整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

学術

輸血後感染症検査は過剰医療?

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近年、輸血後感染症の検査実施を半強制している医療機関が多いです。事の発端は厚労省からのこちらの通知です。




輸血後肝炎

本症は早ければ輸血後 2~3 ヶ月以内に、肝炎の臨床症状あるいは肝機能の異常 所見を把握できなくとも、肝炎ウイルスに感染していることが診断される場合があ る。特に供血者がウインドウ期にあることによる感染が問題となる。このような感染の有無を見るとともに、早期治療を図るため、医師が感染リスクを考慮し、感染が疑われる場合などには、別表のとおり、肝炎ウイルス関連検査等を行なう必要がある。


ヒト免疫不全ウイルス感染(HIV)

後天性免疫不全症候群(エイズ)の起因ウイルス(HIV)感染では、感染後 2~8 週で、一部の感染者では抗体の出現に先んじて一過性の感冒様症状があらわれることがあるが、多くは無症状に経過して、以後年余にわたり無症候性に経過する。 特に供血者がウインドウ期にある場合の感染が問題となる。受血者(患者)の感染 の有無を確認するために、医師が感染リスクを考慮し、感染が疑われる場合などには、輸血前にHIV抗体検査を行い、その結果が陰性の場合であれば、輸血後 2~3 ヵ月後に抗体検査を行なう必要がある。




上記の赤字部分を過剰に解釈(?)しているのか、輸血した患者さんは原則的に全例輸血後感染症の検査をすることになっている医療機関が多いです。


しかし、全例に輸血後感染症検査を実施する意味はあるのでしょうか?日本輸血・細胞治療学会は、輸血後感染症検査の現状とあり方に関する提言を公式サイトに掲載しています。


学会によると、推定輸血感染発生数はHBVで年間3件程度、HCVとHIVは輸血感染例の発生がなくなったため推定困難になっているそうです。


このような現状にもかかわらず、輸血した患者さん全てに輸血後感染症検査の実施を促している現状は、過剰医療の誹りを待逃れないのではないかと個人的には感じています。


公的に検査を半強制されている現状ではイチャモンを付けられる可能性があるのでやむを得ず実施していますが、医療的意味を鑑みると是正されて然るべきではないかと思います。






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coronal sectionの日本語訳は?

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先日、脊椎 MRIの読影レポートを読んでいると、前額断のことを冠状断と記載していることに気付きました。ちなみに冠状断のことは水平断と記載されています。



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ちょっと気になったので調べてみると、Wikipediaで上記の図を見つけました。私は coronal sectionを前額断だと思っていましたが、ここでは冠状断になっています。


しかも axial sectionではなくて transverse sectionです。なんだかこんがらがってきますね。周囲の人に確認すると、下記のように使用している整形外科医が多数派でした。

  • coronal section: 前額断
  • axial section: 冠状断
  • sagittal section: 矢状断


しかし、 coronal section=冠状断、
axial section=水平断の人も居ました。sagittal section=矢状断は万人の一致するところですが、coronal sectionは人によって違うようです。






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タイムマシーンで未来の治療に賭ける

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日整会誌93:227-229 2019に興味深い教育研修講座が掲載されていました。悪性腫瘍に罹患した女性の妊孕性温存について です。


従来、若年者が悪性腫瘍に罹患したときに、抗がん剤による細胞毒性によって性腺内の配偶子(精子、卵子)が消滅して妊孕性を消失することはやむを得ないと認識されていました。


しかし、配偶子、性腺(卵巣)の凍結融解技術の進歩により、治療前にそれらを凍結して治療後に融解することで挙児が可能となってきました。


現在までに世界で130例が報告されていますが、日本ではまだ報告されていないようです。それでも実臨床での応用に向けて日本でも研究班が発足しています。


厚労省の平成28年の鈴木班研究によると、2018年の21か国からの集計では卵巣組織凍結例の6%が骨・南部組織腫瘍患者だったそうです。


配偶子、性腺(卵巣)の凍結融解技術を応用した「がん、生殖医学」の問題点のひとつは、治療前の性腺や配偶子に原疾患の悪性細胞が混入している可能性です。


実際、移植組織由来であるか否かは判断できないものの、2014年にはEwing肉腫患者の治療後に再発して死亡した事例が報告されています。


配偶子、性腺(卵巣)の凍結は、保存組織中の微小な残存腫瘍病巣(MRD)問題がクリアされた暁には、将来の妊孕性保持への可能性を残すことになります。


タイムマシーンに乗って未来に完成するであろう治療を待つ SF小説にかぶるところがありますが、病と闘う若年患者さんの希望の星となることを切に願います。






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価格据え置きで性能向上中!

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今年の日整会でも、空き時間にメーカーの展示ブース巡りをしていました。Quotomy もブースを出していたので一石二鳥です。


メーカーが一同に会する日整会で展示ブース巡りをすると、現在整形外科領域で使用されているほとんどの医療器具やインプラントを実際に見ることができて非常に有用です。


さて、今年はニプロの UKスリムドレーンが目につきました。ドレーン先端スリット部の内外面にウロキナーゼを固定化し、血液などによるカテーテルの閉塞を防止するそうです。



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整形外科では、特に脊椎領域で有用なドレーンであると感じました。凝血しにくいドレーンは非常に魅力的だと思います。


そして、驚くべきことに償還価格は従来品と同じとのことでした。年々性能が上昇しているのに価格は据え置きとは、エンドユーザー的には素晴らしいことです。


同様のことは骨セメントでも観察されます。厳密には適応が絞られているものの、抗生剤入り骨セメントも従来品と価格はほぼ同じです。


何故か日本では感染人工関節の再置換術しか適応が無いのですが、世界的には抗生剤含有セメントがグローバルスタンダードです。


適応以外では、どう考えても抗生剤含有骨セメントを使用しない理由がありません。抗生剤含有セメントを使用しないのは医師(もしくは厚労省)の不作為とさえ思えます。


いずれにせよ、価格据え置きでどんどん製品が良くなっている現象は自動車や家電製品だけではなく、われらが医療業界でも同じようです。患者さんには朗報ですね。






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腰仙部移行椎の頻度

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腰仙部移行椎は腰仙部移行部の形態異常です。患者さんには「背骨の数が多い(少ない)ですが問題ないです!」と説明しますが、実際の頻度を調べてみました。


まず、L5が仙椎化したものと S1が腰椎化したものが存在します。1929年の神中先生の報告によれば、両者を併せた腰仙部移行椎は健常人の 16.9%に認めたようです。


移行椎の頻度に性差は認めるという報告がある一方で、性差は認めないという報告の方が多い印象です。私の実感でも性差は無さそうに感じます。


次に仙椎化と腰椎化の頻度ですが、1995年の大坪先生らの報告では L5の仙椎化:S1の腰椎化=2:3だったようです。たしかに、S1が腰椎化した第6腰椎の方が多い印象を受けます。


一方、2018年の横山先生らの報告によれば、第6腰椎は健常人の 17.4%に存在するようです。仙椎化に言及されていませんが、第6腰椎の頻度が明示されていることは貴重です。


このようにざっくり腰仙部移行椎の頻度をみた場合、おおむね健常人の15%前後に存在するようです。なるほど、ここまで多いと奇形ではなく形態異常となるのですね。





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