整形外科医のブログ

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診療報酬

湿布のオーダリングで兵糧攻め?!

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最近では、オーダリングシステムを導入している医療機関が大半だと思います。各医療機関で”クセ”がありますが、特に外用剤の処方のときに問題が発生することが多い気がします。


従前からその傾向がありましたが、2016年4月から始まった平成28年診療報酬改定で拍車がかかりました。


厚労省の意図は明白で、保険診療から湿布等の外用剤を外したいようです。その過渡期として、現在のような訳のわからない縛りを設けているのだと思います。


医療関係者は、厚労省の意図を当然理解しているため、外用剤の平成28年診療報酬改定に対応したオーダリングシステムの変更を行なうつもりが無いのでしょう。


このため、各医療機関で外用剤のオーダリングシステムが奇怪な変貌を遂げています。いずれも従来のオーダリングシステムに、小手先だけの変更で対応しているからです。


これ自体は仕方ないことですが、日本語の体を成していないオーダリングシステムがあるので苦労します。その医療機関の職員も、何故そのような表記なのか理解していません。


とにかく、日本語の意味を無視してその医療機関に準じたオーダリングを習得するのは、特に外用剤においてはなかなかハードルが高いです。


このため、最近の私は可能なかぎり外用剤(湿布)を処方しなくなりました。患者さんには、(ロコアテープ以外の)湿布は効果ありませんから、と説明しています。


まさに厚労省の思うつぼですね(笑)





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初学者が整形外科の外来や救急業務を遂行するにあたり、最もお勧めの書籍です


    



オーソライズドジェネリックって凄い!

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オーソライズドジェネリック(AG)をご存知でしょうか? 先発メーカーから許諾を得て製造した、原薬、添加物および製法等が、先発医薬品と同一のジェネリック医薬品です。


一般的なジェネリック医薬品は、大きな問題を抱えています。有効成分は先発医薬品と同じですが、原薬、添加物・製法等が異なるからです。


このため、ジェネリック医薬品の薬物動態は、先発医薬品と似て非なる場合が多く、必然的に臨床における薬効も先発医薬品と異なります。


この点については、公的に誰も指摘しないことですし、カウンター越しにしか患者さんと接することのない調剤薬局の薬剤師さんにも、ピンとこないかもしれません。


しかし、臨床の現場に身を置く方の多くは、先発医薬品とジェネリック医薬品の差異を感じていると思います。それも悪い方に違うことが多い・・・


正直に言って、家族には絶対に処方したくないジェネリック医薬品ですが、オーソライズドジェネリックの存在を知って考え方を改めました。これなら質も担保されていそうです。




666 - コピー



上記の表は、第一三共エスファ株式会社のホームページから転載しました。う~ん、これなら何の不安もなく処方することができそうです。


オーソライズドジェネリックでは製造を先発メーカーが行い、販売をジェネリックメーカーが行います。ほとんどの場合、製造元が先発メーカーなので安心感が桁違いですね。


「 ジェネリック医薬品 = 安かろう悪かろう 」というイメージでしたが、「 オーソライズドジェネリック医薬品 = 安くて良い 」と認識しました。


残念ながら、2017年6月時点での整形外科関係のオーソライズドジェネリック医薬品は、ゾメタとロイコボリンのみのようです。鎮痛剤でも、AG医薬品がでてくればいいですね。







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一般的で使用頻度の高い、鎮痛薬・睡眠剤・感冒薬・胃薬・止痢薬・去痰薬・便秘薬等の薬剤が、全13章にわたって系統立てて書かれています。それぞれの章の最初に、薬剤の分類図が記載されています。各系統間の薬剤の使い分けも平易な文章で書かれており実践的な書籍です。









姉妹本に『類似薬の使い分け』があります。こちらは全15章からなり、降圧剤、抗不整脈薬、狭心症治療薬、脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬、消化性潰瘍治療薬、鎮咳薬、皮膚科疾患治療薬、抗菌薬などが1章ずつ割り当てられています。








やはり怖い! 40年後の日本

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Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
老人ホームの朝食がランチパック?! 隠岐島は日本の50年先を体感している です。




 「少子高齢化」という言葉の本当の意味を理解していますか? 日常生活で実感していますか? 読んで字のごとく、「子供が少なくて高齢化率が上がる」ということです。子供が少なくても、老人が増えても、将来のことは別として、とりあえずそれ自体は構わないのです。でも、隠岐の西ノ島で実際に目の当たりにする少子高齢化の実態は、「生産年齢人口の激減」なのです。働く人がいないんです。医療職のように資格が必要な職種ならまだしも、病院や老人ホームの事務、厨房職員が足りません。ついに当地の老人ホームは厨房職員が集まらず早出の職員が確保できないため、週に何回か朝ごはんがランチパック®と牛乳になりました。民間の保育園は保母さんが足りなくて、病後児保育をやめてしまいました。


 へき地だから介護施設だからと憐れんだり、笑ったりするかもしれませんが、これが高齢化率43%の現実です。おそらく、地続きのへき地であれば、食事サービスを外注して近くの町からデリバリーをしてもらうことが可能かもしれません。本土であれば集約化をしたり、隣の町と共同運用したりといろいろと工夫できるかもしれません。離島ではそういった対応もままならないのです。




高齢化が峠を越え、特養には空きも

 2015年の日本の高齢化率26.7%。2060年が39.9%と予測されています。ですから、西ノ島は日本の50年先を行っています。年金などの問題も大きいのですが、実際社会を支える年代の人口が足りなくなることが大きな課題です。


 一方で、信じられないかもしれませんが、50床の特別養護老人ホーム(以下特養)は欠員2名の状態です。要介護1、2の方が特養の入所対象から外れて、つまり要介護3以上が特養の入所対象となってから、もう既に入る人がいなくなっています。今日、対象者がいれば、すぐに入れちゃうんです。当地では後期高齢者が大幅に増える時期は既に過ぎてしまったのです。当然、病院や老人ホームなどの将来の施設整備は要介護人口の推移を考えながら計画する必要がありますが、現在のキャパで十分なのです。


 急にこのような状況になったわけではありません。僕らが来たころには西ノ島は3,800人、高齢化率38%だったのが19年後に2割減の3,000人、高齢化率43%の町になりました。3つあった小学校が1つになり、耐震の問題があり立て直しを契機に小学校と中学校が同じ敷地内の建物になっています。それでも教育基本法が国民の教育を受ける権利を保障して、小さな島でも学校の先生はきちんと派遣されてきます。今まで医療や介護には医療基本法、介護基本法といったものはなく、どこまでの医療を、どこまでの介護を、誰が確保して、保障するのかといったことは明確にされていませんでした。頑張っている病院には医療者が集まり、いい医療を提供できる。頑張ってない、というか普通にしているへき地の医療機関は常に医者不足、看護師不足で収益も上がらず、医療機器の更新もままならない、といったことになっています。


 遅ればせながら地域包括ケア、地域医療構想を県が主導して二次医療圏単位で役割分担や在宅を支える仕組みを計画することになりました。今、将来を見据えて役割分担、連携をベースとした仕組みをつくらないといけません。ただし、医療はある程度集約化が必要です。一方、介護は生活ベースですから、小学校区単位などの地域をベースとした仕組みをつくらねばなりません。




今はどうにかなっているが...

 「働く人がいない」をどうするか。高齢者が働くか、今まで働いていない女性が働くか、外から人を入れるか、この3つしかないのではないかと思います。もちろん仕事や作業の集約化や移転が可能な分野は、ICT(情報通信技術)や人工知能、海外移転などで可能な部分もあるでしょう。ところが医療、介護といった人そのものが相手の仕事ではそれだけで解決することは困難です。


 西ノ島では60歳で定年した方も、あるいは本土で働いて定年を契機に戻られた方も、シルバーアルカディア計画によりIターンで来られた方も、ちょこっとずつ仕事をしています。年金をもらいながら、老人ホームの送り迎えの運転手や、配食サービスのデリバリーなど、ちょっとした仕事をしています。本人たちも島にやってきて島での役割を担うことができて、やりがいや活力につながっているようです。小さな島は助け合いで成り立っていますから、区長や民生委員、老人クラブや婦人会なども重要な役割を担っています。


 育児中の女性が働くためには子供のケアの体制が必要です。さすがに待機児童はいませんが、学童保育や病児病後児保育の体制が必要です。病院は女性の多い職場で、当院でもIターン・Uターンの女性スタッフが頑張ってくれています。当然子供の病気のときの体制の問題があるので、自分たちの経験からも必要を感じ、保育園が休止した病後児保育をうちの病院で引き受けることにしました。病院のための、ではなくて、西ノ島の病児病後児保育の委託を受ける形をとっていて、補助金も充実しており、安定的に運営できています。


 人口6,000人の島前地域で、44床の病院を担う医療職が全て地元で賄えるかというと、厳しい。この10年、自分たちの行っている医療を全国に向かって積極的に発信することで、興味を覚えた若き医療者が毎年100名以上見学に来てくれています。その結果、当院への就職を決めてくれる若者が年間数名ずついます。おかげでなんとか病院の維持運営を行うことができています。私たちの病院はこの方法論で今のところなんとかなっていますが、日本全体で考えたときには海外から人を入れるということになりますね。


 いずれにしても日本全体で少子高齢化が進むことは現実で、逃れようのない事実です。その先にどういう生活が待っているのかを、覚悟を含めて想像する必要がありますよね。 





う~ん、非常に興味深いというよりも、コワい記事です。僻地医療に携わる医師は、同様のことを感じることが多いようです。以前、こちらで私の友人の話をご紹介しました。


2017年現在でも、既にそのような「高齢者人口まで減少する社会」 が多数存在しています。私の友人が開業している地域もそうですし、隠岐諸島もそのような地域に該当します。


働き手の減少で、社会サービスが維持できない地域が出現していることに衝撃を受けます。特養がガラガラというのもすごいですが、社会サービス維持不可はそれ以上に衝撃的です。


今回は2060年が話題ですが、2040年以降は総人口だけでなく高齢者人口まで減少し始めます。本当の修羅場は2040年からで、2060年には焼野原となって問題解決(?)しているはずです。


事の重大さは、国家レベルでも認識されており、先日は70歳までを「ほぼ現役世代」とし、この年齢まで働ける社会にすべきだという提言の骨子案がまとめられました。


もうそろそろリタイアかなと思っている私からすると信じられない状況ですが、国家レベルでは高齢者も動員しなければ社会が成り立たない社会になることが確定しています。


そして、高齢化社会は高齢者が増えるから医師は安泰だと思っているお気楽な人でも、高齢化社会の極期以降は高齢者さえも居なくなっていくことを認識しておくべきだと思います。


あと20年もすれば、日本という国全体がこの大きな問題と向き合わなければいけません。20年後といえば、現在30歳の医師はまだ50歳です。おそらく余裕で現役でしょう。


その時の医師を取り巻く状況を想像すると、うすら寒いものがあります。そして、このことは確実に発生する近未来でもあるのです。





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「費用効果」という新しい評価軸

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Medical Tribuneで興味深い記事がありました。
外科系診療報酬にも"費用効果"導入 です。




 外科系学会社会保険委員会連合(外保連)は、1年3カ月後に控えた次回(2018年度)の診療報酬改定に向けて、準備を進めている。東京都で開かれた外保連の記者懇談会において、高額医療材料・医療機器については、費用効果を新たな評価軸として考えていく方針が明らかにされた。


人件費、材料費以外の部分を費用効果で評価  

 外保連会長で埼玉県立小児医療センター病院長の岩中督氏は「近年、高額な薬剤について医療費抑制の面から議論されるようになったが、外科技術の中にもさまざまな高額医療材料・医療機器を使うものがある。外保連では、医療費抑制はもちろん、費用効果の面からも外科技術の見直しを進めている」と述べた。

 外保連手術委員会委員長で聖マリアンナ医科大学小児外科病院教授の川瀬弘一氏は、2013年以降の外保連における費用効果に関する動向を説明。従来は人件費と医療材料費を評価軸としてきたが、これだけでは評価が十分ではないため「手術の新しい評価軸」を作成し、「外保連試案2016:外保連手術試案第8.3版」では5つの評価軸を設けた(関連記事)。

 5つの評価軸のうち"費用効果"について、同試案ではエビデンスがあるものを「該当する手術」とした。具体的には斜視手術(前転法、後転法など6種)、眼筋移動術、水晶体再建術(眼内レンズ挿入)、光線力学腫瘍破壊術、スリーブ状胃切除術(腹腔鏡下)、重症肥満に対する胃バイパス術(腹腔鏡下)などで、人件費、材料費以外にも費用がかかる術式としての評価を求め、前回の改定の際にはそのうち30%ほどが若干増点になったという。


"手術短縮=安くなる"ではない

 外保連手術委員会では「外保連試案2018:外保連手術試案第9.1版」を見据え、技術評価の適正化のため手術に関する実態調査を4年ぶりに行った。昨年(2016年)10月の1カ月間に日本外科学会の指定・関連施設、加盟学会の専門施設を対象に3,000以上の術式について手術時間のデータを収集し、手術時間を修正した。

 その結果、手術時間が短くなる術式は167術式(うち手術時間が半分以下に短縮される術式は13術式)、長くなる術式は271術式であった。川瀬氏は「前回(2016年度)の診療報酬改定の際には、手術時間が半分以下に短縮された術式が減点されたため、13術式については様子を見ている。これらのデータは、手術試案第9.1版に反映させるつもりだ」と述べた。

 現在では、高額な医療機器や多額の設備投資を要する手術もあるが、同氏は「手術試案では、原則的に人件費と医療材料を評価軸とすることに変わりはないが、高額なものについては、新しい評価軸である"費用効果"で対応していくことになると考えている」と述べた。実態調査の結果、手術時間が短縮となった手術について、同氏は「"短縮=安くなる"ではないことを外保連手術委員会として発信していきたい」と強調した。


ロボット支援手術:現状では"赤字覚悟"での施行

 日本泌尿器科学会からは、日本医科大学大学院泌尿器科学教授の近藤幸尋氏がロボット支援腎部分切除術について報告した。小径腎がん治療では腎部分切除が推奨されており、以前は開腹手術が一般的だった腎部分切除は、現在は腹腔鏡下ロボット支援手術が一般的である。昨年、ロボット支援手術(da Vinciサージカルシステム)も保険収載された。

 ロボット手術と腹腔鏡手術の比較では、手術時間、出血量、入院期間、合併症などは同等だが、温阻血時間はロボット手術で短い。腎機能温存、がんの根治性、合併症の軽減もロボット手術の方が圧倒的に優位である。

 わが国におけるロボット腎部分切除術は、保険収載を機に昨年は年間1,670件に増加。今後、ロボット腎部分切除術の件数はさらに増加すると推定されている。しかし、ロボット支援腎部分切除術の実診療経費(外保連試案の実態調査)と診療報酬請求額の比較では、外保連試案の約124万円に対して診療報酬額は約70万円と50万円ほどの赤字になる結果であった。

 なぜ、50万円もの赤字になるのかについて、年間施術件数を130例として考えてみる。da Vinciの場合、最も大きい経費が約3億円の本体価格と保守料(年間約1,400万円)である。さらに消耗品も高額で、1例当たり22万円ほどかかる。導入後の5年間で、本体と消耗品のみ(人件費などの加算なし)で約5億4,000万円かかるが、130例/年の診療報酬額は5年間で5億7,000万円となり、ほぼ同額である。

 今後、有用な術式として普及すると考えられるロボット支援腎部分切除術だが、現在は赤字覚悟で施行しなければならない。同氏は「さらなる普及に当たって、泌尿器科としては保険診療点数の改定を強く望む」と述べた。

 外保連では医療機器本体の価格を取り込んで試案点数を作成しているわけではないため、高額医療機器や高額医療設備を使用する医療技術に対して、今後どのように厚生労働省と意見交換を行っていくかについては、次回の診療報酬改定の際に大きな話題になると思われる。


ステントグラフト:費用効果は十分

 日本血管外科学会からは、川崎医科大学心臓血管外科学教授の種本和雄氏が弓部大動脈瘤治療に対するカワスミNajuta胸部ステントグラフトシステムの費用効果について報告した。同システムは他のシステムに比べて高額であることから、厚労省において検討中で、外保連でも検討することになった。

 弓部大動脈は、頭部や上肢に通じる3本の血管(弓部分枝)が分枝しており、特に頸動脈は3分以上血流が止まると患者の予後およびQOLに関連する重大な問題が生じるため、頭部に通じる血流を止めることができないというのが、弓部大動脈瘤治療の特殊な部分である。

 主な弓部大動脈瘤治療は①開胸での動脈瘤切除、人工血管置換術②血管内治療(ステントグラフト内挿術)−の2種類である。人工血管置換術は胸骨正中切開または左開胸で行う。手術創は非常に大きく、人工血管の置換には複雑な手技が必要となるが、長期再手術回避率は非常に高い(5年で100%、8年で83.3%)。

 カワスミNajuta胸部ステントグラフトシステムは、弓部分枝に対応するフェネストレーション(開窓)を有し、患者に合わせてセミカスタムメイドで使用できることが特徴。鼠径部からカテーテルで導入して透視下で展開、内部のガイドワイヤなどを抜去して完了となる。開窓が弓部分枝と合致し、血流を保ちつつ大動脈瘤への血流だけを止めることができる。

 同システムによる施術症例は、発売(2013年)から年間200例前後で推移している。同ステントグラフト留置後の追加治療回避率は、開胸手術に比べて若干低いものの良好な成績である。費用効果の面から同システムと開胸手術を比較すると、材料費は同システムの方が高いが(335.8万円対149.5万円)、入院日数(14.6日対40.1日)、集中治療室(ICU)滞在日数(2.3日対4.4日)、手術技術料(59.5万円対165万円)などは同システムが優位で、総入院費は497万円対630万円となり、同システムの方が有意に少ない。

 同氏は「動脈瘤の部位によっては開胸手術しか行えない場合もあるが、症例を選べば同システムの費用効果は十分に高い」と結論。「開胸術とステント術は点数が同じだが、同システムはより高度の技術を要し開胸とほぼ同等の効果があり、費用が少なく入院期間も短いことから、今後はより高い評価をしてもらう方向で理論的な準備をすることを考えている」と述べた。


経皮的内視鏡下椎間板摘出術:高コストだが日帰り可能などのメリット

 日本整形外科学会からは、品川志匠会病院(東京都)副院長の平泉裕氏が経皮的内視鏡下椎間板摘出術(PED)について報告した。従来のオープンによる椎間板ヘルニア切除術(Love法)に加え、内視鏡下椎間板摘出術(MED法)は10年以上前から日本でも普及している。脊椎の中にある脊髄神経は骨に囲まれているため、通常は椎弓を切除した後にその中のヘルニアを摘出することになる。

 しかし、PEDでは骨と骨の隙間(椎弓間孔または椎間孔)にマイクロ内視鏡を挿入して治療を行うため、骨を削る必要がなく、脂肪組織の切除も必要ない。手術は局所麻酔下で行われ、放射線透視下でミリ単位で角度と距離を決めてカニューレを挿入する。通常の手術が困難な肥満の患者に対してもスムーズな手術が可能。術創はLove法の約5cm、MED法の約2cmに対しPEDでは5mm程度で、縫合もひと針で済む。術後の傷の痛みも少ない。

 PEDの初期導入費用は、スコープ170万円に加え光学系のユニットは100万円を超えるものも多く、全てそろえると定価(消費税込み)で1,749万6,756円。2014年4月からの2年間で、同院における消耗材料や破損によるランニングコストは1,063万5,191円であった。PEDで使用する機器は細くて長いものが多く、壊れやすいためランニングコストがかかることが難点だという。

 現在、診療報酬点数における内視鏡下椎間板摘出(切除)術は1例当たり30万3,900円であるが、実際の手術では材料費、人件費などを合わせた費用は約48万円で、約18万円の赤字になる。減価償却費などを加えるとさらに赤字がかさみ、1例当たり40万円以上の赤字となる。

 PEDは費用がかかる手術ではあるが、低侵襲性のメリットは非常に大きく、神経根癒着の防止に有効で靭帯、脂肪、血管など周辺組織も温存できる。患者は術後すぐに歩行が可能で、手術当日または翌日に退院できる。術後の疼痛抑制や職場復帰に関しても良好な施術といえる。また、合併症も少ない。入院期間はLove法の約24日、MED法の約8.2日に対しPEDでは手術当日、翌日に退院が可能なため、入院費削減に大きなメリットがある。



 今回紹介された3つの手技は、いずれも初期投資が現在の外保連試案では十分に評価できておらず、手術時間の短縮により手術費用が減点されてしまう。外保連では、これらを費用効果など新たな評価軸を用いることで、適正な評価につなげることを考えていかなければならないとしている。 





う~ん、非常に興味深い記事です。外保連は、手術報酬に関する外保連試案(手術試案)において、高額な手術に関しては「費用効果」という新しい評価軸で対応すると述べました。


この新しい評価軸は、日本の医療財政と医療技術発展の双方に資する、非常に有意義な方針だと思います。実現すれば、高度医療を実践する医療機関の福音になりそうですね。


実際に、上の例で挙げられた腎部分切除術のロボット支援手術(da Vinciサージカルシステム)では、1件あたり50万円ほどの赤字になる結果だそうです。


年間施術件数を130例の場合、導入後の5年間は「人件費を除外した医療機器費用=診療報酬額」という驚くべき状況です。つまり、全員タダ働きを強いられているのと同然です。


また、整形外科関連の経皮的内視鏡下椎間板摘出術(PED)でも、1件あたり40万円ほどの赤字となっています。これでは何のために手術をしているのか分からない状況ですね。


これらの先進手術の医療機器費用を、正当に評価した診療報酬に改訂しても、トータルで見た場合には医療費の削減効果があるようです。


そうであれば、手術試案に「費用効果」という新しい評価軸を導入しない手はありません。医療機関の善意に頼る医療制度では、継続性は得られません。


高度な医療技術に対して相応の対価を準備することが、日本の医療財政と医療技術発展に資する大きなポイントだと思います。





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エンゲル係数上昇を真摯に受け止める

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先日の朝日新聞デジタルで興味深い記事がありました。エンゲル係数、29年ぶり高水準 食生活の変化が影響か です。




消費支出のうち食費が占める割合を示す「エンゲル係数」が急伸している。総務省の家計調査によると、2016年(2人以上世帯)は25・8%と前年から0・8ポイント上昇し、29年ぶりの高水準になった。かつて学校で、低下することが「豊かさを測る尺度の一つ」と教わった係数がなぜ今、上昇しているのか。  


東京都江戸川区のスーパー「いなげや」の総菜売り場で、近所の女性(74)が和洋とりどりのおかずの品定めをしていた。  


「夫の介護で疲れているときはお総菜にしています。手作りするのと半々ぐらい」。女性は要介護2の夫(73)と二人暮らし。介護費がかさみ、年金だけでは足りず月10万円ほど貯金を取り崩して生活する。それでも「食費はかかるけど、そうも言っていられない」。  


「時間がなくて、ついついお世話になっています」と話すのは会社員の女性(44)。夫と共働きしながら2人の子育て中。「割高だけど、時間を買うと思って週に3回ぐらいは買っています」  


高齢化や共働き世帯が増える中、家計の「食」の中身は、かつてと様変わりしている。中でも総菜など「調理食品」が消費支出に占める割合は16年に3・4%と、30年前(1・8%)の倍近くに増加。外食や、ペットボトルで買うことも増えた飲料などが伸びているのも特徴だ。  


経済成長とともに下降の一途をたどってきたエンゲル係数は、05年を境に上昇傾向に転換した。総務省が14~16年の上昇幅1・8ポイント分について分析した結果、その半分の0・9ポイントを占めたのが食品価格の上昇。円安で輸入食品の価格が上がっているのに加え、中国など世界的な食料需要の高まりなどが背景にある。  そこに、調理食品や外食の増加などライフスタイルの変化(0・2ポイント)や、将来に備えた節約志向などで消費支出そのものが減った影響(0・7ポイント)が加わった。  


「生活にゆとりのないばあい、他の生活費は減らせても、食料費だけは減らすことが難しいので、一般的には、エンゲル係数が大きくなる」  


30年前の中学「公民」の教科書でこう説明されていたエンゲル係数だが、最近の上昇は貧困の予兆なのか。  


岐阜大の大藪千穂教授は「かつてと違い、高齢化や為替変動、食文化の変化など様々な要因が全部混ざってエンゲル係数が上がっており、『上昇したから貧困』と直結はできなくなっている」と指摘。一方で、「特に低所得者層にとっては今でも生活の大変さを表す指標の一つとして重要な意味を持ち、中身を分析して影響を考えていく必要がある」と話す。 





エンゲル係数が上昇している・・・。あまり良いニュースではありませんね。ご存知のように、エンゲル係数とは家計の消費支出に占める飲食費の割合のことです。


20%台前半の他の先進諸国と比較して、日本のエンゲル係数はやや高めです。しかし、エンゲル係数は、価格体系や生活慣習の異なる社会集団の比較には必ずしも役立ちません。


日本のエンゲル係数の高さが、単純に他の先進諸国よりも生活水準が低い証拠にはならないのです。しかし、時系列でのエンゲル係数の上昇は由々しき問題です。


記事の最後で、識者の方が高齢化・為替変動・食文化の変化などの様々な要因が混ざってエンゲル係数が上昇しているため、単純に貧困化しているとは言えないとコメントされています。


しかし、現在の為替変動は、過去30年の中で決して過度の円安ではありません。また、食文化もこの30年で変化したということは無いと思います。


やはり、エンゲル係数上昇の原因は、高齢化およびこれに付随した貧困化だと考えます。そして、この現象は、医療業界にも深刻な影響を及ぼします。


大学病院や大規模公的病院のような基幹病院においては、 医療費支払いに困らない患者層(裕福な世帯や生活保護世帯)が多いので、あまり目立たないと思います。


しかし、一般世帯の懐具合を肌で感じる場末病院においては、貧困化は切実な現実として治療方針の選択にも暗い影を投げかけています。


私は治療方針を決定する際には、必ず患者さんと懐具合を相談しながら一緒に考えるようにしています。特に、初診の際には思わぬ出費になりがちなので注意が必要です。


初診時の医療費の高さで「ガツン」 とやられてしまい、その後の治療が続かないようでは、お互い不幸になりますから・・・





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