整形外科医のブログ

中堅の整形外科医が、日々の気付きを書き記します。投資の成功で働く必要が無くなりましたが、社会貢献のため医師を続けています。

学術

腰痛の8割は原因が分かる!

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先日、日経メディカルを読んでいると、札幌医科大学整形外科の山下教授の「危険な腰痛を見極めろ」というレポートが目に留まりました。


2001年に海外で原因が明らかではない非特異的腰痛が腰痛全体の80%を占めるという論文が発表されて以来、腰痛は原因の特定が難しいというイメージが一人歩きしました。


しかし、山下教授は「きちんと身体診察していないからではないのか?」と懐疑的な見方をしていましたが、論拠となるデータが無いために反論が難しかったとのことです。


ところが、2016年に山口大学の鈴木秀典先生が、腰痛患者320人を対象に腰痛の原因を精査した結果、約8割は原因が判明して、非特異的腰痛は2割に過ぎなかったと報告しました。



Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study.Suzuki H, Kanchiku T, Imajo Y, Yoshida Y, Nishida N, Taguchi T.PLoS One. 2016.



nが少ないものの、きっちりした報告だと感じました。診断的神経ブロックなどを日常外来で頻回に行うことはなかなか難しいですが、手間さえかければ診断はつくようです。


腰痛の原因は診断がつかないのではなく、手間さえかければ8割は診断がつくという報告は、海外論文に洗脳されていた私には新鮮な驚きでした。


追記

とぜん先生に教えてあげようと思ったら、2年前(!)にこちらで記事になっていました。さすがです。。。 脊脊ジャーナルですでに採り上げられていたんですね。






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長期禁煙で人生のやり直し可能に!

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週刊ダイヤモンド(2018.01.13号)のカラダご医見番で興味深い記事がありました。何年禁煙したら帳消しになる? です。








以下に要点を転載します。





それでは何年禁煙したら、発がんリスクが喫煙歴ゼロの人なみにリセットされるのだろうか。


東京大学と国立がん研究センターなどの研究者らは、日本で行われた八つの集団研究、約32万人分のデータを使って全がん種と喫煙関連がんの発がんリスクに対する禁煙の影響を解析。


年齢や体格指数、飲酒の習慣など、喫煙以外の発がん性に影響する条件を調整して分析した結果、男性はある時点から21年間禁煙を続けた場合、発がんリスクが全く たばこを吸わない男性なみに下がることが判明した。女性の場合はぐっと短く、禁煙後11年で発がんリスクがリセットされるようだ


ちなみにこの結果は、1日に20本以上(1箱)を 20年間吸い続けてきた「ヘビースモーカー」でもほぼ同じだという。当然のことだが、禁煙期間が長いほど発がんリスクが有意に低下することもわかった。


ニコチン依存症疑いのヘビースモーカーでも禁煙効果があるのは朗報だが、男性は「ダブル成人式」の40歳で禁煙したとして、発がんリスクが非喫煙者なみに戻るのは61歳以降、というわけ。


最初から「21年」というゴールを見てしまうと、うんざりしそうだが、がん以外にも発症リスクが下がる病気がある。慢性閉塞性肺疾患(COPD)と血管がボロボロになる血管内皮障害だ。


COPDは日本人男性の死亡原因の第8位。ただ、3位の肺炎や2位の心不全にかなりの数のCOPDが紛れていると推測される。血管内皮障害は当然、心不全や脳卒中(同4位)のリスクだ。


とどのつまり人間の死因はがん、血流の滞り、呼吸障害の三つなのだ。その全ての発症リスクが下がると思えば、「Wハタチ」の禁煙もよろしいではありませんか。





これは、驚くべき研究結果です。私は一度喫煙によってヤラレてしまった肺胞や血管内皮は永久に元に戻らないと考えていました。


しかし、リアルワールドでは男性21年・女性11年という長い年月がかかるものの、その期間を摂生すれば、喫煙が無かったものとしてリセットされるのですね!


このあたりは先週のタトゥーと違い、喫煙では人生のやり直しが利くということのようです。喫煙者にとっては朗報といえるでしょう。


手術患者さんの問診では当然のように喫煙歴を聴取しますが、その際に喫煙歴があると「ハイリスクだな」と心にトゲが引っかかります。


20年前に喫煙を止めた患者さんでも「喫煙者」のレッテルを貼っていましたが、これからは男性20年、女性10年以上完全禁煙の人は、「クリーンな人」と考えようと思います。


そして、最後の「人間の死因はがん、血流の滞り、呼吸障害の三つなのだ」には得心しました。これらの3大死因のリスク因子を排除する努力が必要のようです。




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ガイドラインに準拠してわかりやすくコンパクトにまとまった良書です。概論が最初の30ページ程度なので、これはあらかじめ通読するとよいでしょう。各論は原発性骨腫瘍、腫瘍類似疾患、転移性骨腫瘍、軟部腫瘍、骨系統疾患、代謝性骨疾患の6章に分かれています。各章とも疾患ごとに、豊富な写真でわかりやすく解説されています。







腰に最も負担のかかる姿勢は?

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相互リンクいただいている「とぜんな脊椎外科医のブログ」で興味深い記事がありました。腰にとって一番楽な姿勢と一番きつい姿勢って?腰椎椎間板にかかる荷重の変化について です。


整形外科医として腰痛や下肢痛患者さんの診察を行う場面は非常に多いです。そしてその際に、どのような姿勢で居るのが望ましいのか? とよく訊かれます。


何となく座位は良くないと言っていましたが、今回のとぜん先生のブログ記事で非常にすっきりしました。やはり、座位はあまり腰には良くないようです。





日常生活動作における種々の姿勢でL3/4、L4/5椎間板にかかる荷重を比較を示した。 直立姿勢を100とした場合、

  • 背臥位 25(立位の1/4)
  • 側臥位 75(立位の3/4、背臥位の3倍)  
  • 立位 100(基準。背臥位の4倍) 
  • 立位前屈 150(立位の1.5倍、背臥位の6倍!) 
  • 重りを持った立位前屈 220(立位の2.2倍、背臥位の8.8倍!!)  
  • 座位 140(立位の1.4倍、背臥位の5.6倍) 
  • 座位前屈 185(立位の1.85倍、背臥位の7.4倍!) 
  • 重りを持った座位前屈 275(立位の2.75倍、背臥位の11倍!!)  





意外や意外と思われませんか? 座位ではかなり椎間板に負担がかかってます!! 背臥位が腰の椎間板にかかる負担がもっとも軽い姿勢です。


そして前かがみで物を持つ動作というのは本当に腰に悪いんだということがわかります。 たとえ座っていても、、、いやむしろ座位の方が悪い!!


出典は脊椎脊髄病専門医試験集でした。






患者にとって、座位が立位よりも腰に負担がかかることが一番の驚きのようです。長時間の座位は良くないですよと言っているのですが、具体的な数字があれば説得力があります。


とぜん先生のブログは、脊椎をあまり良く分かっていない私のような関節外科医にも、非常にためになる記事が多いです。非脊椎の整形外科医も要チェックですね!







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自治医科大学准教授の星地先生の経験・知識を余すところなく収めたサブテキストです。定番と言われている教科書に記載されている内容は素直に信じてしまいがちですが、実臨床との”ズレ”を感じることがときどきあります。このような臨床家として感じる、「一体何が重要なのか」「何がわかっていないのか」「ツボは何なのか」を自らの経験に基づいて完結に述べられています。








                        

TKAにドレーンは必要なのか?!

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私はTHAに際して、ドレーンを留置していません。こちらでご報告したようにTHAでは、積極的にドレーン留置の有用性を支持する文献がなかったためです。


では、TKAではどうなのか? TKAはTHAと比べて体表に近いため、ドレナージしておいた方が血種形成予防に望ましいようなイメージを抱いています。


そこで、いつものようにPubMedで「TKA+drain」で検索してみました。ざざっとabstractを読んでみましたが、あまりドレーンの必要性を論じる文献は見当たりませんでした。


トラネキサム酸関係の論文が多く、ドレナージの必要性を論じている文献はあまりありませんでした。そんな中で目を引いたのは下記の2編です。




A prospective randomized study of wound drainage versus non-drainage in primary total hip or knee arthroplasty
Rev Chir Orthop Reparatrice Appar Mot. 2001 Feb 1;87(1):29-39.

CONCLUSION:

Following primary hip or knee arthroplasty, the use of wound drainage did not lead to increased blood loss, and non-drainagedid not lead to significant wound healing problems but did not reduce blood loss and transfusion requirements. It was even associated, following TKR, with greater blood loss and transfusion. Such data may therefore be used to support drainage as well as non-drainagefollowing THR or TKR. Avoiding drainage may be interesting in terms of cost, but the benefit is marginal; it also eliminates one possible source of retrograde wound infection. Systematic wound drainage following THR or TKR is essentially a tradition. This study shows that it can safely be dispensed with in a number of cases.




Evaluation of outcomes of suction drainage in patients with haemophilic arthropathy undergoing total knee arthroplasty.
Mortazavi SMJ, Firoozabadi MA, Najafi A, Mansouri P.

Haemophilia. 2017 Jul;23(4):e310-e315. doi: 10.1111/hae.13224. Epub 2017 May 24.

CONCLUSION:

We can conclude that there is no rationale for the use of drain after primary TKA.





う~ん、真っ向から対立する意見ですが、危惧されるような感染・術後疼痛・膝関節可動域制限の明らかな増加は報告されていないようです。


おそらくTKAにおいても、ドレーンを留置しないデメリットはあまり無さそう印象です。ただ、THAと比べて、導入に少し勇気が必要そうです。どうしようかな。。。






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初学者がTKAの治療体系を俯瞰するにあたり、最もお勧めの書籍です






整形外科的なブタの話題

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先日、日整会誌をパラパラ読んでいると、教育研修講座で自治医大の先生による「ブタ」の話題がありました。日整会誌にブタの話題? 


読み進めると、ブタの実験動物としての有用性を説明されていました。興味が湧いたので実験動物としてのブタを調べてみました。


まず実験動物としては下記3種類が代表格です。日本ではイヌ、米国では僅差ですがサル、EUではブタが一番多く選択されています。

  1.  サル
  2.  イヌ 
  3.  ブタ



一般的に食用にされているブタは三元雑種といって、ヨークッシャー、ランドレース等の3種類の豚をかけあわせてブタです。これらのブタの特徴は、極めて早く成長することです。


食用ブタは家畜として供給システムが確立されていて1頭数万円程度と安価なので、内視鏡手術等の技術トレーニングでは、30kgサ イズの生後まもないブタが使われています。



一方、100kgを 越える食用ブタでは管理が難しいので、成長しても100kgを超えない「ミニブタ」というブタが、実験研究に使用されています。


ミニブタは、食用ブタのように大きくなりません。肉がたくさん取れないので食用されず、実験用にしか飼育されないので、1頭20万円前後と生産コストが高くつきます。


マウスではES細胞を使ってノックアウト・マウスを作成されていますが、最近ではノックアウト・ブタも作成できるようになりました。


遺伝子的にはブタはヒトから遠く、むしろマウスの方がヒトに近いそうです。一方、解剖学的、生理学的にはヒトに近いです。


臨床で用いるためには、解剖学的、生理学的に近い方が有利です。このため、最近ではブタに注目が集まっているそうです。


そういえば、関節鏡のトレーニングは、ブタが使用されることが多いことに気付きました。なるほど、私たちもブタの御世話になっているんですね。







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