整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

上肢

なぜ Intrinsic plus positionが重要なのか?

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手指の骨折の治療において、関節拘縮は ADL機能障害に直結します。このため、関節拘縮を併発しないように注意しながら治療を行う必要があります。


それには、まず手指関節の解剖を理解する必要があります。MP関節の側副靭帯は、伸関節伸展時には弛緩し、屈曲時に緊張します。


一方、PIP関節では、伸展・屈曲位にかかわらず弛緩しません。関節拘縮をきたさないためには、側副靭帯が弛緩することを避ける必要があります。



55 - コピー



これらのことから、手指拘縮の予防には、MP関節・PIP関節の側副靭帯が共に緊張する「MP関節屈曲位+PIP・DIP関節は伸展位」の Intrinsic plus position となるようにします。 


単に Intrinsic plus positionを丸暗記するのではなく、どうして Intrinsic plus positionで固定するべきなのかを理解して実践することが重要ではないかと感じました。







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肘離断性骨軟骨炎に対する保存療法

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日整会誌 92:449-453 2018に、少年野球選手における肘離断性骨軟骨炎に対する保存療法というシンポジウムがありました。肘離断性骨軟骨炎(OCD)のまとめは下記です。



離断性骨軟骨炎の初期や進行期では保存療法の適応となる。初期・進行期では症状の乏しい例が多いが、たとえ無症候性でも投球を中止することが望ましい。


保存療法による修復率は初期で90%、進行期で50%程度であり、病巣修復の確認にはCTの活用が勧められる。


病巣修復が停止したと判断されるのは、小頭や外側上顆の骨端線が閉鎖し、3ヵ月以上画像所見 が変化しない場合で、これらの所見がみられるまでは病巣縮小を目指すべきである。




OCDの病期は、小学生では初期が90%以上を占めますが、中学・高校生では15%程度に過ぎません。OCDの経過は年齢と密接な関係があり、大半は小学生期に発生します。


OCDの病期と骨年齢の関係を調査すると、小頭の骨端線は初期で開存、進行期で癒合中、終末期で閉鎖にそれぞれピークがあり、小頭骨端線の状況も病期判定の参考となります。


OCD 治療の原則は、初期と進行期では保存療法、終末期では手術です。ただし、進行期で病巣修復が遅延している症例では手術、終末期でも症状の乏しい症例では保存治療です。


保存治療の実際は、投球・打撃のみならず腕立て伏せ、重量物拳上、グランド整備や用具の片づけも禁止し、ランナーコーチャーと食事・書字動作のみを許可するそうです。




注意点 1


X 線での完全修復が得られるまで保存療法は継続すべきですが、症状がなくなると患者・家族や指導者は障害が治癒したと勘違いする場合があります。


したがって、医師は現在の状態が治癒過程のどの時点にあるのかを正確に判断し、保存療法継続の必要性について説明することが求められるとのことです。


このあたりを、患者・家族・指導者に納得させることは容易ではありません。判断し説明できるか否かが治療の成否を左右すると言っても過言ではないでしょう。




注意点 2


検診で発見された無症候例に対しても投球を中止することが望ましいと考えられているそうです。無症状なのに厳しい保存治療を施行するのは難しそうですが・・・







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母指CM関節症の保存治療

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日整会誌(J. Jpn. Orthop. Assoc.) 92:476-485 201 で、母指CM関節症の診断と治療という教育研修講座がありました。新潟手の外科研究所病院院長の坪川直人先生による論文です。



母指CM関節症の治療の第1選択は、保存治療である。局所安静、消炎鎮痛剤の内服、湿布、消炎鎮痛効果のある外用薬が選択される。


また CM関節固定装具による安静治療は、CM関節固定のほかに背側脱臼の整復効果もあり、MP関節過伸展の矯正効果も期待でき有用である。


また、関節内ステロイド注射が鎮痛作用に優れているため行われている。Spaans らは母指CM関節保存治療の systematic review において、装具療法と関節内ステロイドのみが効果が期待できると報告している。


一方、関節内ステロイド注射は、関節内の石灰化、周辺皮膚の色素変性、関節症の進行などの合併症があるため注意が必要である。




母指CM関節症の手術治療はたくさんありますが、なかなか決定打となる術式はありません。その一方、保存治療に関してはSpaansの報告は傾聴に値します。


つまり、装具療法と関節内ステロイドのみが効果が期待できるのです。関節内ステロイドは、母指を牽引してCM関節裂隙を開大すると、容易に関節注射可能です。






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足部のデュピュイトラン拘縮

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先日、足底にしこりがあるとの主訴で患者さんが初診されました。
ちょうど、足底の土踏まずの部分に索状のしこりがあります。


特に痛みは無いようですが、歩行時の違和感が気になるとのことでした。触診するとあまり可動性はありません。う~ん、どこかで見たことがあるような・・・


そうだ、これは手掌でいうところのデュピュイトラン拘縮ではないのか? 念のため手掌を確認すると、軽度のデュピュイトラン拘縮を認めました!


どうやら足部に発生したデュピュイトラン拘縮のようです。恥ずかしながら、私は足部にデュピュイトラン拘縮が発生することを知りませんでした。


手掌の場合には手掌腱膜に発生しますが、足底の場合には足底腱膜に発生するようです。なるほど、デュピュイトラン拘縮=手掌という考えは誤りのようです。


ちなみに、デュピュイトラン拘縮は中年以降の男性の多く見られ、長期にわたるアルコール摂取が発症の危険因子のひとつとされています。






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遠隔医療を手の外科に応用?!

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Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
遠隔トリアージで手指外傷の救急が円滑に です。




 手指切断などの重度手指外傷の治療は緊急を要するが、搬送先の医療施設の決定に時間を要することがある。この問題を解決するため、愛知県では現場の救急隊員が患者の画像データをトリアージ担当病院に電子メールで送信、トリアージ担当医が重症度を判断して適切な医療機関のレベルを指示するInteractive teletriage system(以下、遠隔トリアージ)を導入している。
 



専門施設に患者が集中


 石井氏によると、手指切断などの重度手指外傷の救急医療は、疾患の特殊性から治療可能な医療機関が限られる上、救急隊が現場で重症度を的確に判断することが難しい。また、専門施設以外の医療機関は軽症例でも受け入れを拒否することがあるという。そのため、限られた専門施設に患者が集中して受け入れが困難となり、患者の"たらい回し"が発生することがある(今学会での別の発表によると、愛知県下で手指切断として救急受け入れ要請があった症例のうち、搬送先施設で実際に手指切断と診断されたのは68.9%、うち再接着術が施行されたのは23.1%にすぎなかった)。


 名古屋市では年間100~150例の手指外傷救急患者が発生しているが、その約半数は1回の救急要請で収容先が決定している一方、収容先決定までに5回以上の要請が行われたケースも約1割存在するという。救急要請回数が増えるほど、救急隊の現場滞在時間も長くなり、9回以上のケースでは約1時間に及んでいる。




患者の画像データを電子メールでトリアージ担当病院に送信


 そこで、限られた医療資源の有効活用の観点から、各患者に対する専門治療の必要性を判断し、患者の状態に合わせて最適な医療機関に搬送すべく、2011年に名古屋市内で遠隔トリアージを導入した。これは、次のようなシステムだ。

  1. 医療機関を手指外傷に対する専門性に基づいて5段階に分類しておく
  2. 救急隊が重症度の判定に困った場合、患者の外傷部位の画像データを電子メールでトリアージ担当病院である名古屋大学病院に送信する
  3. トリアージ担当医が重症度を判断し、適切な医療機関のレベルを指示する
  4. 救急隊は指示されたレベルの医療機関に受け入れ要請を行う  言い換えると、専門的治療を必要としない患者を一般病院に搬送することによって、専門病院の負担を軽減することが最大の眼目である。2014年には、このシステムを愛知県全域に拡大した(トリアージ担当病院は全3施設)。 




搬送時間短縮も、残る課題


 今回、石井氏は遠隔トリアージ導入前後の状況を比較することで、その有効性を評価した。その結果、患者収容要請回数は導入後に有意に減少、救急隊の現場滞在時間も平均22.3分から18.1分に有意に短縮した。


 しかし同氏は、効果は限定的と指摘。現システムの問題点として、①平日9~17時の運用だが、手指外傷の約3割はそれ以外の時間帯に発生している②救急要請はトリアージ後に救急隊が個別に行わなければならない―を挙げた。


 新たなシステムの構築も進められている。愛知県では昨年度(2017年度)にNTTデータ社が運営する救急搬送システムETISを導入したが、今年度から手指外傷患者にも適用される予定だという。新システムは、①救急隊から画像を含む患者情報を地域内の病院に一斉送信②各病院は受け入れ可能状況を入力③救急隊は受け入れ可能病院の中から搬送病院を選定―するというもの。遠隔トリアージとETISを組み合わせることで、手指外傷例の救急搬送がさらに円滑化されることが期待されるという。





名古屋大学・手の外科グループの仕事です。非常に画期的な取り組みだと感じました。ハードではなく、手の外科医と受け入れ施設を組織するソフト面の工夫であることがミソです。


これはさすがに力のある大学が旗振り役にならなければ実現しないことですね。電子メールという既存のインフラを利用しているところがいいと思いました。


後半でNTTデータ社の救急搬送システムが紹介されていますが、こちらはパッケージ化されていていかにも重そうです(笑)。


私的には、NTTデータ社のようなハードに重きを置いたシステムではなく、名古屋大学・手の外科グループのソフト面に重きを置いたシステムの方が好感を持てます。


今回の取り組みは一種の遠隔医療であり、高価なハードが無くても、高度の人的資源さえあれば、何でもできるという一例だと思います。


尚、今回の問題点で挙げられていませんが、トリアージする医師の報酬はどうなっているのでしょうか? しっかり予算を確保している体制であれば、素晴らしいと思います。








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