整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

腫瘍

上位胸椎には危険がいっぱい?!

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先日、2週間前に出現した夜間の背部痛が主訴の30歳台半ばの患者さんが初診されました。最初は内科を受診して胸部XpとCTを施行されましたが、特記する所見がありませんでした。


1週間しても痛みが続くため内科を再診されました。その時点で内科から整形外科に紹介されたのですが、胸椎の単純X線像ではpedicle signも含めて何も所見がありません。


実は私も30歳台半ばぐらいからときどき夜間の背部痛で就寝中に起きてしまうことがあります。私の場合、肩甲背神経痛なので、きっとそれなんだろうな・・・と思いました。


しかし、何故かちょっと嫌な感じがしたので、念のために胸椎MRIを施行することにしました。結果説明を受けに再診された際、その患者さんのMRIを見て驚きました。


何と、第4胸椎の椎体に派手な骨融解像を認めるではないですか!しかし、よくみると椎体前方には液体成分の貯留を認めます。軽度の炎症所見亢進もあるので感染かもしれません。


上位胸椎の再建が必要になりそうなので、市中病院の手に負える症例ではありません。あっさり基幹病院に紹介しました。初診から10日間の短い期間だけ私が診たことになります。


今回の症例を経験した教訓は、上位胸椎に関しては肩関節が邪魔になって単純X線像での診断が困難であることです。正面像でpedicle sign(-)でも全く安心できません。


特に上部の背部痛に関しては、積極的に胸椎のCTやMRIを施行してもよいのかもしれません。少なくとも私は今後そうしようと思いました。




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骨・軟部腫瘍診療のピットフォール

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日本整形外科学会誌 90: 229-236 2016の教育研修講座の「骨・軟部腫瘍の診療におけるピットフォール」を拝読しました。副題は、腫瘍が怖くなくなるために です。


今回の教育研修講座は新潟大学の生越章先生の講演で、腫瘍が怖くなくなることを目的に骨・軟部腫瘍診療におけるピットフォールを紹介されていました。


生越先生は私見と断りつつも、骨腫瘍のピットフォールは腫瘍の存在を見出せないことがある点を強調されています。主な骨腫瘍診断のピットフォールは下記のごとくです。


1. 痛みと腫瘍の部位が一致しない例がある
  • 骨盤腫瘍の膝痛・大腿部痛
  • 胸椎腫瘍の腰痛・側腹部痛
2. 単純X線像・CTでは腫瘍の存在が分からない例がある
  • 骨梁浸潤型腫瘍の存在 → 悪性リンパ腫、小細胞がん、Ewing肉腫
3. 悪性腫瘍でも血液・生化学データが正常なことも多い
4. 強力な疼痛緩和薬が腫瘍発見を遅らせる可能性がある




一方、軟部腫瘍では悪性を良性と勝手に判断してしまう点を強調されています。主な軟部腫瘍診断のピットフォールは下記のごとくです。


1. 悪性を良性と判断して、不適切手術を施行される例
  • 術前画像がないと追加広範切除の計画が困難
  • 手術による腫瘍汚染のため、追加手術は大がかりな切除になる
2. 悪性を良性と判断し、「放っておいてもよい」「心配ない」と告げられる例
  • その後、患者は医療機関をなかなか受診しない
3. 悪性腫瘍を非腫瘍性疾患と判断され、治療が遅れる例
  • 炎症や観戦・血腫などと判断されてしまう


上記の①②は、悪性軟部腫瘍を良性と勝手に判断してしまったことによって起こってしまう問題です。具体例を挙げられていて、私自身も身につまされる思いです・・・




軟部腫瘍診断のポイントは下記のごとくです。意外な項目が並んでいることに驚きます。触診だけで脂肪腫と確定診断する技能を持ち合わせていないと述べられていることは傾聴に値します。


1. 小さな軟部肉腫は多い
  • 軟部肉腫の1/4は治療時5cm以下である
  • 良性腫瘍が大きくなって悪性になるのではない
2. 柔らかい軟部肉腫も多い
  • 粘液成分の多い肉腫は、触診で脂肪腫や噴流に類似する
3. 境界明瞭な軟部肉腫も多い
4. 可動性良好な軟部肉腫も多い
5. 良性か悪性かを考えるのではなく、「腫瘍が何か」を考えるべき


上記の①~④は全て私にとってはトリビアです。そして⑤は非学の身としては難しい・・・。やはり軟部腫瘍の診断は、骨腫瘍の診断に比べてかなり難しい印象です。


最後に生越先生は、プライマリケアにあたる医師は、ここまでは自分で診断できるという分野を自分で設定し、それ以外のところは専門医に任せるというスタンスを推奨されています。




参考: 私が実践する骨軟部腫瘍診察の基本






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動脈瘤様骨嚢腫(ABC)の腫瘍切除術

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先日、踵骨にできた動脈瘤様骨嚢腫(aneurysmal bone cyst: ABC)に対する腫瘍切除術を行いました。ABCは骨病巣が動脈瘤様に膨隆する骨腫瘍類似疾患です。


嚢腫内に血液が充満し、内壁は線維性結合織によって構成され大証の血管腔を認めます。鑑別診断として骨巨細胞腫、単純性骨嚢腫、血管拡張型骨肉腫が挙げられます。


治療は手術治療で掻破・骨移植術が一般的です。ただし、術後の再発率は19~44%と高いです。大学の腫瘍班の先生にお伺いしたところ、再発防止のために下記の方法を勧められました。


  1. 物理的に内壁を掻破
  2. 液状フェノール(88%以上のもの)をツッペルにつけて内壁を2~3回こする
  3. 終了したら無水エタノールでフェノールを中和する
  4. 最後にα-TCPを充填する


単純性骨嚢腫などでは自家骨に置換されるβ-TCPを使用しますが、自家骨やβ-TCPでは高率に再発するので、α-TCPを使用するのがポイントです。


術後後療法に関しては、今回は踵骨なので3週間免荷の後に部分荷重を開始して、術後2ヵ月で全荷重まで持っていく予定です。



追記:
病理検査の結果はABCではなく骨巨細胞腫(GCT)でした。 大学の腫瘍の先生に確認したところ、下記のような対応を指示されました。

  • 再発率が高いので、2~3ヵ月に一度の頻度でXp確認が必要
  • 2年以降は再発率が低くなるので、最初の2年間はしっかりフォロー
  • もし再発すればランマーク(デノスマブ)を投与する 




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さようなら、非骨化性繊維腫!

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私の記録の中で、現在の勤務先の勤続年数は最長記録を更新中です。
一般的に医局人事で動いていると、2~3年周期で異動することが多いと思います。


卒後教育や不公平感是正という意味では、これぐらいのスパンの異動は望ましいと思います。しかし、ひとつの施設に長い間勤務していなければ分からないこともあることに気付きました。


先日、大腿骨遠位骨幹端の非骨化性繊維腫(Non-ossifying fibroma: NOF)の18歳女性を無事に「送り出し」ました。「送り出した」とは、経過観察終了にしたということです。


この患児は12歳から外来フォローを続けていました。当初は膝関節打撲で単純X線を撮影したのですが、偶然にも大腿骨遠位骨幹端にそこそこのサイズの非骨化性繊維腫を発見したのです。


通常、自分だけでこれだけ長期に渡る外来フォローを行うケースはあまり無いと思います。たいてい異動のタイミングで「もう、そろそろ終了にしよう」や後任医師に任せることになります。


しかし、自分が前任医師から託されたNOFなどの疾患は、自分が主体になって最後までフォローしている実感をイマイチ得ることができませんでした。


一方、今回のケースでは15歳を超えてから急激に骨透亮像が小さくなっていくことを確認できました。そして、遂に先日撮影した単純X線像では骨透亮像が消失したのです!


まだ小学生だった患児が大学生になる姿を見るのは、ちょっと感無量でした(笑)。もちろん、年に1回しか診察しないので、小学生の頃の顔ははっきり覚えていません。


しかし、教科書通りにきっちり二十歳前にNOFが消失する経過は、ひとつの施設で長い年月勤務しなければなかなか味わえない経験かなと思いました。




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がんとの闘いは10年生存率も重要

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週刊ダイヤモンドの2016年2月27日号で興味深い記事がありました。
がんの10年生存率を読む  長期戦か短期決戦かで生活設計を  です。




がん診療、研究を実施する国公立病院など32施設が加盟する全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)が28種類のがんの10年生存率を公表した。  


1999~2002年に診断と治療を受けた約3万5000例のデータで、これだけ大規模な情報公開はわが国では初めて。 それによると、全臓器・全ステージ(病期)の10年生存率は58.2%だった。臓器別では甲状腺がんの90.9%に続き、前立腺がん84.4%、子宮体がん83.1%、乳がん80.4%と続く。  


このところ増加傾向の大腸がんの10年生存率は69.8%、がん死因トップの肺がんはぐっと下がって33.2%、ワースト1位は膵がんの4.9%だった。  


データを利用する際は、全病期を丸めた生存率を鵜呑みにするのではなく、病期別のデータを参考にする必要がある。病期が1期の「早期」と4期の「進行・末期」とでは条件が違い過ぎるからだ。  


実際に経過途中の5年生存率を見ると、前立腺がんの場合1~3期は100%だが、4期では5年生存率でも54.5%まで下がる。  


前立腺がんは治療の選択肢が多いこともあり、他の臓器や骨への転移が深刻ではない限り「手を替え、品を替え」余命を引き延ばすことが可能だ。言い換えれば「転移」を抑える長期戦に耐える覚悟が必要だということ。  


一方、肺がんの5年生存率は、全病期を通じて39.5%。1期は77.9%と8割近いが、4期になると5.6%と衝撃的な数値が出てくる。しかも病期が進むほど治療開始1、2年目の生存率ががくっと落ちる。早期発見の重要性は言うまでもないが、短期決戦で濃厚な治療を覚悟すべきだろう。  


逆に女性の乳がんは10年生存率でも8割以上と高いが、ジワジワと低下し続けるのが特徴。一般に治癒の目安といわれる5年を過ぎても再発・転移の可能性があり、10年、20年はがんと付き合う心構えと経済計画が必要だ。  


なにせ、2人に1人ががんにかかる時代。このデータはいたずらに余命に怯えるのではなく、がん発症を織り込んだ生活設計を立てる際の参考にしたい。
                                 




知り合いから、癌についての相談があったので、全国がん(成人病)センター協議会が2016.1.20に公表した28種類の癌の10年生存率のデータを興味深く拝見していました 。


10年生存率のデータを見て「この種類のがんは、これぐらいの生存率か」と思っただけでしたが、今回の記事を拝読して私はデータを全く理解していなかったことに気付きました。


一般的に、癌の治療においては5年生存率が重要視されており、5年生存できればその後のことはあまり省みられないと思います。


しかし、前立腺癌や乳癌においては10年経過後もじわじわと生存率が低下するので、10~20年スパンの長期戦覚悟で人生設計をする必要があるようです。


私は表面的な数字しか見ていなかったのですが、患者さんの身になって考えてみると、生存率の数字から異なる風景が見えてきました。ちょっと、考え方が浅かったかなと反省しています。

 




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