私は数年前に、大腸がん検診の一環として CF を施行していただきました。ご存知のように CF の際には前日から前処置が必要で、かなり苦しい一日だったことを記憶しています。
CF 前日はほとんどトイレに入り浸り状態で、漏らしたりしないか心配で夜寝るのも不安な状況でした。。。
そして検査自体もなかなか精神的・肉体的な苦痛を味わうものであり、正直言ってそんなに再々と検査したいと思うようなものではありません。
しかし現在は食事が欧米化しているため、日本人の死因としても大腸癌は非常に大きなウエイトを占めています。
自分の身を守るためには、ある程度の頻度で CF を施行せざるを得ないと考えています。それでは一体、CF の施行期間感覚はどれくらいが妥当なのでしょうか?
お伺いした消化器内科の先生によってまちまちですが、だいたいの総意として 5年程度という先生が多い印象でした。
全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)による大腸癌ガイドラインでは、CF の結果が陰性の場合には再検査の推奨期間を10年としています。
今ではこの推奨を裏付ける明確なエビデンスは存在しませんでした。ところが今回 JAMA Intern Medで、CF の結果が陰性の場合は再検査の推奨期間が10年という結果がでました。
CF の陰性者を対象とした大規模な後ろ向きコホート研究で、10年後の大腸がん発生リスクは、検査を受けてない人の半分以下であったとの報告がありました。
この研究報告は、私にとっても非常に朗報だと感じました。CF を 5 年に1度受けていかなければならないというのは非常に憂鬱なものです。
しかし、5年毎ではなく10年毎であればまだ許容できそうな気がしたからです。ちょっと自分に甘いかもしれませんね(笑)
学術
米国がん協会(ACS)のがん統計 2019年版によると、米国のがん死亡率はピーク時の 1991年から 2016年までの 25年間で 27%も低下したそうです。
一方、人種や民族による差は縮小傾向にあるものの、社会・経済的な階層による格差は拡大しているとのことでした。
過去 20年間のがん死亡率の低下は、主に喫煙率の低下と早期診断・早期治療の進歩によるものと推定されています。
特に、肺がんは男女とも急速に死亡率が低下しており、男性では 1990年~2016年の間に48%、女性では 2002年~2016年の間に 23%の低下がみられました。
同様に、乳癌では 1989年~2016年に 40%、前立腺癌は 1993年~2016年に 51%、そして大腸癌では 1970年~2016年に 53% も死亡率が低下しました。
予防可能な癌の死亡率は社会・経済的階層による格差が進行
簡単に予防できる癌では、社会・経済的な階層による死亡率の差が顕著でした。具体的には下記のごとくです。最富裕地域に対する最貧困地域の死亡率は下記のごとくです。
- 女性の子宮頚癌による死亡率: 2倍高い
- 男性の肺がんと肝がんによる死亡率: 40%高い
- 大腸がん: 35%高い
一方、膵臓癌や卵巣癌などの予防や治療が困難な癌では、社会・経済的階層による格差は小さいか存在しなかったそうです。
このように、米国においては社会・経済的階層の格差拡大に伴って、がん死亡率も格差が拡大しているようです。おそらく、日本でも進行している可能性が高いと推察します。
このことから分かることは、公衆衛生学的な知識や検診などの予防治療を積極的にできる経済力があれば癌はある程度防げるということです。
個人レベルで国家的な大きな話はすることはできませんが、せめて自分の身に資する行動(生活習慣を改善する、検診を受ける等)をとりたいと思いました。
「経済的自由」を手に入れるために Facebookを利用した非公開のオンラインサロンに参加してみませんか?
本サロンの目標は、参加者全員に生涯途絶えることのない "複数の収入の流れ" を得るための " 学びの場 " を提供することです。
資産形成マニュアルで、医師が効率よく資産形成を実践するノウハウを公開しましたが、本サロンはそのフォローアップの場と位置付けています。
それぞれの参加者たちが得た知識や体験を共有し、集合知を形成する。集合知は、サロンのメンバーが未知の航海に旅立つ際の羅針盤となる
そのような " 学びの場 " を
- 整形外科医のための英語ペラペラ道場
- 整形外科医のブログ
がタッグを組んで運営します!!
参加希望の先生方は、こちらからお願いします
手術中の体温が低下すると創治癒不全や感染を併発しやすいと言われています。最初に報告されたのは、1996年の NEJM です。
術中に体温を正常体温に保つ群と低体温のままの群とに割り付けて調べたところ、低体温群が有意に創部の感染が多く、入院期間も有意に長くなると報告されました。
それ以降、いくつかの術中体温に関する報告がありますが、通常の麻酔→手術では中枢温で計測しても、正常体温の36~37度よりも1~2度低下することが多いそうです。
これらの報告を受けて、術中の中枢温を正常体温に維持することの重要性が麻酔科医師を中心に意識されるようになりました。
ただ、術中の中枢温を正常に保つことが、本当に創治癒不全や感染予防に有効なのか否かは、未だに論争が続いているようです。
そして、術中の中枢温を正常に保つことは意外と難しく、ベアハッガーのような温風式加温
装置を長時間使用していると低温熱傷を併発する可能性まで示唆されています。
このように術中体温を正常体温に保つ是非に対するさまざまな意見や、中枢温を正常に維持する難しさがあるため、実際に日々の手術に導入するのは難しそうです。
しかし、知識として低体温は創治癒不全や感染を併発しやすくなる可能性が高いので、日常臨床においては頭の片隅に置いておく方が良いと感じました。
医師にとって学位を取得するか否かは、比較的大きな問題です。専門医に関してはほとんどの医師が当然取得するべきと考えています。
しかし、学位取得の是非に関しては賛否両論あるのが現状です。新臨床研修制度が始まる前の大学医局支配が絶対であった時代には、ほぼ全ての医師が医局に属していました。
このため必然的に学位取得は半強制的でした。しかし時代は変わって、大学医局支配が崩れつつある現在では、若手医師にとって学位取得は必須事項ではありません。
医学博士を取得する意味は無いと考える先生も多いことでしょう。そこで、私の学位取得経験から、医学博士取得に意味があるのかを考えてみました。
研究で結果を出す過程はスタートアップに通ずる
まず私のバックグランドですが、大学院に行かずに学位を取得しました。大学院に行かなかったので、経済的に学位取得がマイナスポイントになることはありませんでした。
このため、純粋に学位を取得するためのテクニカルな部分に焦点を当てたいと思います。まず学位を取得するためには研究デザインを考える必要があります。
私が属していた研究班は構成員が多く、一人当たりでは潤沢な研究資金があったわけではないので、限られた予算内で可能な限り結果が出そうな研究デザインを検討しました。
自然科学研究の考え方では邪道なのかもしれませんが、医学研究で生計を立てるつもりはなかったので、結果が出ない研究は誰にとってもメリットはないと考えました。
こんなことを言うと各方面からお叱りを受けそうですが、場末病院勤務の泡沫医師の立場では仕方ないと思います。
限られた予算(=私の場合ゼロ円・笑)の中で最大限の結果を出すためには、結果から逆算して研究デザインを検討する必要があります。
純粋に自分の疑問点だけで研究デザインを決めてしまうと、その研究を遂行する手段や結果が 大きく振れてしまい現実的ではないからです。
無尽蔵に研究費を使える環境であれば異なるのでしょうが、私のように予算ゼロの者にとっては、いかにして現在利用できる資源を使って結果を出すかに集中することになります。
幸い、素人ながらに構築した研究デザインでそれなりの結果を出してめでたく学位を取得できたのですが、このことはスモールビジネスの構築に役立つことに最近気付きました。
スタートアップを立ち上げる際には潤沢なリソースがあることはほとんどありません。極めて限られたリソースを駆使してなんとか結果を出せるように四苦八苦します。
この過程で多くの人がギブアップするのですが、私の場合には小さいながらも苦心の末に学位を取得したという小さな成功体験がありました。この違いは大きいと思います。
学会発表はプレゼンテーション能力向上に資する
研究成果は学会で発表することになります。学会発表ではスライドやポスターがメインですが、限られた時間とスペースの中で自分の行った研究成果をアピールする必要があります。
この際に最も重要なのはプレゼンテーションの能力です。最近では良質な書籍がたくさん発刊されており、このような書籍でプレゼンテーションの手法を学べます。
学会発表準備をしている時は、プレゼンテーション能力が上がっても何の役にも立たないなと思っていました。
しかし、リアルワールドでビジネスを遂行するにあたって、意外なほど学会発表で学んだプレゼンテーションの手法が役に立つことに気付きました。
私のビジネスパートナーは比較的高学歴の人が多いのですが、医師ほどプレゼン慣れしている人は少ないです。場数を踏んでいるためか医師のプレゼン能力は他を圧倒しています。
プレゼンテーション能力があると、営業の際にも非常に役に立ちます。学会発表の意外な効用だと感じました。
英語論文は投資情報収集に資する
学会発表が無事終わると、研究成果を英語論文にする必要があります。この過程も長く苦しいですが、英語に対する苦手意識を払拭することに役立ちます。
このことは金融資産投資の際に大きな力を発揮します。一般的に良質な投資情報は英語ベースです。日本語のみではどうしてもタイミングや質の問題で不利な状況に置かれます。
しかし、英語論文を仕上げるために大量の英文を読破する過程で、英語に対するアレルギーがほぼ無くなったことに気付きました。日本語に近い感覚で読めるようになったのです。
このことは、特に海外ETFの投資タイミングを計るための資料集めの際に役立ちました。日本語ではほぼ情報の無い領域でも、問題なく投資判断できるようになったのは大きいです。
このように、一見何の意味も無いと思われる学位取得にも、リアルワールドで通用する意外な効用があることに気付かされました。
決して学位取得を推奨しているわけではないのですが、医学研究で生計を立てていこうという方ではなくても、それなりに意味のあるトレーニングの機会になると思います。
管理人監修の「勤務医の、勤務医による、勤務医のための資産形成マニュアル」です。高度な医療技術で社会貢献するためには経済的安定が不可欠! という信念のもと、管理人は多くのメンターから指導を受けました。
その指導内容をまとめたものが本マニュアルです。その指導内容をまとめたものが本マニュアルです。既に資産運用をしている方でも、勤務医のアドバンテージを生かした新しい考え方が見つかるかもしれません。
PDF版の販売で、30日間の返品保証付きです。当直1回分にも満たない価格なので、本マニュアルの手法を実践すれば、あっという間に元が取れると思います。 尚、医師以外の方のご購入はご遠慮ください。
本日の朝日新聞朝刊の1面にびっくりする記事がありました。
論文にも「海賊版サイト」です。
本来は有料の学術論文を、無料で入手できる「海賊版サイト」が作られ、国内だけで昨年、延べ約127万件の論文がダウンロードされたことが、琉球大などの解析で分かった。海賊版サイトをめぐっては、漫画などの無断掲載が問題となっているが、研究者の世界にも広がっている実態が明らかになった。
このサイトは「SCI-HUB」。カザフスタンの女性科学者が、論文の購読費が多額なことに不満を抱いて2011年に作ったとされる。
出版社のサイトで論文を読むのに必要なIDやパスワードを、正規に購読する大学などに所属する協力者から入手したとみられ、有料の論文を自由に読める状態にした。
出版社側が受けた被害の総額は明らかになっていないが、17年には中国やインド、アメリカなど世界中で延べ約1億5千万件の論文が、このサイトからダウンロードされたとみられる。
論文の海賊版サイトが出現した背景には、研究者側が出版社に支払う購読料が年々上がっており、自由に論文を読みにくくなっているという現状がある。
国立大学図書館協会によると、国立大による論文の電子版の購入費は06年度に約60億円だったのが15年度には約119億円とほぼ倍増。各大学の財政を圧迫している。
首都大学東京の栗山正光教授(図書館情報学)は「出版社による寡占状態が進み、論文の購読価格が下がりにくいことが、こうしたサイトが登場した背景にある。研究成果をどのように共有するべきか、改めて考えるべき時期に来ている」と話す。
政府の海賊版サイト対策の検討会メンバーを務める上野達弘・早稲田大教授(知的財産法)によると、国内の著作権法に相当する法律は世界各国でも整備されており、漫画や論文を無断掲載するとこれらの法律に抵触する恐れがある。ただ、「提訴すればサイトの閉鎖や損害賠償の判決が出るだろうが、実効性は未知数だ」と話す。米国では出版社が提訴し、裁判所がSCI-HUBに対して損害賠償を命じたが、サイト側は応じていないという。
作者が著作権をもつことが多い漫画と異なり、論文の場合、多くは海外の出版社が著作権を有する。国内で経済的な被害を直接受ける人が見つからないこともあり、対策の議論は進んでいない。
琉球大の大谷周平・付属図書館係長らは、海賊版サイト側が公開しているダウンロード履歴を解析。17年は国内から毎月約4万~15万件がダウンロードされた。15年ごろと比較して2・7倍に増え、医学・バイオ系の論文が多い。科学誌「ネイチャー」を出している出版社の論文が目立つという。
海賊版サイトへのアクセスがあった国内のエリアを分析したところ、東京や大阪などの大都市圏を中心に全国各地に広がっていることが分かった。
ダウンロードされた論文の8割は有料のものだが、無料の論文も約2割含まれていた。大谷さんは「検索のしやすさなど、金銭面以外の動機で利用する人もいるようだ」と話す。
試しにPubMedで「THA」を検索して、一番先頭にあった論文をSCI-HUBで検索してみました。検索窓にはDOIを入力したのですが、3分ほどかかったものの文献を閲覧できました!
これはすごい・・・。では、日本語文献ではどうなのか? 医中誌で「足根洞症候群」と検索して、最初に出てくる有料文献のDOIを入力すると・・・
こちらは30秒ほどで閲覧できました!! う~ん、無茶苦茶ですね。。。ただ、操作性が良いことも事実です。見たい文献をすぐに閲覧できるのは革命的なことです。
私が常々感じていることは、有料文献を入手するために、いくつもある文献入手サイトにいちいちクレカ情報を入力して購入する必要があることです。
お金を支払うことに問題は無いのですが、いろいろな文献入手サイトや各ジャーナルに毎回クレカ情報を入力するのは非常に手間なんですね・・・
できれば、SCI-HUBが有料化して違法な状態から脱却することを切望します。そしてワンストップで世界中の文献を入手できるようになれば最高なんだけどなぁ
整形外科を志すなら、キャンベル(Campbell's Operative Orthopaedics)は必須でしょう。ペーパー版以外にも、DVDやe-ditionもあって便利です。更にKindle版は約30% OFFで購入可能です。このような辞書的な医学書は、電子書籍と相性が良いと思います。
- 今日:
- 昨日:
- 累計: