快しました。







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初学者が関節リウマチの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です

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