私は時間のあるときに日本整形外科医学会雑誌をナナメ読みしています。
場末の勤務医なので、何もしていないとバカになってしまう可能性が高いからです(笑)。


今回の日整会誌(Vol.89 No.10 October 2015)では、第47回日本整形外科学会骨・軟部腫瘍学術集会の「骨転移治療戦略とがんのリハビリテーション」のシンポジウムを特集していました。


このシンポジウムでは「キャンサーボード」というフレーズが頻用されています。キャンサーボードとは何ぞや? 私は癌治療に関わることがほとんど無いので初めて見る言葉です。


キャンサーボードとは、英語のcancer board(=がんの評議委員会)という意味から、広い意味でとらえれば「がん医療に関する問題に対応するための院内の組織」となるそうです。


厚生労働省が、がん診療連携拠点病院の指定要件として「より適切ながん医療を提供できるよう、キャンサーボードを設置し定期的に開催すること」としたことで重要視されるようになりました。


たとえば、東京大学では各診療科の医師、看護部、薬剤部、外来化学療法部、放射線部、病理部、検査部、緩和ケア診療部、がん相談支援センター担当者などさまざまな職種が集まります。


そして、キャンサーボードでは一般的に下記のケースについて検討することが多いそうです。

① 原発不明がん
② 胚細胞腫瘍(卵子や精子になる細胞から発生した腫瘍。乳児・小児で見つかることが多い)
③ 心臓疾患、高齢者の認知症など合併症がある、あるいは複雑な病態を持っている
④ 重複がん(1人で複数の臓器からがんが発生する)
⑤ 病理医が診ても診断の確定が難しい


キャンサーボード設置によって、従来の医師の視点からの治療のみではなく、多職種ががん医療を話し合う機会を持つことによって、患者さんの希望をより反映できるようになるそうです。


整形外科医のキャンサーボードへの関わり方は、骨転移患者の骨折や麻痺のリスクを評価して、リスク軽減の対策と指導を行うことになります。


忙しい日常診療の中で、時間を割いて大勢が集まるのは関係者の負担も大きいですが、患者さんの利益であることは間違いないので、キャンサーボードが普及したら良いなと思いました。



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 骨・軟部腫瘍および骨系統・代謝性疾患 (整形外科専門医になるための診療スタンダード 4)